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★まいにち易経_0912【三人寄れば、無責任:二枚のピザ理論】三人いけば、一人を損す。一人行けばその友を得。[41䷨山澤損:六三]

六三。三人行則損一人。一人行則得其友。 象曰。一人行。三則疑也。

六三は、三人さんにん行けば一人いちにんを損す。一人行けばその友を得う。 象に曰く、一人行く、三なれば疑わしきなり。


41山澤損は11地天泰から変化した卦です。これは、泰卦の下のという三つの陽のうち一つを取り去り、それを上のに加えたものです。
「三人」というのは、泰卦の下のの三つの陽を指し、「一人」はその中の一つを意味します。つまり、三つの陽から一つを取り去ったので「三人行けば一人を損す」ということになります。

例えば、三人の友達が一緒に行動していると考えてください。そのうち一人が離れると、残りの二人が新たに結びつきます。これが「一人行けばその友を得」ということです。三人の中の一人が抜けると、その一人は新しい仲間を見つけ、残りの二人も新たな関係を築くことができます。

初めから一人で行動する場合、その人は自然にもう一人の友を見つけ、互いに足りない部分を補い合って強い絆を築くことができます。これは、二枚貝が上下の殻を合わせることで完全になるように、友としての強い関係を築けるという意味です。

この考え方は、陰と陽の調和の中で、数の多さではなく、最も適した一つを求めることが大切だと説いています。例えば、一人で行動すると、必ず気の合う友を見つけやすいですが、三人で行動すると、自分に最も合う相手を見つけるのが難しくなります。三人の中で一人が離れない限り、理想的な組み合わせを見つけるのは難しいということです。

三人市虎を成すさんにんしこをなす

三人市虎を成す」とは、事実ではないことでも、多くの人が同じことを言えば、やがては信じられるようになることを指す故事成語です。この言葉は中国の戦国時代に由来し、魏の龐恭が魏王に「町に虎が出たと一人が言ったら信じるか」と問いかけた逸話に基づいています。根も葉もない噂でも、多くの人が語り出すことで真実と取り扱われることを示しています。

市に虎あり/三人成虎/市虎三伝/三人虎を成す/三人言いて虎を成す

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「山澤損」の六三は、「三人で何かを行おうとすると、途中で揉めて一人が減る。一方、一人で行えば協力者を得ることができる」という意味を持っています。これは陰陽の原理に基づく易の本質論から来ており、三人で何かをする場合、意見の食い違いや摩擦が生じやすいのに対し、一人で行動する場合は自然と協力者が現れるというものです。

陰陽の原理は、私たちの生活や仕事にも応用できます。陰と陽は互いに補完し合う関係にあり、一対で成り立っています。三人のグループではバランスが崩れやすく、一人が抜けることでようやく調和が取れるということです。例えば、プロジェクトを進める際にリーダーとしてチームを編成する際、人数が多すぎると意見がまとまらず、少数精鋭で動いた方がうまくいくことがあります。これは『山澤損』の教えに通じるものです。

もう一つのポイントは、深い話をするには一対一で相対するのが効果的ということです。三人以上になると、意見の対立や誤解が生じやすくなりますが、一対一の対話ではお互いの考えや感情をじっくりと理解し合えるため、より深い信頼関係を築くことができます。
部下や同僚とのミーティングを考えるとき、グループ全体で話すと全員の意見を公平に聞くのは難しいかもしれませんが、一対一で話すことで個々の意見や悩みをしっかりと受け止め、適切なアドバイスやサポートができるでしょう。

ここで、ちょっとした豆知識を紹介します。古代中国では「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がある一方で、「三人寄れば、無責任」という皮肉も存在しました。つまり、三人以上の議論は建設的な結果を生まないことがあると古代の人々も認識していたのです。

二枚のピザ理論

現代の企業でも、会議の人数を少人数に絞ることでより迅速かつ効果的な意思決定が行えることが分かっています。GoogleやAmazonのような大企業では、「ピザ二枚で足りる人数」が最適なチームサイズとされており、「二枚のピザ理論」として知られています。
これは、ひとつのチームの適正人数は2枚のピザが分けられるまで(最大8名)と定義されており、それを超えるとマネジメントが行き渡らず想定した成果が挙げられなかったり、組織運営においても悪影響が生じたりする可能性があると指摘しています

皆さんがリーダーとしてチームを率いるとき、『山澤損』の六三の教えを心に留めておくと良いでしょう。まず、チームの人数を適切にコントロールし、過度な摩擦を避けることが大切です。そして、一対一の対話を重視し、メンバーとの信頼関係を築いてください。定期的に一対一の面談を設け、メンバーの状況や意見をじっくりと聞く時間を作ることが有効です。また、プロジェクトの初期段階では少数精鋭で進め、必要に応じてメンバーを追加する柔軟な対応も考えてみてください。

『山澤損』の六三は、チーム運営や人間関係において重要な教訓を教えてくれます。三人以上のグループでは摩擦が生じやすく、一人で行動することで自然と協力者が現れるという考え方は、現代のリーダーシップにも通じるものがあります。皆さんがリーダーとして成長し、成功するための一助となることを願っています。易経の教えは古代の知恵だけでなく、現代のビジネスやリーダーシップにも役立つものです。ぜひ、今日のお話を参考にして、今後のリーダーシップに役立ててください。


参考出典

三人いけば、一人を損す
三人で何かを行おうとすると、途中で揉めて一人が減る。一方、一人で行えば協力者を得ることができる。これは陰陽に基づく易の本質論である。
陰と陽で一対であるから、三は必ず一を損し、一は必ず二になるというわけである。したがって、深い話をするには、三人でなく、一対一で相対すれば理解し合えるということになる。これはさまざまな物事に応用できる考え方である。

易経一日一言/竹村亞希子

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