「黒き魔人のサルバシオン」10
「――ったく、やっぱ何か隠していたみてえだな」
天を見上げながらグレンは恨めしげに呟く。横を見れば、眠りにつく前までそこにいたはずのエルキュールの姿がなかった。
もちろん通常なら大したことではない。用を足しにいったか、眠れないから外の空気を吸いにいったか、今この場にいない理由は幾つか考えられる。
しかし、エルキュールが出ていった理由はそんな気軽なものではないとグレンは半ば確信していた。
彼の目、彼の声、彼の態度は、あの時ヌール広場で別れたときとは明らかに異なっていた