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老舗呉服店とスイーツショップが融合する自然。うれし庵のものがたり

嬉野温泉 旅館大村屋がお届けする「嬉野温泉 暮らし観光案内所」にようこそ。連載のために月に1度は必ず嬉野温泉に泊まっている、ライターの大塚たくま(@ZuleTakuma)です。

今回は嬉野の温泉街で「うれし庵」というスイーツショップを営む、澤野典子さんにお話をうかがいました。

嬉野茶スイーツの名店・うれし庵とは

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うれし庵は、嬉野温泉商店街にある山下呉服店の一角でスイーツを製造販売しているお店です。

看板商品は5種類のムースとスポンジケーキを”もっちもち”の皮で包んだ「もちもっち」。

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外の生地のもちもちの食感と、とろけるムースの食感のギャップが楽しい一品です。

観光客に人気なのは、嬉野茶をふんだんに活用したスイーツ。筆者もうれし庵で抹茶パフェをいただいたことがありますが、絶品でした。

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創作のお茶スイーツにはかなり力を入れており、とくに人気を集めているのはうれしの抹茶100%のモンブランです。

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抹茶をふんだんに使った栗のクリームは、普通の抹茶味のスイーツとはひと味もふた味も違います。お茶そのものの香りをしっかり楽しめ、濃茶を食べているような食感なのです。

こんな絶品スイーツショップが、なぜ呉服店の一角に……?

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今回、知られざる「うれし庵」の秘密も解き明かしていきましょう。


老舗の呉服店だったうれし庵

うれし庵に到着すると、店主の澤野さんはなにやら、古い写真を手にしていました。

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ーー尋常じゃないくらい古い写真ですね、それは……。

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ここを建てたときの写真があったので、持ってきました。業者に頼んで鮮明にしてもらったものもありますよ。

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ーーおお、すごい。鮮明ですね。

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この建物が今でも残っているということですからね……。

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ーー何年くらい前なんでしょうか。

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110年くらい前ですね。大村屋さんもそれくらいですよね。

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そうですね。もしかして、大正時代の大火で一緒に燃えていたのかもしれませんね。このあたり一帯が焼けたと聞きましたし。

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ーーこの呉服屋さんだったお店から、今ではスイーツショップになっているんですよね。

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もともとは「キッカケをつかむとこ うれし庵」ていうのが始まりで。ぼくが嬉野に帰ってくる前からされてましたよね。

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今でも看板は残っている

ーーじゃあ、少なくとも10年以上はお店を続けてらっしゃるんですね。

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もともとはパティシエに修行へ行かれていたんですよね。

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そうです。小さな頃からお菓子作りが好きで。京都の専門学校へ行ったり、福岡の菓子店で働いたりしていて。その後、武雄のケーキ屋さんに10年ぐらいいました。

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ーー将来はここでお店を開こうと考えていらっしゃったんですか?

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いえ、とくにそんなことは考えていませんでした。もう漠然と、小さい頃からの夢で「お菓子屋さんになりたい」と思っていました。それを実現したのが、このお店です。

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ということは、武雄のケーキ屋さんで働いている頃ぐらいに「うれし庵をやろう」という構想が出てきたんですか?

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いえ、それも違って。そもそも「うれし庵」って、私が始めたお店ではなく、姉が始めたお店なんです。「うれし庵」と名付けたのも姉です。

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えっ!? そうだったんですか?

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お仏壇のある生活スペースでカフェ営業開始

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温泉街にお茶を飲めるところがなくて、うちは呉服店なのに「どこかコーヒー飲めるところはありませんか」とよく聞かれていたんです。

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昔は喫茶店がありましたけど、温泉街のメイン通りにはないですよね。うれし庵ができた当時の嬉野は今よりも「夜の街」という印象で、昼間に開いているお店が今よりもさらに少なかったんですよ。

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そしたら姉が「じゃあ、うちでコーヒーを出そう」と。そして、私のケーキも出すことを勧められて。でも私はまだ武雄のケーキ屋さんで働いていたので。週1回金曜の夜にケーキをこそこそつくっていました。

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ーー武雄で働いているのに、その合間をぬってお店のためにケーキをつくっていたんですか!

