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まいにち易経_0614【夬るべきを夬る】頄に壮んなり。凶あり。君子は夬るべきを夬る。[43䷪澤天夬:九三]

九三。壯于頄。有凶。君子夬夬。獨行遇雨。若濡有慍。无咎。 象曰。君子夬夬。終无咎也。

九三は、つらぼねに壮んなり。凶あり。君子は夬夬かいかい。独り行きて雨に遇う。るるが若くいからるることあり。咎なし。 象に曰く、君子は夬夬、終に咎なきなり。


剛毅に過ぎる九三は、攻撃敵な面相が頬骨の辺りに現れている。そのような顔付きで小人を排除しようとすれば、必ず失敗に終わる。君子に相応しい度量で決然として小人を排除するべきである。たとえ九三が断固たる決意で独り上六を討伐する覚悟で接近しても、他の君子(陽爻)から上六の悪影響に染まっているように見られ、怨みをかいうこともあろう。しかし、九三の本質はあくまで決然たる君子であり、最終的には、媚びへつらう小人上六を排除することになる。したがって、誰からも咎められることはない。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『澤天夬』九三の爻辞は「小人を排除する時」を意味しています。小人とは、あなたのチームや組織の中で不正や悪影響をもたらす人々のことを指します。しかし、この排除の方法について、九三の爻が特に重要な教えを与えてくれます。

九三の爻は、剛毅に過ぎる姿勢を取ることで、小人に対する攻撃心が顔に現れてしまうことを警告しています。この攻撃心が顔に出てしまうと、相手にあなたの意図を察知されてしまい、逆に失敗を招いてしまいます。つまり、何事も表面に出さず、内に秘めて行動することが重要なのです。

小人というのは猜疑心が強く、些細な変化に敏感に反応します。ですから決心は固く持ちながらも、表面上は装って油断させる必要があるのです。

例えば、かつて私が経営する会社にも、陰口を酷く、お客様を舐め腐った態度で接する営業マンがいました。私は機会を伺い、最終的にその男を解雇することができました。しかし事前に、その男に対して嫌な顔ひとつせず、接してしました。すると男は私の動きに気付かず、十分な証拠を残してくれましたので、スムーズに排除できたのです。

こういった話はあくまで例えですが、リーダーとなった時、有害な者を排除する際は、あらゆる面で慎重でなければなりません。しかし決して消極的になってはいけません。時期を伺い、証拠を積み重ね、秩序を乱す者を毅然と取り除くべきなのです。

もちろん、それ以前に、リーダーとして部下に信頼され、好かれることが何より大切です。そうすれば周りから本当の姿を見抜かれることはありません。いかに小人を排除するかを心配する前に、まずは自らの品性を高める努力が必要不可欠なのです。

会社の中で改革を進めようとするとき、改革に反対する勢力がいることがあります。彼らが「小人」である場合、その存在を排除する必要があるでしょう。しかし、彼らに対して明確に敵意を示すと、抵抗が強まり、改革自体が困難になります。こんなときは、どう対処すべきでしょうか?

顔に出さず、心に秘めることが求められます。具体的には、以下のようなステップを踏むとよいでしょう。

  1. 情報収集:まず、反対勢力の動向や影響力をしっかり把握する。

  2. 信頼を築く:同僚や部下と信頼関係を築き、味方を増やす。

  3. 機を待つ:タイミングを見計らい、一気に行動に移る。

ここで重要なのは「決心の固さ」と「隠忍自重」です。決心は固く、目標は明確に持ち続けながらも、その意図を表面に出さず、忍耐強く行動することが求められます。

隠忍自重とは、簡単に言えば「忍耐して、自分の感情をコントロールする」ということです。これは特にリーダーにとって重要な資質です。感情的になってしまうと、判断を誤り、組織全体に悪影響を及ぼすことがあります。

この教えを深く理解するために、孔子の言葉を紹介しましょう。
孔子は「小人を憎むな、ただ避けよ」と言いました。これは、小人に対して直接対決するのではなく、彼らの存在を避け、影響を受けないようにすることを示しています。リーダーとしての冷静な判断力と、長期的な視野を持つことの重要性を教えてくれます。

では現代のビジネスシーンにおいて、この教えをどのように応用できるでしょうか?

  1. 内部調査の徹底:問題を起こす可能性のある人物や部門を静かに調査し、証拠を集める。

  2. 改善策の計画:影響力のあるメンバーと協力し、問題を解決するための具体的な計画を立てる。

  3. 信頼関係の構築:従業員全体の信頼を得るために、透明性のあるコミュニケーションを行う。

『澤天夬』の九三の教えは、リーダーとしての慎重さと忍耐力を強調しています。攻撃心を表に出さず、冷静に状況を見極め、適切なタイミングで行動することが求められます。皆さんも、この教えを心に留め、リーダーとしての道を進んでください


参考出典

沢天夬の卦は、小人を排除する時を説くが、そこで注意すべきことがある。
つらぼね」とは頬骨ほおぼね。排除するべき小人に対して攻撃心が顔に出てしまうと、さとられて大失敗するといっている。小人は敏感に機を感じる。ゆえに決心は固くとも隠忍自重いんにんじちょうして顔に出さないようにする。相手はもちろん、味方さえもあざむくかのようにして時をうかがい、排除するべき時を観て、除かなくてはいけない。

易経一日一言/竹村亞希子

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