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読んだ小説を褒めながら紹介するnote ~『義妹生活』篇~

 あ、タイトル短い。
 ここ最近は長いのが多かったですからねえ。
 ラブコメ系ラノベだと随一くらいの短さではないでしょうか。

書影・著作者紹介。

\どーん/

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 義兄妹、めんこい。
 イラストは Hiten 先生
 本作以外には『三角の距離は限りないゼロ』のイラストなども担当されています。
 好きです。儚さがそこはかとなく漂うタッチが大好きです。

 作者は三河ごーすと先生
 MF文庫Jでは3シリーズ目。
 他著作には第18回電撃小説大賞《銀賞》の『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』、同じくMF文庫Jからリリースの『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』、GA文庫の『友達の妹が俺にだけウザい』などがあります。


 あと、最近のトレンドとかをあまり知らないタイプのニンゲンではありますが。
 小説と同時にYoutubeでも展開というのが、最近はあるんですね。
 知りませんでした。


『義妹生活』 #とは

 主人公は高校生・浅村悠太《あさむら・ゆうた》。読書中毒者。
 物心ついたころには既に両親はいつも喧嘩。父親から離婚する旨を切り出されたときも当然だろうなとやや冷ややかに受け入れ、その父が自分の甲斐性の無さでこういうことになったと説明をしたときも「いやいや、原因は母親の浮気だろ」と静かに察したくらいには冷静な彼。
 そんな経緯もあって、生物学上「女」として分類されるタイプのニンゲンに対しては一定の警戒感を持ち、過度な期待は慎むようになっています。

 もちろん、母親がそれだったので、彼の親権は父親へ。
 そしてああいう経緯で別れたのだから、再婚はないだろうなと思っていたところで、まさかの再婚報告
 聞けば、『上司に連れられて行ったお店の人』だそうで。
 どんな店だよと内心訝りつつ、するならそれでもいいじゃないか、とまたも少し冷ややかに歓迎する悠太。
 向こうさんの家庭の様子を写真で見せてもらうと、そこには新しく母親となる人と、小学生くらいの女の子。人見知りのような雰囲気はあるが、可愛らしい子だった。どうやら、向こうさんにも「バツ」があるらしい。

 そして、今夜顔合わせがある、とのこと。
 ※言おうと思って先送りにして1ヶ月、当日までだんまりでした
 急展開に拍車が掛かる。

 さらに、問題が発生。
 見せられた写真はかなり昔のモノだった、とのこと。

 というのも――。
 ――その娘さん、高校生でした。
 ――――っていうか、同い年でした。

 彼女の名前は、綾瀬沙季《あやせ・さき》
 ギャルギャルしいわけではないものの、髪色は派手だし、ピアスも付けてるし、ワンショルダーのトップスだし。
『おしゃれで完全武装した雰囲気のイマドキJK』と悠太は表現しますが、まさにそんな感じの女の子です。

 いまひとつ女の子――しかもこれから妹になる(誕生日は1週間の違いで悠太の方が早いので『兄妹』となりました。……どこかの義兄妹のようにどっちが兄or姉なのかで喧嘩しなくて済みましたね)女の子との距離感をはかりあぐねていたところで、沙季が言ってきます。
 そして、これがいわば「この義兄妹のスタンス」を決定づけるものになります。
 ※以下、引用

「ねえ、浅村くん。お母さんたちが出てくる前に、話しておきたいことがあるんだけど」
「親に言えないこと?」
「そう。もっと言うと、浅村くんにしか言えないこと」
「あんな短い会話でそこまで信頼を獲得したんですか。すごいな、俺」
「そのユーモア、話し方、表情、でもそのどれにも強い熱を感じない。だからたぶん、私の言葉も正確に理解してくれると思って」
「あー……」
 なるほど。つまるところ彼女は俺と似たタイプ。《さっきまで感じていた違和感も、それで説明できるわけだ。》
 そして彼女は口にした。後から振り返ってみれば、このときの彼女の言葉が、俺たちの兄妹関係を決定的に定義してしまったんだろう。

「私はあなたに何も期待しないから、あなたも私に何も期待しないでほしいの」

※『義妹生活』 p.27, 28 より

 こうして、意見の「摺り合わせ」ができる、どこか冷めたような――いや、あくまでも現実的かつ打算的なところすらある義兄妹関係が始まります。


推しポイント。

 強いてあげれば、健気な義妹、ですかね。
 ただ、ギャルゲー・エロゲーで出てくることがある義妹キャラの健気さとは、少し毛色が違うモノになっています。

 不思議なお話なんですよね。
 どちらかが猛烈にラブアタックをするなんてことは(今のところ)起こりえない設定で、そういう意味では非常にバランスの取れた関係のようなんですが、ところがどっこい、アンバランスさというか、危うさを持っている関係です。
 夏の降水確率40%といった感じの危うさです。

 原因はどこにあるか、と問われるとこれまた難しい話なんですが。
 あらすじにもあるとおり、沙季が『他人に甘えられないタイプ』であるところにも、ちょっとあるのかもしれません。

「ううん。浅村くんも、お義父さんも、すごく良い人だし、頼り甲斐があると思う」
 でも、と、彼女は続ける。
「――二人が悪人だったら、もう少し気が楽だった」

※『義妹生活』p.136 より

 どうやらこういう思想に至るには、自分が置かれていたシングルマザーの家庭環境と、その母親の仕事内容に、決して少なくはない影響を受けているようで。
 手っ取り早く経済的な自立を図る沙季は、短時間でお金を稼ぐ方法はないかと本屋でバイトをする悠太に訊いて――最終的に叱られてしまいます。
(※本当はラストまでの内容を書きたくはないのですが、シリーズ物なので多分大丈夫でしょう、と自己擁護。どういう経緯なのかは是非本文を読んで確認していただきたい)

 結局、ウマく甘える方法が解らない沙季は、「甘えたら終わり」と考えている節があって。
 ただそれゆえに健全に「義妹生活」が回っている感も否めない。

 ああ、難しい話です。
 尊い。


 ……その辺り、義理の兄妹が出てくるお気に入り作品(『ドメスティックな彼女』、『継母の連れ子が元カノだった』)とは違った傾向ですね
『ドメスティックな彼女』は、好きになってしまった相手が学校の先生なのでいろいろと諦めていたところ、強引に連れられて行った合コン終わりに他校の女の子と1回限りの肉体関係を持ったら、その先生が義姉に、肉体関係を持った女の子が義妹になった話ですし。
『継母の連れ子が元カノだった』はかつては好き合って付き合っていたけれどイヤなところばかりが目に付くようになって喧嘩別れしたふたりが義理のきょうだいになっちゃった話ですし。


既刊について。

 2021年8月現在、3巻まで刊行中です。



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