山田

(1989ー)健康・愉快・粗忽

山田

(1989ー)健康・愉快・粗忽

最近の記事

読書記録:舌津智之、小沼丹、川端康雄、上野正道、ウェーバー

上野正道『ジョン・デューイ』おもしろかったが、教育学の話題になると興味が薄らいでいく自分を発見する。ローティがかなり好意的に言及していたので、ずっと気になってはいたし、『メタフィジカル・クラブ』を読んだから、いい機会だとも思った。でもやっぱりこの本を読み終えても、デューイ本人の著作にあたるほど持続可能な関心が生まれることはなさそう。手元にある『哲学の改造』はいつか読もうと思うが。 川端康雄『ジョージ・オーウェル 』読みやすい。オーウェルの生涯じたいが短いため、ギチギチの記述

    • 読書記録:ケルアック、ホイットマン、メナンド、藤本和子、中村隆文

      ジャック・ケルアック『ザ・ダルマ・バムズ』仏教に関する蘊蓄を散りばめたヘンテコリンな作品ではあるものの、同時に若々しくて、どうしようもなく愛おしい傑作。仏教色がもう少し薄ければ、『路上』を凌ぐ作品になっていたかもしれない。何よりジェフィ(ゲーリー・スナイダー)がカリスマ的でハチャメチャで面白い。語り手レイ(ケルアック)もまたハチャメチャではあるのだが、それでもいくらか平凡サイドのまなざしを待っており、それがナラティブに安定感をもたらしている。それは『路上』にも通底しているケル

      • 読書記録:宇野重規、若林恵、井波律子、岡本隆司

        宇野重規・若林恵『実験の民主主義』オモシレー。途中で何度も共感と反発のあいだを往復しながら、ほぼ一気読み。しかし主要トピックであるファンダムにはさして興味をひかれなかった。過去作『私時代のデモクラシー』、『民主主義のつくりかた』でも伺えた、思想史の知見を現実社会へ適用することに対する宇野のモチベーションが、本作ではより前面に出ている。若林に同調しているのか、それとも「面白い意見ですね」と言いつつ一定の距離を置いているのか判断がつきにくい部分はあるものの、これまでで最も宇野が専

        • いまの気分

          スポーティーなものが好きだ。どれほどすばらしいものでも、何かしらの形でスポーティーなところが見つからなくちゃ嫌になる。 そう、スポーティーが至上命題なのだ。逆に言えば、繊細で研ぎ澄まされた感性、それが落とし込まれた作品が苦手である。もちろん、かといってどんくさくてのろのろ、じめじめしたものなど論外だ。そんなのは耐えられない。 スポーティーにチェックを入れて、ソートをかける。ネガティブでふさぎこんでばかりいるようなものであっても、とはいえなにかヤケクソな、空元気の気配を含ん

        読書記録:舌津智之、小沼丹、川端康雄、上野正道、ウェーバー

          読書:井波律子、マッカラーズ、藤崎衛、鹿島茂、小倉紀蔵

          井波律子『裏切り者の中国史』無学なので知らない人物も多かった。伍子胥、王莽、司馬懿、安禄山など、ごく浅くしか知らなかった人物の印象的なエピソードを仕入れることができた。(たとえば?と問われると答えに窮するけどね。)生きた時代の異なる裏切り者たちをポンポンと紹介するだけじゃなくて、その人物が登場するまでの歴史の流れとか王朝の興亡とかを軽く書いてあるのである程度、通史的な勉強にもなった。元代末期、知識人が食いっぱぐれるようになったので、俗文学に人材が流入して、それが西遊記や水滸伝

          読書:井波律子、マッカラーズ、藤崎衛、鹿島茂、小倉紀蔵

          いまの気分

          酔っ払って、電車を待っている。すこし胸の辺りがムカムカする。いつものように本を読むことができない。集中力が切れるからだ。仕方がないので暇つぶしに何か書いてみようと思う。 でも困った。何も書くことがないのである。音楽でも聴こうか。よろしい。『Tropicalia: Ou Panis et Circenses』の一曲目、「Miserere Nobis」にしよう。 これはいい曲だ。 でも、きょうは耳と頭のあいだにアルコールの残りかすが詰まっている。音楽がすんなり入ってこない。

