見出し画像

まいにち易経_0718【耳目聡明】巽にして耳目聰明なり。[50䷱火風鼎:彖伝]

巽而耳目聰明。

そんにして耳目じもく聰明そうめいなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『火風鼎』の「かなえ」は、古代中国で天への供物を煮炊きする大鍋を意味します。この鼎は、ただの鍋ではなく、非常に重要な祭器であり、国家の威厳や統治者の実力を象徴するものでした。鼎が大きく重いほど、その国家やリーダーの権威が高いとされました。このため、鼎の重さを測ることでリーダーの実力が問われることを「鼎の軽重を問う」と表現します。

さて、ここで注目したいのが、「巽而耳目聰明そんにしてじもくそうめいなり」という一節です。「巽」は従順や謙虚さを意味し、「耳目聡明」とは、耳がよく聞こえ、目がよく見える、つまり賢明であることを指します。つまり、リーダーが謙虚な姿勢で周囲の意見に耳を傾けることが重要であるという教えです。

リーダーとして成功するためには、自分の意見だけに固執せず、他者の意見や知恵を取り入れることが必要です。これは、現代の企業経営にも通じるところがあります。例えば、成功した企業の多くは、トップダウンの指示だけでなく、現場からのフィードバックを大切にしています。これにより、組織全体が一つの目標に向かって効果的に動くことができるのです。

さらに、リーダーとして謙虚であることは、信頼を築くためにも欠かせません。自分がすべてを知っていると考えるリーダーは、周囲の人々からの信頼を失いやすいものです。しかし、自分の限界を認め、他者の意見を尊重するリーダーは、信頼され、支持を得ることができます。これは、家族や友人、同僚との関係でも同じです。信頼は一朝一夕には築けませんが、謙虚さと誠実さを持って行動することで、徐々に築かれていきます。

例えば、古代中国の名君として知られるぎょうは、その謙虚な姿勢と賢明な判断で国を治めました。彼は、自分が全知全能であると考えることなく、多くの賢人たちの意見を聞き入れ、その知恵を活かして統治を行いました。これにより、彼の治世は平和で繁栄したものとなりました。現代のリーダーシップにも、この堯の姿勢を取り入れることが重要でしょう。

また、リーダーが「耳目聡明」であるためには、情報を正確に収集し、それを基に的確な判断を下す能力が求められます。現代社会では、情報が氾濫しており、その中から正しい情報を見極めることがますます重要となっています。リーダーとしての役割は、単に指示を出すことではなく、情報を整理し、適切な判断を下すことにあります。

さらに、リーダーとしての成長には、継続的な学びが欠かせません。私自身も、多くの経験を積む中で、多くの失敗をしました。しかし、それらの失敗から学び続けることで、今の自分があると感じています。若い皆さんには、失敗を恐れず、常に学び続ける姿勢を持ってほしいと思います。

さて、ここで少し視点を変えて、現代のリーダーシップ論と『火風鼎』の教えを比較してみましょう。

現代のビジネス書では、「サーバントリーダーシップ」という概念がよく取り上げられます。これは、リーダーが部下に奉仕する姿勢を持つべきだという考え方です。一見すると、伝統的なリーダーシップの概念と逆のように思えるかもしれません。

しかし、よく考えてみると、『火風鼎』の教えと通じるものがあります。謙虚に人の意見を聞き、周りの状況をよく観察するという姿勢は、まさにサーバントリーダーシップの核心部分と言えるでしょう。

また、最近では「エモーショナルインテリジェンス(EQ)」の重要性も強調されています。これは、自分や他人の感情を理解し、適切に対応する能力のことです。「耳目聡明」という言葉は、まさにこのEQの高さを表しているとも言えるでしょう。

『火風鼎』の教えは、何千年も前の中国で生まれたものです。しかし、その本質は現代社会にも十分通用するものだと私は考えています。みなさんも、これからのキャリアの中で、この教えを思い出し、実践してみてください。きっと、素晴らしいリーダーになれると信じています。


参考出典

火風鼎の「鼎」は、天への供物を煮炊きする大鍋である。重要な祭器であり、古代中国では国威を表す象徴であった。そこから統治者の実力や国家権威を疑うことを「鼎の軽重を問う」というようになった。
鼎は王が賢人にきょうする際にも用いられた。賢人が多く集まれば鼎は重く大きくなる。「巽」は従順、謙虚。リーダーが謙虚に賢人の意見に耳を傾け、「耳目聡明」であれば、国の権威は保たれ、鼎の軽重を問われることはない。

易経一日一言/竹村亞希子

#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳 #火風鼎
#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?