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美術と映画と読書。ときどき懐メロも交えながら、ちょっとイイ話、ちょっとタメになる話をお届けします。

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    映画を観て感じたことを綴った記事をまとめました

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    本を読んで感じたこと、思い浮かんだことについて書いていきます。 ネタバレはあるかもしれないですが、あらすじは書かないつもりです。

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最近の記事

現代につながるアメリカのお国柄~「群衆」

ゲーリー・クーパー祭りも佳境に差し掛かってきた。 名監督にも愛されたクープ。その一人がフランク・キャプラである。 「オペラハット」も好きだけど、今回はこちら。1941年公開「群衆」 汝、隣人を愛せよ。 ちょっとしたフィクションの風刺記事から生まれた架空の人物「ジョン・ドゥ」。彼のこの呼びかけが全米を席巻する。たちまち各地にジョン・ドゥ・クラブが立ち上がっていき、一大勢力に。 それを政治利用しようとする新聞社社長と対立していくが・・・ というお話。 こういう民間のクラブとい

    • ではノイズだらけのスマホを見てしまう理由は?~「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」

      今回は久しぶりに本の話。 話題になっている新書(と言いつつ、自分の職場の同僚は知らなかったけど)、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」 自分も以前に比べて本を読む量が減ってきた自覚があったのだが、それは映画鑑賞という趣味が加わったことと、加齢による集中力の低下によるものと思っていた。 でも、この著者のようにお若い方でも同じように読書量が減っているという。 著者は、読書による情報のインプットを「ノイズ」として、簡単に答えを求める・求めることを強いられる現代社会では敬遠さ

      • がんばって最後まで観てみて!~「ボー・ジェスト」

        ゲーリー・クーパー祭りを実施中なのだが、初期作品はけっこうツラくて途中で気分転換を図ったりしていたのだが。 この作品から再開してみると、案外面白かったので一安心。 という、1939年公開「ボー・ジェスト」である。 「ボー・ジェスト」というのはフランス語で”美しい行い”とのこと。 しかし、本作では主人公の名前でもある。ボー含めたジェスト三兄弟である。 大半は戦場での場面に終始するのだが、そこではイヤな上官にどう反抗するかという件だったりするのだけれども、「青い水」という巨大

        • 思っていたより本格的、だけど・・・「つばさ」

          アカデミー賞の第一作って、いまやどれだけの人が観たことがあるだろうか。 映画が好きになってくると、過去の名作をさかのぼって観たくなるのだけれども、その行き着く先はこの作品になる。 1927年公開、記念すべきアカデミー賞作品賞の第一作目、「つばさ」。 なんとサイレントである。 サイレントとはいえ、馬鹿にしたものではない。かのチャップリンの名作の多くもサイレントである。 本作、1927年ということでいわゆる戦間期に作られた映画。もうあんな戦争は嫌だというムードである。好景気に

        現代につながるアメリカのお国柄~「群衆」

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          これは映画史に残る傑作~「情婦」

          マレーネ・”ディ”ートリッヒ、ですね。デートリッヒではなくて。 さて、彼女の出演している作品の中で最高傑作と言えばこちらだと思っている。1957年公開「情婦」。原題は「検察側の証人」 後年「お熱いのがお好き」や「アパートの鍵貸します」を監督するビリー・ワイルダーの監督作品。どうもコメディ作品の監督と思いがちなのだが、彼のキャリアの前半、というか大部分はこうしたシリアス系が占めていた。 作品の中で、ディートリッヒはプロット上でも重要な役回りを演じている。ネタバレになるのであ

          これは映画史に残る傑作~「情婦」

          アメリカの良心も最後は手が出ちゃう~「砂塵」

          いまはちょっとした個人的マレーネ・デートリッヒ祭りでして。 彼女の代表作って何だろう。 今回は1939年公開の「砂塵」である。 砂塵、砂嵐は本作には出てこない。どうも砂嵐のようななんとか、、という意味合いのようなのだが、ちょっとよく分からなかった。 相方はジェームズ・スチュワート。同年「スミス都へ行く」にも主演しており、スターの仲間入りした頃。 暴力まっさかりの中、彼はあくまで非暴力を貫こうとする。この辺はジミーの個人的な持ち味とも言えようか。共通したキャラのように思える

          アメリカの良心も最後は手が出ちゃう~「砂塵」

          みんな大好きシャイニング~「ROOM237」

          映画や小説など、世に出した時からそれは監督・作者のものではなく視聴者・読者のものとなるー そんな言説も聞かれるけれど、それを映画にしてしまってもいいのか。。。 という作品が今回の「ROON237」である。 今でこそ、映像作品の深読み・謎解きは当たり前で、むしろそれを初めから期待するような作りもざらになっているが、キューブリック監督作品はどれもその走りだったのではないだろうか。なかでも「2001年宇宙の旅」に並ぶ人気作が「シャイニング」である。 シャイニングというと、原作者

          みんな大好きシャイニング~「ROOM237」

          言うほどにはお洒落過ぎなかった~「オーシャンズ」シリーズ

          「ヘイル、シーザー!」のジョージ・クルーニーつながりで、この大ヒットシリーズをまだ観ていないことを思い出した。ということで今回は3本立てで。「オーシャンズ11」「オーシャンズ12」「オーシャンズ13」 クルーニーのオーシャンズの前に、オリジナルから。 フランク・シナトラの「オーシャンと十一人の仲間」である。1960年公開。 観ていけばわかるが、オーシャンズシリーズと共通しているのは、オーシャンと11人仲間がいるという設定だけ。ストーリーはほぼ無関係である。 かつ、少々キャラ

