20世紀の歴史と文学(1948年)

1948年は、すでに本シリーズで触れているとおり、東條英機をはじめとするA級戦犯6名が極東軍事裁判によって死刑判決を受け、ほどなくして絞首刑で亡くなった年である。

死刑判決以外に終身刑を受けたA級戦犯も16名いたが、実は、獄中死した人以外は全員1950年代に釈放されている。

それについては、7月にまた1950年代の解説で触れるかもしれない。ここでは省略させていただく。

さて、昨日の記事では、太宰治の『斜陽』を紹介したが、彼がこの1948年に、今の東京都三鷹市の玉川上水で、愛人と入水自殺をしたことも有名な事件であった。

この年は、現代でも読み継がれている『人間失格』が発表された。太宰治の晩年の大作の一つである。

この『人間失格』の脱稿から1ヶ月後に自殺したので、遺書のようなものではないかと受け止める人もいるが、実は、生前最後の太宰の作品は、未完に終わった『グッド・バイ』である。

ネット上の青空文庫で読めるので、読んだことのない人は読むと良いだろう。

文学関係はこのくらいにして、次に国際情勢について説明しておこう。

日本が1945年8月15日に敗戦したとき、朝鮮半島や満州国はどうなったのか知っているだろうか。

8月9日の長崎原爆投下のニュースのほうが衝撃的だったので、あまり知られていないと思うが、同じ8月9日にソ連が満洲国に侵攻し、そのまま南下して朝鮮半島北部を占領したのである。

これは、ソ連が勝手にやったのではなく、アメリカが実はヤルタ会談で促していたのである。

今のロシアがクリミア併合したことは記憶に新しいが、実は、ヤルタ会談の「ヤルタ」はクリミア半島南部の都市なのである。

そのヤルタで、1945年の2月に、アメリカのルーズベルト大統領とソ連のスターリン、イギリスのチャーチル首相の3人が集まり、朝鮮半島については南北でアメリカとソ連が間接統治することをあらかじめ取り決めていた。

その取り決めにしたがって、ソ連は日本に対して宣戦布告したのである。

そして、日本は広島と長崎に立て続けに原爆をアメリカによって落とされ、とうとう降伏したので、その降伏をもって朝鮮半島は日本から独立することになった。

その後しばらくアメリカとソ連による間接統治が続いたのだが、終戦から3年後の1948年8月に、韓国が正式に国家として成立した。同時に、アメリカ軍による間接統治も終了した。

このときの初代大統領が、李承晩である。

そして、1ヶ月後の9月9日には、今の北朝鮮である「朝鮮民主主義人民共和国」が正式に独立し、その後12月にソ連軍も撤収した。

この北朝鮮の独立によって、初代の最高指導者として就任したのが、知る人ぞ知る金日成(キム・イルソン)である。

彼はこのとき36才であり、1994年に82才で亡くなるまでずっとその地位にとどまり、米ソ冷戦などがあった激動の時代を生き抜いたのである。

その後、金日成の長男の金正日(キム・ジョンイル)が2代目の指導者となり、そのときに、小泉純一郎元総理が、拉致被害者家族の帰国を実現させたことはものすごく大きな話題になった。

その後、金正日は2011年に亡くなり、三男の金正恩(キム・ジョンウン)が、事実上の3代目の指導者となったのだが、この就任時の年齢が28才だったのは、誰もが驚いたことだろう。

朝鮮半島の問題は、1945年からずっとアメリカとロシアが関わっているのである。

明日は、いよいよ毛沢東の登場である。




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