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姉も長崎にいて。金曜の夜にここに来て、土曜日だけ店を出していました。その頃はここではなく、奥のスペースで。

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ーー奥のスペースって、住居なんじゃないんですか?

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はい。6畳と4畳の部屋で。お仏壇もあります。そんな部屋でカウンターをつくって。

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カフェで「仏壇ルーム」はなかなかないですよね。

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私も最初は「嫌かな」と思って隠していたんですけど。「まあ、あるものだしな」と思って。

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悪いものではありませんからね。

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はい、むしろお賽銭が入るようになりました。

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やっぱりお仏壇があると、一回は手を合わせないとって思いますからね。

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ーー「キッカケをつかむとこ」というコンセプトがありましたが、具体的には何をされていたんでしょうか。

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当時は町のおばちゃんが手作りした雑貨などを取り扱っていました。当時は「マルシェ」とかも、そんなになかったし……。

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「マルシェ」という言葉が一般的になったのも最近ですよね。

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実際に売れてお金がもらえると、作り手のおばちゃんが喜んで喜んで。その姿が「キッカケをつかむとこ」のきっかけになりました。

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その営業形態は何年間くらい続けたんですか?

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2年間くらいですね。家庭の事情で姉が続けられなくなったんですよ。そのときに「このままうれし庵を潰したらいけない」と思って。

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ーーお店への想いもありますしね。

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「いずれは私がここでケーキ屋さんをやろうかな」と次第に思い始めていた頃だったんですよね。私のイメージではお店を開くのは、もっとずっと後だったんですけど。かなり早めにそのタイミングが来てしまいました。

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ーーまさか、お姉さんから不意に引き継ぐ形でスタートしていたとは。まさに澤野さんが「キッカケをつかむとこ」にしている。

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あのお仏壇の部屋で、週3回カフェをやるところから始まったわけですね。

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子育てとかで休むこともありましたが、4年前の改装するまではお仏壇の部屋で続けました。

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ーー人通りの少ないお仏壇がある和室でカフェを続けられるんですね。いろいろやりようはあるんだなぁ……


子育てしながら自分のお店をやるということ

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改装はどんな目的だったんですか? もっと広いところがいいとか、そういう……?

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そういう熱い想いがあればいいんですけど、そういうのじゃなくって。家が傾き始めたから。

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そういう経緯だったんですね。

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ーーなんか一貫して、ご自身の意思というよりは、周りの流れに順応していっているような感じですね。

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流されやすいので……。

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その自然な形でお店を続けられていることが重要なんじゃないですか? 周囲に求められて、自然な立ち位置が決まっていくのはいいことですよね。

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それ、いい解釈ですね。

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それにしても、子育てしながら自分の店をやるって、やりたい人がたくさんいると思うんですよね。

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私も「お店ができるって幸せだな」って思っていたんですよ。でも、実際やったら「なんでこんなにやらなきゃいけないんだ」って思いますね。今はだいぶ落ち着いたんですが。とくに小学校の低学年くらいの頃はもう……。

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あー、いちばん手のかかる……。

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もう「お店なんてやんない方が幸せ」と思いました。

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でも、実家でおばあちゃんにも子どもを見てもらいながら、大変だけど自分のやりたいこともできるって環境は、すごくいいですよね。

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ーー大村屋さんは、まさにそういう環境ですよね。

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ぼくも子どもが4人いますけど、そこは幸せですね。「仕事」と「生活」がともにある、というのは大変な面もあるけど、子どもにとってもいいことだなと思います。

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ーーお子さんにはどんな影響がありました?

