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まいにち易経_0626【泰平は傾く】平らかなるものにして陂かざるはなく、往くものにして復らざるはなし。艱しみて貞にすれば咎なし。恤うるなかれ。それ孚あり。[11䷊地天泰:九三]

九三。无平不陂。无往不復。艱貞无咎。勿恤其孚。于食有福。

九三は、たいらかにしてかたむかずということなく、往きてかえらずということなし。艱貞かんていなれば咎なし。うれうるなかれ、それ孚あり。


九三の位置は、安泰の最盛期であると同時に、危険も潜む場所。どんなに安定している状態であっても、それが永遠に続くことはない。安泰もいつかは終わる。安泰がいつまでも続くと思い込み安逸に浸っていてはいけない。
困難を乗り越えながら正しい道をしっかり守っておれば問題はない。心配せず、真心を尽くし続けることが大切。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「地天泰」の卦は、世の中が平和で穏やかな状態、いわゆる「泰平の世」を表すと言われています。

しかし、易経はその泰平の世が永遠に続くわけではないと教えています。「平らかなものは必ず傾き、去った閉塞の時代は必ず復ってくる」のです。歴史を見れば分かりますが、どんなに栄えた王朝や文明も、いずれは衰退の道を辿ります。

なぜそうなるのでしょうか。
それは「泰平の世を傾かせるのは、怠りと油断、危機管理能力の欠如である」からです。ビジネスの世界でも同じことが言えます。会社が成功し一旦安泰になると、「これからは大丈夫」と過剰な自信を持ってしまいがちです。しかし、時代は刻々と移り変わり、新しい競争相手が現れ、新しい技術が登場します。そういった変化に気づかず対応できなければ、必ず衰退の道を辿ることになります。

では、どうすれば泰平の世を長く維持できるのでしょう。
易経は「日々緊張感をもって労を尽くせば、安泰を長く保てる」と教えています。つまり、現状に満足することなく、常に危機感を持ち続け、努力を怠らなければならないのです。

泰平の時を長く保つためには、危機管理が非常に重要です。皆さんも、企業や組織のリーダーとして、日々の業務において常に危機感を持ち、先を見据えて行動することが求められます。

「艱貞无咎」とは、困難な時にも正しい道を堅持することが重要であるという意味です。困難な状況に直面した時こそ、誠実であり続けることが求められます。
確かに平和は永遠ではありませんが、必要以上に不安に駆られる必要はありません。大切なのは、冷静さと対応力を持ち続けることです。

例えば、あるプロジェクトで予想外の問題が発生した時、パニックに陥らず、冷静に問題を分析し、解決策を見つけることが必要です。正しい道を歩み続けることで、最終的には問題を克服することができるのです。

「恤うるなかれ、それ孚あり」とは、不用意に不安や憂いを抱く必要はなく、健全な危機感を持てばいいという教えです。常に最悪の事態を想定して不安に駆られるのではなく、冷静に状況を見極め、必要な準備をすることが重要です。これは、例えば、私たちが地震に備えるために非常食や避難経路を確保しておくことに似ています。日々の生活で過度に心配することなく、適切な備えをしておけば、いざという時に慌てずに対処できます。


参考出典

平らなものは必ず傾き、去ったはずの閉塞の時代は必ず復ってくる。
泰平の時はとかく安易に考え、安泰が永遠に続くという錯覚に陥りやすい。泰平の世を傾かせるのは、そういう怠りと油断、危機管理能力の欠如である。
時は生々流転して、一時として変わらないものはない。盤石の安泰はなく、人の心も、世の中も時とともに変わっていく。しかし、日々緊張感をもって労を尽くせば、安泰を長く保てる。
「恤うるなかれ。それ孚あり」とは、泰平はいずれ傾くとはいえ、不用意に不安や憂いを抱く必要はなく、健全な危機感を持てばいい、という教えである。

易経一日一言/竹村亞希子

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