          いまの気分

          読書:荒川洋治、青山南、苅部直、平出隆、川端香男里

          荒川洋治『文庫の読書』現代詩作家、荒川洋治による文庫本書評集。とくに海外文学の書評が勉強になる。印象的なシーンの切り取りと、的確なプロフィール紹介。プロの仕事だ。日本文学の方は、作者や作品への距離の取り方がより近くて、それもまたいい。荒川洋治はいつだって、気を衒った褒め方は絶対にしない。そのことにまず感服する。ただ、こちとら俗物なので、他の技も見せてほしいと思ったりする。つまり悪口を聞きたくなってしまう、ということだ。あと現代文学への言及が読めればもっといいのにな、とも思う。

          読書:荒川洋治、青山南、苅部直、平出隆、川端香男里

          読書:渡辺浩、テイラー、三木那由他、サルトル、大黒康正

          ひじょうに忙しく、なにもできていない。通勤電車で本を読むのが唯一の文化的活動。気が滅入る。 渡辺浩『日本政治思想史』オモシレー。思想の単なる紹介に終始せず、その社会的条件や制約まで含めて多角的に語られており、浮かび上がる江戸の思想史のモザイク状の輝きに思わずくらくらする。タイムスリップ体験。さりげない文章の端々から見え隠れする、すさまじい学識。さりとて一つ一つの章の記述自体は重厚長大というわけではなく、むしろ軽やかでコラム的とも言えそうな文章で構成されている。(平易に書かれ

          読書:渡辺浩、テイラー、三木那由他、サルトル、大黒康正

          花田清輝、小池昌代、舌津智之、難波和彦、ハッキング

          花田清輝『花田清輝評論集』花田清輝は文体で読ませる。古びない。が、この本は評論集と呼ぶにはいささか小文の寄せ集め感があって、なんかこうもっとゆったりとした、うねりのある論考が読みたかったと思わないでもない。だがそれは、ないものねだりというやつだろう。次は講談社文芸文庫の『七 錯乱の論理 二つの世界』でも読むか。古本で見つけたら買おう。 小池昌代『タタド』あ、傑作だ。いつか長い感想を書きたい。「タタド」は四人の登場人物のあいだをなめらかにカメラが動いていく。会話文によってリズ

          花田清輝、小池昌代、舌津智之、難波和彦、ハッキング

          サンデル、リラ、河上徹太郎、山本淳子、光嶋祐介

          マイケル・サンデル 『実力も運のうち』けっこうジャーナリスティックというか、時事と絡めて議論していくスタイルなので、読みやすかった。とはいえ説明がくどくてちょっと萎えた。この内容で400ページは分厚すぎる。哲学的議論がなされる五章「成功の倫理学」は面白い。弱者の怨念・怒り・ルサンチマンがあるかぎり、いかなるリベラリズムも能力主義の手先となってしまう。それはまあそうだと思うが、対案として示されるサンデル自身の主張はいまいちキレがない。この本でいちばん先生の筆致がいきいきしている

          サンデル、リラ、河上徹太郎、山本淳子、光嶋祐介

          千葉雅也、砂原庸介、田尻祐一郎、山田詠美、渡辺昭夫

          『センスの哲学』 千葉雅也「いかに鑑賞するか」が「いかに制作するか」になり、それがさらに「いかに生きるか」へとダイレクトに繋がる。整理や説明がうまいのもあるが、むしろアドバイスや教示が水際立ってうまい。跳ね回る様でいて、インストラクター的に寄り添いもする文体の妙。内容的によく準備され練り上げられているにもかかわらず、どこか即興演奏の手触りを残しているのが印象的だ(これは彼の小説にも言えること)。『夏目漱石論』といった蓮實の批評のたくらみと歴史的意義を簡潔に解説しつつリスペクト

