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美術と映画と読書。ときどき懐メロも交えながら、ちょっとイイ話、ちょっとタメになる話をお届けします。

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    映画を観て感じたことを綴った記事をまとめました

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    本を読んで感じたこと、思い浮かんだことについて書いていきます。 ネタバレはあるかもしれないですが、あらすじは書かないつもりです。

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最近の記事

みんな大好きタイムリープもの~「サマータイムマシン・ブルース」

8月が終わってもまだまだ暑い9月。ここで夏らしい作品を。 2005年公開「サマータイムマシン・ブルース」 なんとなく公開された時の記憶がうっすらと。と思っていたら、こっちと混同していた(笑) 「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」 こっちはまだ観ていないので今回は「サマータイムマシン・ブルース」の方で。 内容はけっこう本格的な和製BTTFである。邦画と思ってあまり期待せずに観たら、いやいや面白い。 身近なせせこましいトピックをタイムスリップと絡め、かつ破綻のない展

    • 喜劇でもある~「サンセット大通り」

      7年前に観た時にはいまいち良さが分からなかったのだけど、世間の評判もいいし、再度チャレンジしてみた。(というような作品て、まあまあある) 1950年公開「サンセット大通り」 うーん、すごい顔芸。サイレント映画時代の俳優は身振りだけでなく巧みな表情でも演技したということか。 改めて観ると、脚本の緻密さ・堅牢なストーリーに目を瞠る。無駄がない。ホラーであり悲劇であり、それでいて喜劇でもある。だって最後の見得を切るところはやりすぎでしょう。 主役の二人、男女が逆だったら完全にコ

      • 気の多いオードリー~「麗しのサブリナ」

        日本で一番人気のあるハリウッド女優といっても過言ではないのが、オードリー・ヘプバーン。 オードリーと言えば「ローマの休日」だが、その次の作品も捨てがたい。 1954年公開「麗しのサブリナ」 この作品のオードリー=サブリナは、なかなか気の多い少女である。 雇われている家の御曹司の次男にぞっこんだったのが、意外と軽いあっさりと長男に惚れてしまうという。これだけ読めばなんと尻の軽い女だと思ってしまうが、オードリーが演じると可憐で品よく映ってしまう。 とはいえ、ですよ。 その惚れ

        • 暴力装置という秩序~「シティ・オブ・ゴッド」

          秩序がない時代、人間はどのような社会を作っていたのだろうか。 万人の万人に対する闘争か、自由と平等の社会か。 そんな永遠の論題に対する一つの答えを示してくれている映画がこちら。2002年公開「シティ・オブ・ゴッド」 暴力とあらゆる悪行が町中に溢れている。そんな「神の街」を描いているのだが、不思議と不快な気持ちにならないのはどういうことだろう。 それは欲望というより、もう一段深い、原初的な衝動による営みだからなのだろうか。 街を統率することに憧れるリトル・ゼという少年。悪行

        みんな大好きタイムリープもの~「サマータイムマシン・ブルース」

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          蓮っ葉なグレース~「泥棒成金」

          グレース・ケリーというと今でも根強い人気を集める往年のハリウッド女優。 彼女のキャリア晩年の作品がこちら。1955年公開「泥棒成金」 そもそも成金というのは、 ということなのだから、泥棒が成金なのは当たり前であり。。どうしてこの邦題が通ってしまったのだろう。 ケーリー(・グラント)は、この時すでに50歳を超えている。やはり絵的にもグレースとはバランスに欠けるのは否めない。 のだが、劇中でグレースはほぼケーリーに一目ぼれしてしまうのである。いやー、そんなことはないだろうっ

          蓮っ葉なグレース~「泥棒成金」

          名曲ありきはズルい~「ボヘミアン・ラプソディ」

          この映画、流行ったなあ。映画館には見に行かなかったけど、周りはみんなこの話で持ちきりだった覚えがある。2018年公開「ボヘミアン・ラプソディ」 あらすじとしては、成功→確執→挫折→復活、みたいなスタンダードな展開。正直その描き方はありきたりで、それほど面白くもない。 でもそんな凡庸な描写も終盤のライブエイドの場面ですべて帳消しにしてくれる。それほどあの場面で受けるカタルシスは素晴らしいものがあった。 思えば映画の中で名曲・名パフォーマンスの場面がある作品って強いと思う。