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最近「お店やりたい」とか言いますよ。「将来メイクアップアーティストになって、大村屋の一角にテナントを出す」って。「温泉入って、メイクして帰れたら最高じゃん」って言うんです。「だってパパ、お風呂入ってすっぴんで帰るのを恥ずかしそうにしている人は多いよ」って。

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ーーうわ。オトナの発想だな……。

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そういう視点がやっぱり面白いなと思います。

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ーー旅館に対し、家と同じような愛着、愛情を持っていることが感じられるアイディアですね。

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ぼくが子どものころは「旅館に子どもは行かないように」「忙しいときは家にいなさい」みたいな感じで、生活と仕事が分けられていた感じがありました。ぼくはもっと旅館の姿を見せたいと思っていますね。

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うちは子どもたちはお客さんがいてもお構いなく、ここから「ただいま」と言って帰ってきます。最初は「裏から来なさい」と言ってたけど、「なんかいいかな」って。子どもが「ただいま」と言うと、お客さんが「おかえり」と言ってくれたりして。

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ーーいいですね、その光景。

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なんか、それって全然違和感なくなってきましたよね。演出しすぎず、リアルを見せて良いんだという。生活の一部を見せるのを、恥ずかしいことだと思わなくなった。

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ーーホッとしますしね、その方が。

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お客様はそう言ってくださるんですよね。大村屋の常連のお客さんと、うちの子どもを大浴場に一緒に入れてたら「健太くんが小さなときも一緒に入ってたから、不思議だね」と言われたことがあって。

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ーー温泉旅館ならでは。そういうコミュニケーションができるのも、すごくいいですよね。

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子どもにとっても社会性が身につくよい機会だと思います。他人の大人と臆せず喋れるようなコミュニケーション力も身につけられるんじゃないかなと。

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ーー自宅がお店というのは、そういう機会をつくることにもなるんですね。

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うちは子どもたちに「うれし庵を継がない!」って、言われちゃっているので……。

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えっ、どうして?

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最初は「子どもも楽しめるようなお店」を目指していたのに、私が忙しすぎちゃって。夜中もずっと仕事してるのを見てたからじゃないですかね。子どもに「今仕事中だからっ」って言ってしまってたこともあったし。今は「寝るときだけは必ず子どもと一緒」って決めてます。いつまで一緒に寝られるかわからないし。

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ーーなるほど、リアルをしっかり見ているんですね。

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継ぐ継がないはもちろん自由なんだけど「継がないと思われている」のは、ちょっとダメだなあと反省しますね。

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ーーでも、まだわかんないですよ。

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ぼくも小さい頃「絶対旅館は継がない」と思ってましたよ。子供のころ、宴会場の前で母親で出てくるのをずーっと待ってたりして。もう嫌で嫌でしょうがなかったです。

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ーーそんな記憶があるんですね。

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でも、最近子どもが言うんです。「うれし庵は、お客さんが多いのにあまり儲かってないなあ」って。

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通帳見たんですかね。笑

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「なんで知ってるんだ!」って思いました。「どうしたら儲かるのか考えてみよう」って、この前言っていました。

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ーーまだまだ、継ぐのもありえそうな感じですね。

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経営者になって、職人さんには来てもらえばいいですしね。

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嬉野出身である前に、一人のお茶好きだった

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ーーお店で「嬉野の食材を使う」という構想は、もともとお店をオープンする頃からあったんでしょうか。

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私はもともとお茶が大好きで。「嬉野だから」という理由ではなく、お茶が好きだから自分でお茶を使ったお菓子をつくり始めたのがきっかけですね。

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ーー「嬉野」ではなく、ご自身の「お茶好き」が根幹なんですね。

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抹茶のお菓子って山ほどあるんですけど、なんというか「抹茶味」の味しかしないことが多くて。私は茶道を20年くらいやってたこともあって、ドロドロした「濃茶」がとても好きなんです。お茶そのものの味がわかるお菓子を食べてもらいたいと思っています。

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緑茶ケーキ「茶畑」

ーーお茶を愛する者としての想いから、お茶のお菓子づくりがスタートしたんですね。

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スタッフは煎茶道をやっていて、互いに茶名を持つほどしっかりと茶道に取り組んでいるので、うれし庵でお茶会ができればと思っています。

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煎茶道・・・急須等を用いて煎茶や玉露などの茶葉を用いる茶道の一種。
茶名・・・一定の修行を終えた茶人に付けられる、茶道の世界での名前。

