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まいにち易経_0605【心の鏡を磨く】自ら明徳を昭らかにす。[35䷢火地晋:象伝]

象曰。明出地上晉。君子以自昭明徳。

象に曰く、めい地上にずるはしんなり。君子以て自ら明徳をあきらかにす。


太陽が自ら地平線を越えて昇るように、私たちもまた、自らの明徳を明らかにすることが求められています。「自ら」という言葉には、心を明るく保つ責任が自分にあり、他者に頼るべきではないという意味が込められています。
明徳は私欲によって容易に曇ってしまいます。だからこそ、心の鏡が曇らないように日々意識して磨くことが必要なのです。心を磨くことは、まるで日々の太陽のように、自らの力で輝きを取り戻す行為なのです。
易経の「火地晋」の卦は、太陽が昇るように前進する姿を描いています。これは、私たちが明徳を明らかにし、自らの内なる光を輝かせる時期を示しています。太陽が毎日新たに昇るように、私たちもまた日々成長し、明るさと共に前進し続けなければなりません。

火地晋(かちしん)
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

明徳とは、明るく輝く徳のことを指します。これは、内なる善の心を育て、他者に対して慈しみや優しさを持って接することです。企業経営においても、リーダーが明徳を持つことは非常に重要です。自分の行動や言葉がどのように社員や顧客に影響を与えるかを常に意識し、良い影響を与えることが求められます。

例えば、利益だけを追求する経営者がいれば、必ず従業員の搾取や環境破壊など、負の影響が生じます。しかし、明徳に基づく経営ならば、社会にプラスの価値を提供し続けることができるのです。

具体例をひとつご紹介しましょう。皆さんは、トヨタ自動車の経営理念 "基本に忠実に"をご存知でしょうか。この言葉には、利益最大化ではなく、製品を通じて社会に良いものを提供することが企業の本分であるという、明徳の精神が込められています。結果として、トヨタは世界に誇れるモノづくり企業となりました。

また、歴史的な名経営者の一人である松下幸之助氏は、明徳の実践者として知られています。彼は、社員一人ひとりを大切にし、その成長を支援することに力を注ぎました。松下電器(現在のパナソニック)が世界的な企業に成長した背景には、彼の明徳があったと言っても過言ではありません。

しかし、明徳を体現することは決して容易ではありません。なぜなら、私たち人間には、いつの時代でも私欲が潜んでいるからです。金に目がくらみ、権力に酔いしれがちなのが人の性です。このような私欲に囚われていては、明徳の心は失われてしまいます。

では、具体的にどうすれば明徳を実践できるのでしょう?
まず、自分の心の鏡を曇らせないようにすることが大切です。日々、自分の行動を見直し、自己中心的な考えや私欲を取り除く努力をしましょう。これは簡単なことではありませんが、成長に不可欠なプロセスです。

明徳を育てるには、まず、自己反省の時間を持つことが重要です。忙しい日常の中で、少しでも自分自身と向き合う時間を作りましょう。その時間に、自分の行動や言葉を振り返り、改善点を見つけ出すことが大切です。

また、明徳を継続して育てるためには、日々の小さな努力が欠かせません。例えば、コミュニケーションを大切にすることや、困難な状況でも誠実に対応することなどです。これらの積み重ねが、やがて大きな徳となって返ってきます。

明徳を持つリーダーは、組織全体に良い影響を与えます。社員がリーダーの姿勢を見習い、公正で誠実な行動を取るようになります。その結果、職場の雰囲気が改善され、生産性も向上します。また、顧客や取引先からの信頼も高まり、ビジネス全体の成功につながるのです。

最後に、未来に向けて私たちがどのように明徳を実践していくかについて考えてみましょう。技術の進化や社会の変化により、企業経営の環境は常に変わり続けています。しかし、どんな時代でも、明徳を持つリーダーは求められます。新しい時代の課題に対しても、明徳を持って対処することが成功への鍵となります。


参考出典

太陽が自ら地の上に昇っていくように、自ら、明徳を明らかにする。
「自ら」とあるのは、自分の心を明るく保つのは自分自身であって、人に頼ることではないという意味。
明徳は私欲に囚われていると曇ってしまう。だから、自分の心の鏡が曇らないように、日々、自分で意識して磨かなければならないのである。
火地晋の卦は、太陽が昇るように前進して、明徳が明らかになっていく時を説く。

易経一日一言/竹村亞希子

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