見出し画像

自由律俳句 #259

【通学路の鯉のぼりを見上げながら】


小学校1年生の時、
通学路に大きな鯉のぼりを飾っているお家があった。

とても大きくて、
たくさんの鯉のぼりが大空を泳いでいた。

登校時も下校時も、通りかかった時は、
いつも泳いでいる鯉のぼりを見上げて歩いた。

私の家には本格的な鯉のぼりは無かったから、
こんなに大きい鯉のぼりを掲げているお家の子が、
羨ましくて、いいなぁって思いながら歩いていた。

近所にあるじいちゃんの家に遊びに行くと、
小さな鯉のぼりが棚に飾ってあった。

お菓子のおまけに付いてくるような鯉のぼり。
確か、風ぐるまの軸の部分に小さなお菓子が入っているやつ。

小さい私は、それに不満を感じていた。
庭を覗けば、いつでも優雅な泳ぎを見れるような、
自分専用の大きな鯉のぼりが欲しかったから、
せっかくの子どもの日は、羨ましさが付きまとっていた。

でも今は、そうは思わない。

私のじいちゃんは半身麻痺だった。
物心が付いた時から、じいちゃんの体の半分は動かない。
それでも、よく一緒に公園に行ったり、散歩をした。
そのまま買い物に行って、好きなお菓子やおもちゃを買ってくれた。
じいちゃん家にはお風呂が無かったので、
よく銭湯にも一緒に行った。
じいちゃんの背中や体の半分を洗うのは私の仕事で、
いつもいつも、力が無いなぁって言われながら、
一生懸命に体をゴシゴシするのが楽しかった。

そんなじいちゃんが、私を喜ばせようと、
買ってきてくれた小さな鯉のぼり。
どんな立派な鯉のぼりよりも、
あの鯉のぼりが1番だったと今は思う。

天国のじいちゃん、今年も子どもの日が来ました。
おそらく、いつものように、
あの鯉のぼりのお菓子を用意してくれているかもしれません。
ありがとう。すごく嬉しいです。
またいつか、一緒に散歩したり、お風呂に入ったりしましょう。
じいちゃんの背中を流すのは、私の大切な仕事だから。
きっと、もう力が無いなぁって感じることはないと思うよ。

快晴、そよ風、小さな風ぐるま。
今年もあの鯉のぼりが泳いでいるのを思い浮かべながら。


#自由律俳句 #俳句 #散文 #随筆 #エッセイ #通学路 #鯉のぼり #見上げて #羨まし #じいちゃん #お菓子 #おまけ #不満 #散歩 #お風呂 #私の仕事 #あの鯉のぼり #1番 #ありがとう #またいつか #子どもの日

この記事が参加している募集

自由律俳句

記事を読んで頂けるだけでありがたくて、スキを押してくれるだけで嬉しいのに、サポートまでして頂けたら、もう飛び跳ねます!本当に本当にありがとうございます!これからも頑張ります!