ーーなんかお茶会と言われると敷居が高いような気もしますが……。

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そうですね。だから、嬉野茶時のように「本当に行きたい」と思える人が集まるお茶会にしないとダメですよね。

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嬉野茶時:「嬉野茶(うれしの茶)」「肥前吉田焼」「温泉(宿)」の三つの伝統文化と、時代に合わせた新しい切り口を加えて、食す・飲む・観るといったもてなしの空間や、喫茶の愉しみを作るプロジェクト。

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嬉野茶時に携わって、お茶のお菓子をつくったんですけど、嬉野茶時においては、お菓子は脇役なんですよね。だから、お茶スイーツメインのお茶会をしたいなぁ、と。

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スイーツがメインで、その合わせるものとしてのお茶。コースディナーのスイーツ版って感じですよね。

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ーーそれなんか、すごくいいですね。興味湧きます。お茶会なら敷居高そうですけど、スイーツメインなら敷居下がる感じがあります。

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前菜のお茶スイーツ、メインディッシュのお茶スイーツ……。そして、それを引き立たせるお茶。旅館でもできそうですね。

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ーーうれし庵さんで出されているお茶のアイス、美味しいですよね。アイスクリームなのに、こんなに華やかなお茶な香りがするんだって、驚きました。すごくリッチな気分。

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茶葉はお茶農家さんやお茶屋さんから直接買ってきてるんですか?

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そうですね。茶葉にはこだわってますし、それぞれのお茶に生かしたスイーツをつくっています。たとえば、一番茶のほうじ茶なら柔らかくて甘い味わいなのでプリンにぴったり。焼き菓子ならもう少し強い味がほしいので、強めに火を入れたお茶を使います。

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ーーお茶だけでこんなに幅広い世界があるなんて。もしかすると、一般人にはお茶よりもスイーツのほうが伝わりやすいかもしれません。

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そう言われるとやれるような気がしてきますね。笑

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老舗呉服店とスイーツ店の自然なフュージョン

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今後、やりたいことはあるんですか?

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通販にもっと力を入れたくて。「マルト」っていう山下呉服店のマークがあって。そのマークをあしらった和スイーツの別ブランドを企画中です。

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今でも呉服屋さん機能を残しているというのもこだわりですよね。

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母のためですね。

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ーーすごく雰囲気いいですよね。まさに昨今の「レトロって、エモい」ムーブメントにもハマりますし。若い女性にツボの人は多そう。

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でも、いつまでも呉服店を残せるわけではないので……。だから「マルト」ブランドは残せればなと。

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ーーただ呉服店機能がなくなっても、「もともと呉服店なんです」という、この空気感は残してほしいなぁ。コンセプトカフェのような良い空気感。

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たしかに呉服店のスペースの空気が、お店の雰囲気をつくっている感じはありますね。

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ーーこのスペースとかめっちゃいいですよ。こんな棚ないですよ、普通。

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そちらに座った方は確実に長居しますね。

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そうでしょうね。落ち着きますよね。

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ーーなんか朝ドラのセットみたいですよね。これなくなると、結構印象変わりそうで寂しいなぁ。

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私はけっこう葛藤があるんですよね。残すか、なくすか……。

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大村屋も綺麗にするところもあるけど、古さと共存しながらやっているところも多いんですよね。超スタイリッシュにもできるけど、あえてせずに、落ち着けるように。高級店に憧れますけど……、嬉野に来るお客様が果たして、東京のようなスタイリッシュさを求めているのかと。

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ーー……求めていない気がしますね。

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もちろん中にはいらっしゃるんでしょうけど。でも、都会から嬉野に来たときにガチガチにスタイリッシュだと「佐賀に来てる感」が薄れちゃうじゃないですか。うれし庵さんのような、歴史を重んじてるからこその落ち着いた雰囲気って、狙って出せないですからね。

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ーーとても自然に共存しているのがいいですね。実際に狙っているのではなく、物語があるわけですし。

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創業100年の呉服屋と現代のスイーツショップがフュージョンしている感じが面白いですよね。

