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まいにち易経_1006【類は友を以て集まる】聖人作りて万物観る。天に本づく者は上に親しみ、地に本づく者は下に親しむ。すなわち各各その類に従うなり。[01乾為天/文言伝:第二節(人事)九五]

聖人作而萬物覩。本乎天者親上、本乎地者親下。則各從其類也。

聖人おこりて万物る。天にもとづく者はかみを親しみ、地に本づく者はしもを親しむ。すなわち各各おのおのその類に従うなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『類は友を呼ぶ』についてお話しさせていただきます。

この教えは、私たち人間社会の本質を見事に言い表していると思います。簡単に言えば、「似た者同士が集まる」ということですが、これは単なる表面的な現象ではなく、もっと深い意味を持っているのです。

まず、自然界の例から考えてみましょう。動物と植物を比べてみると面白いことに気づきます。動物は頭を上に向けて歩きますよね。これは、動物が天から生命を授かっているからだと言われています。一方、植物はどうでしょうか。根を地中深く張り巡らせています。これは、植物が地から生命力を得ているからなのです。

この自然の摂理は、私たち人間社会にも当てはまります。優れたリーダーが現れると、同じような志を持つ人々が自然と集まってくるのです。これは、会社や国家といった大きな組織でも同じことが言えます。

ここで、歴史上の興味深い例を挙げてみましょう。戦国時代の武将、織田信長を知っていますよね。信長は、当時としては革新的な考えを持っていました。身分制度にとらわれず、能力主義を重視したのです。すると、どういうことが起こったと思いますか?そうです、新しい時代を切り開こうとする志を持った人々が、次々と信長のもとに集まってきたのです。

これは、まさに「類は友を呼ぶ」の典型的な例と言えるでしょう。信長という優れたリーダーの存在が、同じ志を持つ人々を引き寄せたのです。

では、現代社会において、この教えはどのように活かせるのでしょうか。

まず、自分自身の価値観や目標を明確にすることが大切です。自分が何を大切にし、何を目指しているのかをはっきりさせることで、同じ志を持つ仲間を見つけやすくなります。

例えば、環境保護に熱心な人がいるとしましょう。その人が環境NGOでボランティア活動を始めたとします。すると、同じように環境問題に関心を持つ人々と出会う機会が増えるでしょう。これも「類は友を呼ぶ」の一例と言えます。

また、リーダーとしての立場に立った時、この教えは特に重要になってきます。優れたリーダーは、自分の理念や目標を明確に示すことで、同じ志を持つ人々を引き寄せることができるのです。

ここで、現代のビジネス界から一つ例を挙げてみましょう。アップル社の共同創業者、スティーブ・ジョブズを知っていますよね。ジョブズは「Think Different(違うことを考えよう)」というスローガンを掲げました。この理念に共感した創造性豊かな人々が集まり、アップルは革新的な製品を次々と生み出していったのです。

このように、リーダーの理念や行動が、組織全体の方向性を決定づけるのです。ですから、リーダーになることを目指す皆さんには、自分の価値観や目標をしっかりと持ち、それを明確に示していってほしいと思います。そうすることで、同じ志を持つ仲間が自然と集まってくるはずです。

ただし、ここで一つ注意点があります。「類は友を呼ぶ」というと、似た者同士だけが集まれば良いように聞こえるかもしれません。しかし、実際の組織運営においては、多様性も非常に重要です。

例えば、チームを作る際に、自分と全く同じ考えの人ばかりを集めてしまうと、新しいアイデアが生まれにくくなってしまいます。むしろ、基本的な価値観は共有しつつも、異なる視点や専門性を持つ人々を集めることで、より創造的で強固な組織を作ることができるのです。

これは、自然界の生態系とも似ています。一つの種類の生物だけでなく、様々な生物が互いに影響し合うことで、豊かで安定した生態系が形成されるのです。

つまり、「類は友を呼ぶ」という教えは、単に似た者同士が集まるということではなく、共通の目標や価値観のもとに、多様な才能や視点を持つ人々が集まり、互いに影響し合うことで、より大きな力を生み出せるということを示唆しているのです。

さらに、この教えは自己成長の観点からも重要です。自分より優れた人々と交わることで、自然と自分も成長していくことができます。ですから、常に自分を高めていく努力をし、より高い志を持つ人々と交わる機会を積極的に作っていってほしいと思います。


参考出典

類は友を呼ぶ
聖人を皆が仰ぎ見るように、人も物も同じ類に感応する。生命を天から受ける動物は頭を上にして、地から受ける植物は、その根を下に張る。
人に長たる者が現れたとき、同じ志を持つ類同士が求め合い、感応し合う。国家や会社組織も、そのようにして成り立っていくものである。

易経一日一言/竹村亞希子

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