マガジンのカバー画像

美術せんにんの記録

41
運営しているクリエイター

#美術展

喧騒を離れ”パリ”へ~Bunkamuraザ・ミュージアム「写真家ドアノー/音楽/パリ」

喧騒を離れ”パリ”へ~Bunkamuraザ・ミュージアム「写真家ドアノー/音楽/パリ」

ロベール・ドアノーの写真展に行ってきた。
ドアノーと言えばやはりパリ。第二次大戦時のナチス占領下ら解放された歓喜に湧く時代から現代に至るまで、市井の人々の様々な表情を撮り続けてきた。

会場は1940年代のパリの空気ひとたび足を踏み入れると往年のパリに来たかのよう。
戦前戦後芸術家たちに変らず愛されたパリであったが、戦火を潜り抜けた花の都は、「狂乱のパリ」のようなはじけるようなエネルギーは影を潜め

もっとみる
筆さばき、まさに融通無碍~東京ステーションギャラリー「河鍋暁斎の底力」

筆さばき、まさに融通無碍~東京ステーションギャラリー「河鍋暁斎の底力」

もはや異端の絵師とは言い難いほど、近年展覧会の機会が増えた河鍋暁斎。
今回はなんとその下絵のみの展覧会という。
「え、完成品じゃないの?」
そんな声も聞こえてきそうだが。。
東京ステーションギャラリーで開催の「河鍋暁斎の底力」

幕末から明治にかけての絵師であるが、そのバックボーンは日本画にある暁斎。しかしこれらの下絵を見てまず感嘆したのは、そのデッサン力の高さである。洋画の教育がまだ確立していな

もっとみる
これは令和の絵師だ~「中村佑介展」

これは令和の絵師だ~「中村佑介展」

画家とイラストレーターとの違いはなんだろう。
と言っても、日ごろからこのような問いを抱いているわけではないのだが、今回その境目がなんとなくわかったような気がした。
東京ドームシティのギャラリーアーモで開催中の「中村佑介展」に行ってきた。

名前は知らずとも誰もが目にしたことのある絵というものがある。
わたせせいぞうや生頼範義などはもうクラシックになりつつあるが、この中村佑介も間違いなくその一人に加

もっとみる
展覧会レビュ「改組 新 第7回日展」

展覧会レビュ「改組 新 第7回日展」

展覧会はほとんどプロ作家のものしか行かないのだが、唯一公募展で毎年足を運んでいるのが、日展である。
こう言っては不遜かもしれないが、案外掘り出し物があったりするのだ。

通常の展覧会は、全部で多くても80作品程度が適度な感覚を空けて架けられている。作品の大きさもまちまちだ。
公募展となると、まさに壁一面絵で埋め尽くされる。そしてそれが向こうの壁まで、そして隣の部屋まで連綿と続いていく。一つ一つの作

もっとみる
虚飾を生きる力に変えて~目黒区美術館「LIFE展」

虚飾を生きる力に変えて~目黒区美術館「LIFE展」

公立美術館は、このような状況下で限りある所蔵品を使ってどのような展覧会を企画していくか。それが腕の見せ所だと思うが、今回行ってきた美術館はド真ん中を投げ込んできたという企画展だった。
目黒区美術館「LIFE コロナ禍を生きる私たちの命と暮らし」展だ。

当美術館のHPによると、この展覧会の趣旨は次のようなもの。

英語の「LIFE」という言葉には、「命」と「暮らし」という意味があります。コロナ禍に

もっとみる
ある意味で美人画?~山種美術館「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」

ある意味で美人画?~山種美術館「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」

秋晴れに恵まれたこの週末、一匹の猫に会いに山種美術館へ足を運んだ。

「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」展である。
(掲載しているチラシは、コロナ前に配られていたものなので会期が異なっている)
目玉はやはり、この「班猫」。山種美術館の看板ネコとも言えるほどの名品となっている。

背を見せつつ、首を曲げてこちらを見上げる目は、媚びているようにも見える。その見上げるような肢体が、しなを作ってなん

もっとみる
【図録レビュ】2008.3.6国立西洋美術館「ウルビーノのヴィーナス」

【図録レビュ】2008.3.6国立西洋美術館「ウルビーノのヴィーナス」

今から思うとこんな名画が来ていたのか、と驚くことがある。この展覧会もその一つである。
ひそかに”一点モノ”展覧会と呼んでいる種類の展覧会ではあったが、図録を見返すとなかなか見ごたえのあるものだったと唸ってしまう。
2008.3.6に訪れた国立西洋美術館「ウルビーノのヴィーナス」展だ。

目玉となる有名作があり、あとはその取り巻きで固めるような展覧会を私は”一点モノ”と呼んでいる。この展覧会も形だけ

もっとみる
【図録レビュ】2007.4.21東京藝術大学大学美術館「パリへー洋画家たちの100年の夢」

【図録レビュ】2007.4.21東京藝術大学大学美術館「パリへー洋画家たちの100年の夢」

日本人が描いた絵は日本画、西洋人が描いた絵は西洋画。
では、日本人が西洋画を模して描いた絵はどちらだろう。
中学高校では、油絵と称される絵。かつては洋画と呼ばれていた。
明治維新より、多くの志ある者たちがパリを目指した。
そんな者たちの遺した精華を紹介する展覧会が、
今回の「パリへ -洋画家たちの100年の夢」である。

文明開化の当時、パリもまさに印象派が花咲こうとしていた。
日本の若き画家たち

もっとみる