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ーー看板には「呉服店」って出ちゃってますからね。

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お店を見逃しちゃいそうになりますよね。

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ぜんぜんわからないって言われます。笑

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ーーでもやっぱ、これがいいと思うんですよね。この看板がモダンな「URESHIAN」みたいな感じの看板になっちゃったら、なんか急に寂しいですよ。

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歴史をスパッと断ち切るのではなく、地続きに続いている感じがしますよね。自然に続いている感じがいい。お母さんに怒られてもいいから、無理やりやっちゃう選択肢もあったと思うんですよね。その配慮の形が自然で。親子関係がお店に表れていますよね。

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ーー今でもここにあるような、呉服店っぽい商品は売れるんですか?

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それは旅館の仲居さんがね、足袋とか腰巻きの紐とかを使うんですよ。

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ーーそうなんですね! これも温泉街ならではで、いいですよね。


お茶を有料で提供する葛藤

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これから新幹線が開通して、新たな旅行客が見込まれる中、嬉野茶にちゃんとこだわりを持って提供しているお店の役割は大きいですよね。

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ちゃんとお茶を美味しく出さなきゃな、と気が引き締まりますね。以前、お茶を300円で提供していたことがあって。温度とかもしっかり調整して出すんですけど「お茶でお金とるの?」って言われて。

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昔はそうですよね。嬉野茶時をやり始めて、少しずつ変わり始めたと思いますけど。

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いやいや、ずいぶん変わりましたよ。

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最初はお茶を1杯800円で出そうと思って。すると、お茶農家さんから大ブーイング。「絶対無理だよ」「お茶でお金は取れないよ」って。でも、今では野外茶室で一人一万円ですからね。

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ーーお茶の可能性を潰していたのは、つくり手の「お茶でお金は取れない」という意識だったと思うんですよね。

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実際、コーヒーよりも原価高いんですよ。それなのに、日本人の意識の中では「お茶はタダ」って感覚があって。その意識は変えていかないといけないと思います。

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ーーでも、うれし庵では嬉野茶時以前にお茶を有料で提供していたんですね。

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嬉野で初めてお茶にお金をとったお店なんじゃないですか?

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ーー「300円で出そう」と決意するまでに葛藤はありましたか?

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めちゃめちゃありました。煎茶道で使ってるような茶器を使って。小さなお茶碗で、2煎目や3煎目も楽しめるようにして。

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それ、300円はむしろ安いですね。でも、それは今だから「安い」と言える。当時はそんなお店はなかったので、まさに先駆者ですよ。

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ーー一回お金払って満足できれば、その価格で納得できますよね。0円と思っていたものでも、300円払って満足できれば300円だし。1万円払って満足できれば1万円。

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そうなんですよね。烏龍茶にはみんな当たり前にお金払うじゃないですか。

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そう! あれはおかしいですよね!

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紅茶にも払うじゃないですか。日本茶だけですよね。

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ーーやっぱりお茶の価値を上げてくれる、うれし庵さんのようなお店が嬉野にとって重要な存在ですよね。本日は貴重なお話をありがとうございました。


自然に家庭と嬉野と共存するお店「うれし庵」

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「熱い面白い話はできませんので」と、一旦断られそうになった今回の取材。でも、うれし庵のストーリーが知れて良かったと思いました。

家族や嬉野のことを想い、しなやかに順応してきた「うれし庵」の歩み。

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呉服店とスイーツ店が一緒になった「うれし庵」は一見不自然に思えます。しかし、お店の中はうまく和と洋が上手く調和して、親子関係のように自然な空間です。

そんな中「ただいま」とお店に帰宅する子どもたち。

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家族や嬉野と自然に共存するうれし庵。そして、スイーツに惹かれてやってくるたくさんのお客さん。どれも自然です。ぼくがここにいることだって、自然。

うれし庵の居心地がいい理由が分かった気がしました。

家族や嬉野との関係性の深さがお店に現れているお店です。ぜひ絶品のスイーツを味わいに、うれし庵を訪ねてみてください。

「嬉野温泉 暮らし観光案内所」次回もご期待ください。

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