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まいにち易経_0803【確乎不抜!不屈の志:困難を乗り越える力】確乎としてそれ抜くべからざるは、潜龍なり。[01䷀乾為天/文言伝:第二節(人事)九三]

確乎其不可拔、潛龍也。

確乎かっことしてそれ抜くべからざるは、潜龍なり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「確乎としてそれ抜くべからざるは、潜龍なり。」

この言葉、最初は難しく感じるかもしれません。でも、実はとてもシンプルで力強いメッセージが込められているのです。

ここでいう「それ」とは、私たちの「志」のことを指しています。そして「潜龍」とは、まだその力を発揮できずにいる状態、つまり不遇な時期を表しています。

この教えが私たちに伝えようとしているのは、こういうことでしょう。人生には順風満帆な時期もあれば、思うようにいかない時期もある。特に、その力をまだ発揮できていない「潜龍」の時期こそ、自分の志をしっかりと持ち続けることが大切だ、ということです。

志というものは、時には挫折によってしぼんでしまうことがあります。また、逆に成功や地位を得ると、それが変質してしまうこともあります。例えば、初めての仕事で大きな失敗を経験した時、そのショックで自分の目標が見えなくなってしまうことがあります。また、一度成功すると、今度はその成功にしがみつこうとして、本来の志を見失ってしまうこともあるでしょう。

しかし、どんな状況でも志を変えないことが重要です。これは簡単なことではありませんが、常に自分の目標を胸に抱き続けることで、困難な道を乗り越える力となります。

古代ギリシャの彫刻家ミケランジェロの言葉に、「私は大理石の中に天使を見た。そして、天使を解放するまで彫り続けた」というものがあります。これは、最初から完成形が見えていたわけではありません。しかし、彼の中にある「志」、つまり「美しい彫刻を作り上げたい」という思いが、その作業を導いたのです。

皆さんの人生も同じです。今はまだ、自分の中にある可能性が「大理石の中の天使」のように隠れているかもしれません。しかし、自分の志をしっかりと持ち続け、それに向かって努力を重ねていけば、いつか必ずその「天使」を解放できるはずです。

ここで大切なのは、その「志」を変えないこと。どんなに道が険しくても、どんなに時間がかかっても、自分の志を見失わないことです。なぜなら、すべては志から始まるからです。

志は、私たちの人生の道標となるものです。それは単なる目標や夢以上のもので、自分の生き方そのものを表すものかもしれません。「どんな人間になりたいか」「社会にどんな貢献をしたいか」そういった根本的な問いへの答えが、私たちの志となるのです。

しかし、この志を持ち続けることは、決して簡単なことではありません。人生には様々な誘惑があります。より楽な道を選びたくなることもあるでしょう。また、周りの評価や社会の風潮に流されそうになることもあるかもしれません。

そんな時こそ、この易経の教えを思い出してほしいと思います。「確乎としてそれ抜くべからざるは、潜龍なり。」どんなに困難な状況でも、自分の志をしっかりと持ち続けること。それが、将来のリーダーとしての第一歩なのです。

ここで、もう一つ興味深い例をお話ししましょう。皆さんは「千里の道も一歩から」という言葉をご存じでしょうか。これは中国の古典『老子』に由来する言葉です。どんなに長い旅路も、最初の一歩から始まるという意味です。

この言葉は、志を持ち続けることの大切さを別の角度から教えてくれています。大きな目標を達成するためには、長い時間と多くの努力が必要です。時には、その道のりがあまりに長く感じられ、諦めたくなることもあるでしょう。しかし、その時に大切なのは、自分の志を思い出し、一歩一歩着実に前進することです。

皆さんの中には、「今の自分には無理だ」「まだ早いのではないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、誰もが最初から完璧なリーダーではありません。リーダーシップも、他の能力と同じように、経験を積み重ねることで成長していくものです。

そして、その成長の過程こそが「潜龍」の時期なのです。表面的には何も変化がないように見えても、内面では着実に力を蓄えている。そんな時期を、むしろ大切にしてほしいと思います。

また、志を持ち続けることは、単に自分のためだけではありません。皆さんが将来のリーダーとして期待されているということは、つまり社会に大きな影響を与える立場になるということです。その時、皆さんの志は、周りの人々や社会全体に影響を与えることになるのです。

だからこそ、自分の志について深く考え、それを大切に育てていってほしいと思います。「自分は何のために生きているのか」「社会にどんな貢献ができるのか」そういった問いに真摯に向き合い、自分なりの答えを見つけていってください。

そして、その答えを見つけたら、それを「確乎として抜くべからざる」ものとして、心に刻んでください。それが、皆さんの人生の羅針盤となり、困難な時期を乗り越える力となるはずです。

最後に、もう一度易経の言葉を噛みしめてみましょう。「確乎としてそれ抜くべからざるは、潜龍なり。」この言葉の意味を、皆さん一人一人が自分の人生に照らし合わせて考えてみてください。そして、自分の志を見つめ直し、それをしっかりと持ち続ける決意を新たにしてほしいと思います。

皆さんの前途には、きっと多くの困難や挑戦が待っているでしょう。しかし、自分の志をしっかりと持ち続けることができれば、どんな困難も乗り越えられるはずです。そして、いつかその志が大きな花を咲かせる日が必ず来ると信じています。


参考出典

確乎不抜
「それ」とは志である。不遇な潜龍の時代こそ、しっかりと志を抱き、どんなに苦しくても動かさない。
えてして志というものは、挫折感を味わうとしぼんだり、失ったりしてしまう。また逆に、地位を得ると、変容・変質していくものである。
しかし、どんなに道が厳しくても、志を変えないことが原点。すべては志から始まることを肝に銘じなくてはいけない。

易経一日一言/竹村亞希子

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