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「読みない」と子どもが言ったらどうするか - 正確さと流暢さから考える

「読みない、行くたい」

と3歳の息子が時々言います。

未然形と連用形を練習しているようです。

「読む」の五段活用
未然形:読ま(ない)、読も(う)、
連用形:読み(ます)、読ん(で)
終止形:読む
連体形:読む(本)
仮定形:読め(ば)
命令形:読め

こういう発話を聞いた時に、どういう対応方法があるかを英語を教えていた経験からも考えてみました。

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教え方について話すときに私が気をつけているのが、「これが一番正しい」という方法を私が押しつけるということではなく、学習者や場面に応じてどう対応できるかという選択肢を増やすということを心がけている点です。

決して以下だけが正しいということでもなく、他にも良い方法があるかもしれないというスタンスで読んでいただきたく、さらに良いアイディアがあればぜひ教えていただければ幸いです。

こちら参考にしています。

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考えるとよいポイント

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指摘するか ⇔ 指摘しないか
今指摘するのか ⇔ 後で指摘するのか
一回だけのことか ⇔ 何度も言うのか
自分でわかっているのか ⇔ わかっていないのか
親が言うか ⇔ 友達が言うか
指摘して受け入れられる気持ちの状態か

全てをとっさに意識するのは難しいかもしれませんが、上記を考慮できるとその場で何をするべきか、しないべきかを判断できるような気がします。

指摘をするとなった場合にどのような方法があるかを、例を使って書いてみました。

1. 直接法

息子「読みない。」
親 「読みないじゃなくて、ね。言える?」
息子「読まない。」
親 「そう。言えたじゃん。なんでこれ読まないの? 面白そうじゃん。」
(文法の指摘の後に、内容にフォーカス + 読まないともう一回親が言う。)

間違いの部分を強調し、正しい言葉に言い換え、自分で言わせると言う方法です。これはよくある形かと思います。

指摘した後で、「なんで読まないの?」と親も使うところでインプットもできるかと思います。

2. 聞こえなかったふり

息子「読みない。」
親 「ん?今何て言った?」
息子「読みない。」
親 「なんで本読まないの?」
(その場はスルー。内容に注目。)
息子「読みない。」
親 「ん?今何て言った?」
息子「読みない。」
親 「読みないじゃなくて、よ ま な い がいいかな。言える?」
(上記直接法)

自分でわかっているかどうかを確認するために、もう一回自分で言ってもらうという方法です。2回目で「読まない」と言った場合は自分でわかっているということなので、「読まないって言えたね」と褒めていけば良いかと思います。

2回目で「読みない」と言った場合は自分でわかっていない可能性があるので、指摘するか後で指摘するかの判断をすることになるかと思います。

3. 壊れたラジオ

直すべき単語を親がもう一回途中まで言って、壊れたラジオのようになります。自分でもう一回言わせるための方法です。自分でわかっているかどうかを確認できれば、どうするかを判断できるかと思います。

息子「読みない。」
親 「本をよぉー ....」
息子「読まない。」
親 「そうだったねー。なんでこれ読まないの?」
息子「読みない。」
親 「本をよぉー ....」
息子「読みない。」
親 「(上記参照) よ ま な い がいいかなー。」

4. 親が言語モデルになる

息子「読みない。」
親 「(とりあえずスルー) これ読まないの? じゃあ何読もうか?お父さんこれ読みたいなー。」

何もなかったかのように通り過ぎて、正しい文章を使って会話を続けます。
その親の発話と聞いて、その後の会話の中で自分で気づく可能性を試してみます。

5. 別のサンプルを見せる

息子「読みない。」
じゃあこれで遊ぶ?お父さんこれ遊びたいなー。」

「遊ぶ」「書く」など、五段活用になる別の動詞を使って文章を作ります。年齢が小さいければ小さいほど、例から法則を見つけることが好き「帰納法 (ボトムアップ)」と言われているので、別の例から法則を見つけ出すことを期待します。

正確さと流暢さ

言葉はツールなので、内容をどうやり取りするかというのがメインになるかと思います。正確さ (Accuracy) と 流暢さ (Fluency) というのは分けて考えられない話題のような気がしています。正確さだけを追い求めると会話自体が止まってしまったり、内容に集中できなくなってしまうので、会話の流れから取るに足らないエラーは思い切って見逃して、別の機会に触れる、ぐらいがちょうど良いのかもしれません。Fluencyを意識するということです。一度で完璧を求めても難しいので、根気よく長期戦と捉えて向き合うことがカギかもしれません。

最後に

専門用語では”Error Treatment”と呼ぶそうですが、大切なことは、親や周りの人たちの毎日の観察のような気がしています。「昨日一回自分で直せたから、触れなくていいや」「昨日指摘したけど直ってないからもう一回言ってみよう。」など、長期的に根気よく捉えると良いかもしれません。

言語学習・言語教育の歴史を経て、何が良いのかと言う議論がありましたが、一つ私が好きな言葉があります。

良い先生は、学習者や場面に応じて教え方を変えられる

学習者は性格も学習スピードもそれぞれ異なるので、一番身近な親が良い先生となって、子どもの長期的な発達を見られるように、教え方の選択肢を多く持てると良いような気がしています。

息子は「ヘリコプター」となかなか言えず、
ずっと「ヘリポクター」と言っています。。

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参考文献
Brown, H. D. (2014). Principles of language learning and teaching (6th ed.). Pearson Education.

Kumaravadivelu, B. (1994) "The Postmethod Condition: (E)merging Strategies for Second/Foreign Language Teaching". TESOL Quarterly, Vol.28, No.1, 1994.


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子どもに教えられたこと

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