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いつかのための詩集

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どこかで酒と出会うための詩集。
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2019年6月の記事一覧

膨れた腹と君

膨れた腹と君

千歳飴は虫歯になるまで
ジャムは怒られるまで
肝油グミは缶が空くまで
キャンディー・ガムは音がしなくなるまで

ハンバーグは冷凍ご飯がなくなるまで
焼いたカレイは卓上醤油がなくなるまで
トーストははちみつが全面で焦げるまで
お茶漬けは舌が焼けただれるまで

おにぎりは午後いっぱい居眠りするまで
卵焼きはスイーツになるまで
生姜焼きはしょうがなくなるまで
紅茶花伝は売り切れるまで

コンビニおでんは

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スターバックスを知ったときから

スターバックスを知ったときから

待っていてとまた呟いてしまった
さらさら ほとりにひとりでいた川
呟いてから数時間
買ったあんぱんに仄かな熱が

桜が取り残されている
花はもう散っていた
当たり前の夏至の午後
耳が壊れるよ 少年の声

3時間目の あれ
眠いんだよ 英語の和訳
あんなに
怒らなくってもいいじゃんか ねえ

10分早く出てきてしまった
出欠は あれ無効だろうか
来週も再来週もあるから
いや いっそ履修をやめよか

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スーパードライが冷えているから

スーパードライが冷えているから
10分だけ早く 家に帰っておいでよ
たまには
どうでもいいおしゃべりなんてしないで

下校していく女生徒を
小窓から眺めながら
じゃがいもを煮ておくから
10分だけ早く 家に帰っておいでよ

今日は約束をしていたわけじゃないし
急な連絡は嫌がるからしないけれど
鼻歌を歌っている 有名な映画の挿入歌
男が雨の中笑って踊る 家に帰っておいでよ

近所の魚屋が移転前最後の

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君の表情が心地いいのは、僕を見つけているからだよ

君の表情が心地いいのは、僕を見つけているからだよ

その瞬間に僕は死ぬのだけれど、

見つけてもらわなければ生きていなかった、

という思いを撫でて愛でて青く農村の暮れていく、

不特定多数送信して、

半笑いで問うていて逃げ腰、

今日もひとり月から隠れてる、

ねえ今日はあれがうまくいったね、

さあ明日はあれがうまくいくといいね、

うまく行きすぎて、

うまく行くことが、

全てどうでもよくなればいいのにね、

「またそれっぽいことがいいた

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田んぼ 体温 6度8分

田んぼ 体温 6度8分

みな寝静まって夜の風情

歩く 歩く 歩く 歩く

カエルの鳴き声と

アスファルトを擦る靴底の声

ヘッドライトが植えたばかりの

稲を照らしては

また暗くなり

訪ねている

あなたは眠そうだ

視線を空に向けて

静かだ

ふわりと

シャツの袖揺れる

見ていたい 見ていたいな

夜が裏返って

また起きるまで

電灯のない道で

輪郭をなぞる

ひっそりとした鳴き声

ひっそりとした鳴

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景色はお前をわすれないよ

景色はお前をわすれないよ

平熱で海を見にいく

学校から一番近い船着き場まで5分

今日も明日も明後日も

自転車を走らせて

ずっとずっと

この瞬間を待ち望んで生きている

音楽を聴きながら

下り坂に明かりがともり始める

木の葉が安心しきった

風のない蒸し暑い日

平熱で海を見にいく

綺麗だったころの記憶がある

波に泡 とける景色 流れない時間

そのどれもが今となっては懐かしい

気づくと涙が流れている

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