          言うほどにはお洒落過ぎなかった~「オーシャンズ」シリーズ

          クールなのか野暮なのか~「ヘイル、シーザー!」

          とりあえず、U-NEXTで配信されているコーエン兄弟監督作品の最新作はこちら。2016年公開「ヘイル、シーザー!」 バイオレンスもないからか、ストレスなく視聴できる。 が、とっかかりもないということなのかもしれない。 いろいろと風刺しているのかもしれないけど、ややドタバタの方に偏っている印象。言ってみれば少し野暮というか洗練されていないんだよね。「こういう外し方ってクールでしょ?」と言っている感じがして、なおさら。 主演のジョシュ・ブローリン、「ノーカントリー」では終盤

          クールなのか野暮なのか~「ヘイル、シーザー!」

          マジメに生きていても災難ばかり~「シリアスマン」

          今週もまだコーエン兄弟作品を視聴中。 今日は2009年公開「シリアスマン」 主人公が大小さまざまな災難に見舞われていくというお話。 不条理系とも見えるが、その災難のどれもがあってもおかしくないようなものばかり。ただそれが一度に降りかかってくるというもの。 この主人公の責任ではないものも多いのだが、なんとなくそのキャラクターから同情心が起きてこないのも我ながらおかしい。それはコーエン作品特有の”共感を呼ばないキャラクター”ということか。 それでユダヤ教信者の彼は、その助け

          マジメに生きていても災難ばかり~「シリアスマン」

          ちゃっかり妻と必死な夫~「オー・ブラザー!」

          ただいま、コーエン兄弟・集中視聴期間。 と言いつつ、あまりコーエン兄弟らしくないかもしれない作品を紹介してしまう。2000年公開「オー・ブラザー!」 コーエン兄弟というと(ここまで観た作品は)ヘンな登場人物と独特の間と不思議なテンポなどが特徴なのだが、本作は登場人物はヘンではあるが全体的に見やすい仕上がりになっている。 原案はオデュッセイア。そう聞くと本家「ユリシーズ」が思い出される。 本家と違うのは、妻が夫の帰りを待っていないというところ。 また物語の序盤からちょいち

          ちゃっかり妻と必死な夫~「オー・ブラザー!」

          ポルノ映画と侮ること勿れ~「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」

          タランティーノのお気に入りの作品とのことで、こちらを鑑賞。 1973年公開「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」 たまーにこうゆう映画も見たくなってしまう(笑) 見た後ほぼ100%後悔すると分かっているのに、見る前の期待感に引きずられて見てしまう。そして、案の定ガッカリするところまで、もうお決まりですな。 そうは言っても、なかなか見るべきところもあり。 主演の池玲子、当時20歳とは思えぬ貫禄。目力が良い。エロだけでなくちゃんと演技もしてるし、殺陣もそれなりにこなす。今日日の20歳のセ

          ポルノ映画と侮ること勿れ~「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」

          これぞタランティーノ~「デス・プルーフ in グラインドハウス」

          タランティーノ祭りも終盤に入り、あまり知名度の高くない作品を鑑賞。 2007年公開の「デス・プルーフ in グラインドハウス」 アクションものが好きなタランティーノ。そのアクションになくてはならないのがスタントマンの存在。そのスタントマンにまでスポットをあてるのが本作。 とはいえ、スタントマンの大変さを顕彰しようというマジメなものではなく、ただただおかしな人間とおかしな言動のシーケンスで埋められている。 大きく前後半に分かれていて、それなりのオチもあるのだけれども、上映時

          これぞタランティーノ~「デス・プルーフ in グラインドハウス」

          新たな映画の可能性を示した?~「ジャッキー・ブラウン」

          今はタランティーノ強化月間。 1作目から鑑賞中なのだが、あまり語られることのない3作目が地味に良い。 1997年公開「ジャッキー・ブラウン」 タランティーノというと、どうしても「レザボア・ドッグス」や「パルプフィクション」のようなバイオレンスや時間軸入れ替えや無意味なトークが売りと思われがち。これらの作品に比べると、本作はだいぶ派手さが控えめ。その分落ち着いて観られる作品である。 内容は2時間ドラマ的でもある。でも細かいこだわりや個性的な俳優陣のおかげでとてもクールに見え

          新たな映画の可能性を示した?~「ジャッキー・ブラウン」

          両女優だけでなくリチャード・ギアもね~「シカゴ」

          ミュージカルが苦手、という人は一定数いるようだ。それは普通の場面でいきなり登場人物が歌い踊り出すところに違和感がぬぐえない、という理由が大きいとのこと。たとえば「ウェストサイド物語」なんかはその類だと思う。 そういう意味では、本筋と歌やダンスの場面が何かしらの区切りがつけられているのであればまだ見やすいのだと思う。そんなミュージカル映画、2002年公開「シカゴ」 この作品での歌やダンスは、ロキシーの脳内の場面?心情や場面をミュージカルで表すことで観ているものに分かりやすくス

          両女優だけでなくリチャード・ギアもね~「シカゴ」

          グランプリ女優を堪能~「雨月物語」

          動画配信されてなくてなかなか観る機会がなく、やっと視聴できた作品。 1953年公開「雨月物語」 同時代の黒澤とも小津とも趣きを異にする溝口健二の作品。 ストーリーは、日本人ならさほど真新しさはないもの。きっと世界各地の民話にも同種のものはあったことだろう。そういった口承文学を映像化したのが新しかったのだろうか。 夢とも現ともわからない展開が珍しかったのかもしれないけど、本作の白眉はなんといっても京マチ子の妖艶な演技であろう。この人は当時の女優としては大柄でどちらかというと

          グランプリ女優を堪能~「雨月物語」