見出し画像

まいにち易経_0721【損して得をとる】損は、下を損して上に益し、その道上行す。[41䷨山澤損:彖伝]

彖曰。損。損下益上。其道上行。

彖に曰く、損は、しもを損してかみを益す。その道上みちのぼり行く。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

山沢損の「損」とは、一見するとネガティブに捉えられがちな「損失」や「減少」を意味しますが、実はその背後に深い哲学が隠れています。損をすることの目的は、「その道に上行する」、すなわち自らのステップアップを果たすためのものです。この「損」は、将来の自己投資と捉えるべきです。

例えば、資格を取得するために学費を支払い、勉強に励むことも一種の損です。これは今の時間とお金を犠牲にしますが、長期的にはスキルと知識を手に入れるための価値ある投資です。また、初期投資が大きくても、良質な仕事をして取引先に利益をもたらすことも、やがて自分に返ってくる利益のための損です。どちらも上昇を目指す「損」であり、その結果、さらなる高みへと導かれます。

このように、「損」とは単なる減少や失敗を意味するものではなく、成長と成功へのステップとして捉えるべきです。損を恐れず、進む道を見据えて行動することが、真の成功を掴むための鍵なのです。

ビジネスの世界でも同じことが言えます。例えば、新しい取引先と良好な関係を築くために、最初は利益を少なくして仕事を引き受けるかもしれません。短期的には「損」かもしれませんが、長期的に見れば大きな利益につながる可能性があります。

リーダーとして成長していく皆さんにとって、この「山澤損」の考え方はとても重要です。なぜなら、リーダーは常に先を見据えて行動しなければならないからです。目の前の小さな利益にとらわれず、大局的な視点で物事を判断する能力が求められます。

私自身、経営者として多くの決断を下してきました。その中には、一時的に会社の利益を減らすような決断もありました。例えば、新しい技術に投資するために、その年の配当を減らすことを決めたこともあります。株主の中には不満を持つ人もいましたが、数年後にはその投資が実を結び、会社は大きく成長しました。

このような経験を通じて、私は「損」を恐れないことの重要性を学びました。もちろん、むやみに「損」をすれば良いというわけではありません。慎重に検討し、その「損」が本当に必要なものかどうかを見極める目も必要です。

さらに、「山澤損」の教えは、個人の成長だけでなく、組織の発展にも適用できます。例えば、企業が新しい市場に参入する際、最初は利益が出ないかもしれません。しかし、そこで諦めてしまっては、将来の大きな成功のチャンスを逃してしまうかもしれません。

日本の経営者である稲盛和夫氏も、「利他の心」という概念を提唱しています。これは、自分や自社の利益だけでなく、取引先や社会全体の利益を考えて行動するという考え方です。短期的には「損」に見えるかもしれませんが、長期的には信頼関係の構築や社会からの支持につながり、結果として大きな利益をもたらす可能性があります。

このように、「山澤損」の考え方は、ビジネスの世界だけでなく、私たちの日常生活のあらゆる場面で活用できるのです。


参考出典

山沢損の「損」は損する、減らすこと。何のために損をするのかといえば、「その道に上行する」自らのステップアップのためである。この損は自分の先行きに投資することと考えればよい。
資格を取得するために学費を払って勉強する。あるいは、出資が多くても良い仕事をして取引先に利益をもたらし、いずれ相応の利益を得るように努力する。
いずれも上昇のための「損」である。

易経一日一言/竹村亞希子

#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳 #山澤損 #山沢損  
#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?