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探偵神宮寺マキヒコ

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探偵小説パロディシリーズです
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#パロディ

探偵神宮寺マキヒコ、雨の一夜の殺人事件

探偵神宮寺マキヒコ、雨の一夜の殺人事件

「負けたわ探偵さん、まさかマッシュルームを残したことからアリバイを切り崩されるだなんて……」ユカコはそう言うと、ソファーに深く座り直して天を仰いだ。天井にはキラキラと揺れるシャンデリア。ユカコの瞳もシャンデリアの輝きを映してキラキラと光っていた。

「……タバコを吸ってもいいかしら?」僕は黙って頷く。ユカコは芝居の1シーンのような無駄のない美しい所作でタバコに火をつけると大きく吸い込み、ふぅと細長

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探偵神宮寺マキヒコ、セーター殺人事件

探偵神宮寺マキヒコ、セーター殺人事件

解剖の結果、山口氏の死因は何らかのショックによる心臓麻痺だと分かった。これは事件ではなく事故だ。しかし神宮寺には少し引っかかる点があった。それは現場に落ちていた女物のセーターであった。

大胆に背中が露出し胸元が開いたデザインの、ネットでは『童貞を殺すセーター』などと呼ばれているセーターだった。山口氏は34歳であったが、失礼ながらおよそ女性にはモテそうもない風貌をしており、親しい知人の証言によると

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探偵神宮寺マキヒコ〜初めての謎〜

探偵神宮寺マキヒコ〜初めての謎〜

「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?」

明智くんはそう言うと、私に向かって挑戦的な笑みを浮かべた。パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?そう言ったのか?私は自分の耳を疑った。パンは食べものじゃないか。それなのに食べられないだって?一体どういうことだ……。カビが生えたパンだろうか。そういえば先週、クラスメイトの毛利くんの机の中からカビの生えたパンが出てきた事件があった。緑色の変わり果て

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あとがき(または世界で最も愚かなミステリー作家の述懐)

あとがき(または世界で最も愚かなミステリー作家の述懐)

確か小学校低学年の頃だったと思う。短いお話を書いてみんなに発表しましょうという授業があった。今思えば、あの時書いたものが、私が初めて書いた小説だったかもしれない。どんな話だったかもほぼ覚えていないが、タイトルだけははっきりと覚えている。『桃金いっすんかぐやで浦島さんとうさぎと亀の鬼退治』というお話だった。

タイトルのまま、桃太郎と金太郎と一寸法師とかぐや姫と浦島太郎とうさぎと亀が鬼退治に行くお話

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