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まいにち易経_0613【小人は国を乱す】大君命あり。国を開き家を承けしむ。小人は用うるなかれ。[07䷆地水師:上六]

上六。大君有命。開國承家。小人勿用。 象曰。大君有命。以正功也。小人勿用。必亂邦也。

上六は、大君命たいくんめいあり。国を開き家を承く。小人は用うるなかれ。 象に曰く、大君命あり、以て功を正しくするなり。小人用うるなかれとは、必ずくにを乱ればなり。


上六は戦の終局における対処法を説く。威厳あるトップが、部下に対し論功行賞を命じる。大きな功績を上げた部下の中から、自己犠牲精神を持つ人物を諸侯に封じ、重役として重用する。たとえ大きな功績を上げたとしても、私利私欲に動かされる人ような小人を諸侯に封じ、重役に重用してはならない。小人を重役に据えることは、組織を滅亡させる危険性を孕んでいる。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

易経は、古代中国の賢者たちが残した人生の指針です。その中の一卦「地水師」の上六には、興味深い教訓が隠されています。

この節は、戦争が終わった後に、その功績を評価して人を任命するという状況を描いています。しかし、このときの注意点として、「小人は重用してはならない」と警告しています。小人とは、自分の利益だけを追求し、人からの信頼を得られない人のことです。こうした人を重用すると、国や組織が乱れることになります。これは古くからの教えで、『書経』にも同様のことが述べられています。

小人とは、自分の利益しか考えられず、人々から信頼されない人のことです。そういった人物を重用すれば、必ず国は乱れてしまうのです。
皆さんは、「小人」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?おそらく、背徳な人物を想像するでしょう。しかし、注意深く見れば、私達の周りにも小人がたくさんいることに気づくはずです。例えば、会社で自分の地位や給料のことばかり気にかけている人。部下の面倒を見ず、自分の出世のみを考えている上司。こういった人たちが、いつの間にか小人になっているのです。

この教えは、現代のビジネスシーンにも通じるものがあります。例えば、会社で大きなプロジェクトが成功し、その功績を誰かに与えようとする時、単に結果を出したからと言って、その人を無条件で重要なポジションに就けるのは危険です。結果を出すためにどのような手段を用いたのか、その過程で周囲との信頼関係を築いたのか、そういった点をよく見極める必要があります。

少しわかりやすい例を挙げてみましょう。皆さんもご存知のサッカーの話です。あるチームがリーグ戦で優勝しました。その中で特に得点王となった選手がいました。彼は確かに素晴らしいプレイヤーですが、その選手がチームメイトと仲良くできず、常に自己中心的なプレーをしていたとしたらどうでしょうか。チーム全体の士気が下がり、次のシーズンでは成績が低迷するかもしれません。逆に、得点はそれほど多くなくても、チームのために尽力し、仲間との信頼関係を築いた選手がいるなら、その人こそリーダーにふさわしいでしょう。

リーダーシップとは、単に結果を出すことではなく、人々に信頼され、共に働く意欲を引き出す力です。自分一人の利益だけを追求するのではなく、チーム全体の利益を考えることが重要です。この点を忘れずに、皆さんも将来のリーダーとして成長してほしいと思います。


参考出典

戦が終わると功績があった者を諸侯に取り立て、また官職に命ずる。しかしその時、功績があったとしても、小人は重用してはならない。
これは人材登用の鉄則として用いられてきた言葉。古くは『書経』にも同様の言葉がある。功績をあげても、自分の利益だけを考え、人からの信頼を得ない小人は、必ず国を乱す。ゆえに金銭をもって賞すにとどめ、大任を与えてはならないのである。

易経一日一言/竹村亞希子

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