見出し画像

まいにち易経_0918【最適なバランス感覚が成功を呼ぶ:リーダーシップと意思決定の要諦】数度を制し徳行を議す。[60䷻水澤節:象伝]

象曰。澤上有水節。君子以制數度。議徳行。

象に曰く、沢の上に水あるは節なり。君子以て数度すうどを制し、徳行をす。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『水澤節』の象伝には、「数度を制し」という言葉が出てきます。これは一見難しそうに感じるかもしれませんが、要するに「物事の適切な度合いを見極め、それを上手くコントロールする」ということなのです。

皆さんは、料理をしたことがありますか?例えば、カレーを作る時を想像してみてください。スパイスの量が多すぎても少なすぎても、美味しいカレーは作れません。塩加減も同じです。適度な量を入れることで、はじめて絶品のカレーができあがるのです。これと同じように、リーダーシップにおいても、適度なバランスが重要なのです。

リーダーとして成功するためには、様々な状況や課題に対して、適切な対応をする能力が求められます。ここで言う「適切」とは、その時々の状況に応じて変化するものです。例えば、チームのメンバーに対する接し方一つとっても、時と場合によって変える必要があるでしょう。励ましが必要な時もあれば、厳しく指導しなければならない時もあるでしょう。

これは、音楽のボリューム調整にも例えられます。静かな図書館では小さな音量で、コンサートホールでは大きな音量で、というように、場所や状況に応じて適切な音量を選ぶ必要があります。同様に、リーダーも状況に応じて自分の言動や決定のトーンを調整する必要があるのです。

ここで重要なのは、「度」というものは、「過ぎても過ぎなくても問題が起こる」ということです。例えば、仕事への熱意。熱意が足りなければ成果は上がりませんが、熱意が度を超すと燃え尽きてしまう可能性があります。適度な熱意を保つことが、長期的な成功につながるのです。

また、規則や制度を設ける際にも、この「度」の概念は非常に重要です。厳しすぎる規則は人々の創造性や自主性を抑制してしまいますし、緩すぎる規則は混乱を招きかねません。適度な規則は、人々に安心感を与えつつ、自由な活動の余地も残すのです。

では、実際にこの『水澤節』の教えを、どのように日常生活やリーダーシップに活かせばよいのでしょうか。

まず、自己観察から始めるとよいでしょう。自分の行動や決定が、状況に対して適切かどうかを常に意識してみてください。例えば、会議での発言。自分の意見を主張することは大切ですが、他人の意見に耳を傾けることも同様に重要です。適度なバランスで両者を行うことで、より建設的な議論が可能になります。

次に、フィードバックを積極的に求めることも大切です。自分では適切だと思っていても、他人から見るとそうでないこともあります。周囲の人々からの意見や感想を聞くことで、自分の「度」を客観的に把握することができます。

また、柔軟性を持つことも重要です。状況は常に変化するものです。昨日適切だったことが、今日は適切でないかもしれません。常に状況を観察し、必要に応じて自分の行動や決定を調整する能力が求められます。

さらに、失敗を恐れないことも大切です。適切な「度」を見出すプロセスには、試行錯誤が付きものです。失敗を恐れるあまり行動しないのではなく、失敗から学び、次に活かす姿勢が重要です。

『水澤節』の教えは、一見すると単純に見えるかもしれません。しかし、その実践は決して容易ではありません。それは、人生という長い旅路の中で、常に意識し、磨き続けていくべきスキルなのです。


参考出典

「節」の徳
「数度を制し」とは、数々の事柄において、度合いの違いを踏まえること。
国や組織のリーダーたる人は、数々の事柄の度合いを知り、その時々、適度に事にあたらなくてはならない。
度は過ぎても過ぎずとも弊害が起きる。その時の分限に合わせた度合いを考え、最適な条件を備えた規則を設ける。そのうえで自由に活動することが、「節」の教える徳である。

易経一日一言/竹村亞希子

#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳 #水澤節 #水沢節


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?