          千葉雅也、砂原庸介、田尻祐一郎、山田詠美、渡辺昭夫

          網野善彦、井上義夫、那須耕介、富岡多恵子、朱喜哲

          『日本の歴史をよみなおす (全)』 網野善彦ごく少数の貴族や武士が圧倒的大多数の「農民」を支配していた、というような通俗的な日本社会像に対するオルタナティブな社会像の提示。人々はさまざまな生業に従事し、都市や港でそれぞれに交易していたし、権力の中枢を離れたところにまで金融が浸透しており、社会は複雑で活気に満ちていた、そう網野善彦は主張する。歴史の記述からこぼれ落ちてしまいがちなアウトローの存在をすくいとって現代人の眼前に在らしめること、そうした一連の網野の仕事は今もなお新しい

          網野善彦、井上義夫、那須耕介、富岡多恵子、朱喜哲

          原武史、富士正晴、待鳥聡史、大久保健晴、ルナン(、おまけ)

          『「民都」大阪対「帝都」東京』 原武史疾駆する列車のスピードでぐいぐい読まされる、関西私鉄の近代史。中心となるのは小林一三の阪急だ。関西私鉄の特色は、官製の鉄道からは独立した形でターミナルと路線を展開し、自ら沿線文化を拓いてきた点にあった。しかしながら昭和の天皇即位を契機に「私鉄王国」の栄華にも陰りが見え始める。全体を貫く民と官という対立軸もよいが、近代的に開発されるキタと古代の都の面影をとどめるミナミとの対立軸も興味深い。ミナミから路線が伊勢神宮、熱田神宮へと接続・延長する

          原武史、富士正晴、待鳥聡史、大久保健晴、ルナン(、おまけ)

          クッツェー、ヴォルテール、柳田國男、吉田健一、加藤典洋ほか

          本を読んでばかりいたように感じ、またぜんぜん読んでいなかったようにも感じる、ちぐはぐな1ヶ月だった。何かに忙殺されていたのか、熱に浮かされていたのか。ふわふわとしていて、最終的には舌先に砂糖の味とざらざらした感覚だけが残る、綿菓子のような7月。その読書記録だ。 J・M・クッツェー『マイケル・K』マイケル・Kは礼を言わない。たとえ親切な男が「人間はお互い助け合うべきだ」という考えからKを一晩泊めてくれても。それは助け合いという営みの中にKの居場所がないからだ。社会から隔絶し、

          クッツェー、ヴォルテール、柳田國男、吉田健一、加藤典洋ほか

          ルソー、青山南、野家啓一、泉鏡花、桑原武夫

          実家に帰ったときにイヤホンを忘れてきたので、今月はほとんど音楽を聴かなかった。でも、通りすがりの風景がふと音楽的に思えたりする季節ではあるので、イヤホンが無くともそれほど気にならない。特に夜にあっては。…などと、意味ありげな言明でお茶を濁したくなる程度には草臥れている。そんな6月の読書記録。 泉鏡花『歌行燈・高野聖』「高野聖」は怪奇・耽美の作家、泉鏡花の面目躍如といった感じで大いに楽しめた。他の収録作品はおどろおどろしさよりも、とにかく抒情に傾斜したものが多かった。「女客」

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          加藤典洋、中江兆民、坂野潤治、松田道雄、山崎正和ほか

          暖かくなってきたので、だんだん調子が出てきた気がする。仕事に行ってもぼやぼやして、家族のことや文化のことばかり考えている。要するに仕事に手がつかないというわけだ。でもそれがいい。働いているフリをしながらも、のんべんだらりと生活と人生について考えている。これはよい傾向で、調子が出てきた証拠だ。 そういえば、この前はじめて渉成園にいってきた。敷地内からビルとかマンションがもろに見えていて、それがよかった。なんか京都っぽくないのが、とてもよかった。 ハイムの「don’t wan

          加藤典洋、中江兆民、坂野潤治、松田道雄、山崎正和ほか