龍孫江(りゅうそんこう)可換環論botオペレーター
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自己準同型〈龍孫江の群論道具箱〉
前回は準同型写像を導入しました.今回はまず次の定理から始めたいと思います. https://youtu.be/zOadQiDuCAk 定理(準同型の合成)群の準同型$${f \colon G_1 \to G_…
数学日誌別館テキスト版廃刊のお知らせ
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YouTubeチャンネルを運営する者としては、登録者1000人はひとつの、しかも重要な区切りです。おそらく多くのYouTuberがそう考えているのではない
準同型の経由〈龍孫江の環論道具箱〉
前回,いよいよ剰余環を構成した.前回までの話は,そもそもの動機づけを準同型(が導く同型)に持ちながら,どうやって他の環との関係を切り離し独立させていくかが問題でした.今回からは逆に,他の環との関係のなかで剰余環を位置づけていきます.その準備として,準同型同士の「経由する/される」との関係を導入します.
https://youtu.be/986jt0CwGPM
定義(準同型の経由)準同型$${
群の同型〈龍孫江の群論道具箱〉
群を比較する道具として準同型写像を導入し,また自己準同型(自分自身への準同型)の集合$${\operatorname{End} G}$$に定まる「写像としての合成」という演算は,結合則をみたし単位元を持つことを見ました.今回の目標は,この演算を尊重する形で群ができないか? に解答を与えることです.
https://youtu.be/CDIn4y6Pd2o
定義(群の同型)群準同型$${f \
演算と同値関係〈龍孫江の環論道具箱〉
イデアルによる剰余類を導入し,この剰余類の空間$${A/I}$$に環構造を(できるだけ自然な形で)定めたいと模索しているところでした.そのために,剰余類を定める同値関係と演算の整合性から考えていきましょう.
https://youtu.be/sF-EDrPjyQQ
補題(演算と同値関係)イデアル$${I}$$による同値関係$${\sim}$$は演算と整合する,すなわち$${a_1 \sim
自己準同型〈龍孫江の群論道具箱〉
前回は準同型写像を導入しました.今回はまず次の定理から始めたいと思います.
https://youtu.be/zOadQiDuCAk
定理(準同型の合成)群の準同型$${f \colon G_1 \to G_2}$$,$${g \colon G_2 \to G_3}$$の合成$${g \circ f \colon G_1 \to G_3}$$は準同型である.
整数の剰余類〈龍孫江の環論道具箱〉
前回はイデアルによる剰余類を導入し,準同型の核$${\ker f}$$の剰余類は$${f}$$が定める同値関係による同値類と一致することを確かめました.今回は一般論に進む前に,剰余類の名前の由来となったであろう例について紹介します.
https://youtu.be/qk9pKYMTp8I
定理(整数の剰余類)正整数$${n > 0}$$に対し,$${\mathbb{Z}}$$のイデアル$$
ベクトル空間って何ですか?──公理とその役割
数学科でどんなことが行われているのか,コミカルに,しかしかなり具体的に描かれているマンガとして「数字であそぼ」がある.(最近最新11巻が出ました)
主人公・横辺建己は,高校時代には圧倒的な記憶力とパターン認識で優秀な成績をおさめ吉田大学の数学科に進学したけれど,数学科の最初の講義でデデキント切断にノックアウトされて2年間ひきこもったという,ありそうでもなさそうでもある設定の大学生.
それ
群の準同型写像〈龍孫江の群論道具箱〉
これまでの群論道具箱では,1つの群$${G}$$を固定したときに,$${G}$$の内部のみで$${G}$$の性質を観察する方法を見てきました.今回は,ある群を別の群との比較によって観察するための重要な道具を導入します.
定義(準同型写像)$${G,H}$$を群とする.写像$${f \colon G \to H}$$が
任意の$${a,b \in G}$$に対し$${f (ab) = f(a)
環論道具箱ダイジェスト(01~10回)
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第1回 可換環の定義 可換環の公理を挙げて定義しました.こういう公理的な導入が適切かどうかはちょっと悩みますが,素朴な考え方か
剰余類〈龍孫江の環論道具箱〉
前回は,環準同型$${f \colon A \to B}$$を足場にして,剰余類の全体$${A/\ker f}$$に環構造を定めました.これをより広げていくことが当面の目標です.
補題(イデアルが定める同値関係) $${A}$$を環,$${I}$$をイデアルとする.次で定義される$${A}$$の関係$${\sim}$$は同値関係である.
$$
x \sim y \iff x-y \in I.
部分集合が生成する部分群〈龍孫江の群論道具箱〉
以前「巡回群の最小性」で,群$${G}$$の要素$${a}$$が生成する巡回部分群$${\langle a \rangle}$$を「$${a}$$を含む最小の部分群」と特徴づけ,同じ論法で
部分集合$${S}$$を包む最小の部分群
を「$${S}$$が生成する部分群」と定義し,$${\langle S \rangle}$$と表しました.この定義は理論的には扱いやすい面もあるものの,やはり「それ
誘導される演算〈龍孫江の環論道具箱〉
前回,全単射が誘導する演算と称して,環$${A}$$とある集合$${B}$$の間に全単射$${f : A \to B}$$があれば,その$${f}$$を同型にするように$${B}$$に演算を定めることができる,という話をしました.今回からはこれをヒントに,いろいろな集合に環構造を定めていきましょう.
https://youtu.be/5XDPJvXFPY0
事実(写像が定める同値関係)写像$
非自明な部分群がない〈龍孫江の群論道具箱〉
群の性質や形を観察する場合に,どんな部分群があるか? は重要な手掛かりになります.今回は,そんな例を紹介します.
定理(非自明な部分群を持たない群)群$${G \ne \{1\}}$$が非自明な部分群を持たないならば,$${G}$$は巡回群で,その位数は素数である.
新たな仲間に進める何冊か(2024年の春に)
以前「新たな仲間に進める3冊」として,これから数学科に進学する人,数学を学び始める人におすすめの本を3冊紹介しました.
この記事を書いてもう3年経っていますし,ぼく自身もこんな活動を続ける中で(あまり専門に近くない)数学の本に目を通す機会も増えました.この3冊がお勧めなのは変わらないとしても,今お勧めするならこんな本を,ということで何冊か追加したいと思います.
たぶん数学科で学び始めれば
全単射が誘導する演算〈龍孫江の環論道具箱〉
前回まではイデアルや部分環など,環の特徴的な部分集合についてお話ししてきました.今回は少し目線を変えてみたいと思います.
例(整数に定まる奇妙な演算)整数の全体$${Z}$$に,加法$${\oplus}$$および乗法$${\otimes}$$を
$$
a\oplus b := a+b+1,~~~a \otimes b := ab + a + b
$$
で定めると,これらの演算によって$${
巡回群の生成元の数〈龍孫江の群論道具箱〉
群の中でもシンプルなものとして巡回群を導入しました.群論の課題のひとつに,与えられた群を巡回群の積み重ねに分解できるか?があります.そもそもは E.Galois が「方程式がいつ代数的に解けるか」を明らかにする中でこの課題が浮かび上がったわけですが,シンプルなものの組合せでどれだけ複雑なものが作れるか?というのは素朴ながら興味深い問題と言えます.
https://youtu.be/1_DOpN