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虚飾を生きる力に変えて~目黒区美術館「LIFE展」

公立美術館は、このような状況下で限りある所蔵品を使ってどのような展覧会を企画していくか。それが腕の見せ所だと思うが、今回行ってきた美術館はド真ん中を投げ込んできたという企画展だった。
目黒区美術館「LIFE コロナ禍を生きる私たちの命と暮らし」展だ。

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当美術館のHPによると、この展覧会の趣旨は次のようなもの。

英語の「LIFE」という言葉には、「命」と「暮らし」という意味があります。コロナ禍にある現在の私たちは、これまで以上に、自分たちの「命」と「暮らし」について、真剣に向き合い、思いを巡らせているのではないでしょうか。本展では、下記の4つのテーマの下に、当館の所蔵作品をとおし、コロナ禍を生きる私たちのLIFE、命と暮らしについて考えます。

第1章「恐怖と不安、そして悲しみ」
第2章「愛しき日々」
第3章「それでも私たちは今を生きる」
第4章「再び抱き合える日に」

たまたま目黒区美術館の所蔵作品がそうだったからかわからないが、この展覧会で感じたのは、「生きるとは苦しみの中をもがきながら渡っていくこと」ということだ。

「コロナ禍でそれまで当たり前のように営んでいたことができなくなった」という言説をよく耳にする。
しかしこれはコロナ禍で苦しくなったということとは違うのではないだろうか。むしろ今までが目くらましに遭っていたということではないか。
苦しい人生、それでも生きていかねばならないから、気を紛らわすもので飾り立てる。まさに虚飾で固められた人生。今までが嘘っぱちだった、今の生活こそが実相だとは言えないだろうか。

そうまでして、なぜ生きていかねばならないのか。
その問いを突き付けられて答えられない人が多くなっているからこそ、自ら命を絶つ人が増えているのだろう。

この虚飾だって悪いことではないはず。それで生きる力に変えられるのであれば。ただ今回のようなことで崩れ去ってしまっては困るのだ。

人間とは、何と寄る辺なき存在であろうか。
そう思って、来た時より物思いに沈んでしまったのであった。

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