終点〇〇
こうしてコンパートメントの一角で揺られ外を眺めていると、その景色とは別に、たくさんの言葉が浮かぶのです。
頭の中でぐるぐると色んな考えが回ってる時は、どうしようもなく悲しい時でもあります。
考えるなと人によく言われるのですが、考えたくないのに浮かんできてしまうのです。
悲しい曲をなぜ聞くんだと言われるのですが、わかりません。泣きたい気分だからでしょうか。
人の顔色を伺って生きるのは疲れます。
気にするなとも言われるのですが、これもまた、自分ではコントロールできないものでして。
1日をまるで青い色のついたため息で始めるのもわざとではありません。
一人陽の当たらないこの個室で孤独を感じ、何人前の客がどう付けたかも検討のつかぬシミを、ただじっと見つめるのです。
ネガティブやストレスは1番の大敵だと言われたのですが、どうも私は仲がいいようで。
ポジティブな言葉を無理矢理に吐き出して強がってみるのですが、どうも私は仲良くなれません。
どうしてか、人の感情を自分のことのように感じてしまうのです。
感じなければならない気がするのです。
どうしてか、悪夢へと進む機関車に飛び乗ってウキウキしてしまう自分がいます。
その方が楽だからでしょうか。
それでもハッと気づいた時に途中下車して村人に帰り道を尋ね、一晩泊めてもらえないかと助けを求めます。
大抵は優しく泊めてくれるのですが、朝起きた時にはその家は喪抜けの空なのです。
しんと静まり返った家に独りと言うのは、なんとも寂しいものです。
それを繰り返すのも勇気がいることであります。
それができずにまた機関車へと戻るのも避けられないことであります。
「傷つけた分だけ傷つけられ、一人また一人と残るのはゼロとなりました。」
曇った扉のガラスに乱暴な字を残したのはどこの客でしょうか。
車掌の声が響きます。
終点、〇〇はまだ先のようです。
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