          名曲ありきはズルい~「ボヘミアン・ラプソディ」

          ホテルマンは大変だ~「フォー・ルームス」「底抜けてんやわんや」「THE 有頂天ホテル」「グランド・ホテル」

          今回はホテルを題材にした映画をご紹介。 まず1995年公開「フォールームス」 4つの部屋で繰り広げられる物語を4人の監督がそれぞれ作って、持ち寄ったもの。 世間ではどの部屋の話が好きかという話で持ち切りで。 やはり締めを飾るタランティーノの話は、キレがよい。 狂言回し役のティム・ロスのオーバーリアクションも、このホテルではちょうど合っている。 この作品の中でも言及されていて、きっとタランティーノも参考にしたであろう作品が、1960年公開「底抜けてんやわんや」 何という邦題

          ホテルマンは大変だ~「フォー・ルームス」「底抜けてんやわんや」「THE 有頂天ホテル」「グランド・ホテル」

          こういうリタもいいよ~「踊らん哉」「晴れて今宵は」

          フレッド・アステアといえば、ジンジャー・ロジャースとのコンビが有名だろう。 全部で10作品ある中の7作目、1937年公開の「踊らん哉」。原題は”Shall We Dance”である。 7作目となると息はぴったり。 でも、どこかやっつけ感も否めない。事実本作は興行的にもいまいちだったようで、アステアは次作ではジョーン・フォンテインとコンビを組むことになる。 お互いに飽きてきていたということか。 そこで変わり種ということで、こんなダンスにも挑戦している。 ローラースケートで

          こういうリタもいいよ~「踊らん哉」「晴れて今宵は」

          現代につながるアメリカのお国柄~「群衆」

          ゲーリー・クーパー祭りも佳境に差し掛かってきた。 名監督にも愛されたクープ。その一人がフランク・キャプラである。 「オペラハット」も好きだけど、今回はこちら。1941年公開「群衆」 汝、隣人を愛せよ。 ちょっとしたフィクションの風刺記事から生まれた架空の人物「ジョン・ドゥ」。彼のこの呼びかけが全米を席巻する。たちまち各地にジョン・ドゥ・クラブが立ち上がっていき、一大勢力に。 それを政治利用しようとする新聞社社長と対立していくが・・・ というお話。 こういう民間のクラブとい

          現代につながるアメリカのお国柄~「群衆」

          ではノイズだらけのスマホを見てしまう理由は?~「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」

          今回は久しぶりに本の話。 話題になっている新書(と言いつつ、自分の職場の同僚は知らなかったけど)、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」 自分も以前に比べて本を読む量が減ってきた自覚があったのだが、それは映画鑑賞という趣味が加わったことと、加齢による集中力の低下によるものと思っていた。 でも、この著者のようにお若い方でも同じように読書量が減っているという。 著者は、読書による情報のインプットを「ノイズ」として、簡単に答えを求める・求めることを強いられる現代社会では敬遠さ

          ではノイズだらけのスマホを見てしまう理由は?~「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」

          がんばって最後まで観てみて!~「ボー・ジェスト」

          ゲーリー・クーパー祭りを実施中なのだが、初期作品はけっこうツラくて途中で気分転換を図ったりしていたのだが。 この作品から再開してみると、案外面白かったので一安心。 という、1939年公開「ボー・ジェスト」である。 「ボー・ジェスト」というのはフランス語で”美しい行い”とのこと。 しかし、本作では主人公の名前でもある。ボー含めたジェスト三兄弟である。 大半は戦場での場面に終始するのだが、そこではイヤな上官にどう反抗するかという件だったりするのだけれども、「青い水」という巨大

          がんばって最後まで観てみて!~「ボー・ジェスト」

          思っていたより本格的、だけど・・・「つばさ」

          アカデミー賞の第一作って、いまやどれだけの人が観たことがあるだろうか。 映画が好きになってくると、過去の名作をさかのぼって観たくなるのだけれども、その行き着く先はこの作品になる。 1927年公開、記念すべきアカデミー賞作品賞の第一作目、「つばさ」。 なんとサイレントである。 サイレントとはいえ、馬鹿にしたものではない。かのチャップリンの名作の多くもサイレントである。 本作、1927年ということでいわゆる戦間期に作られた映画。もうあんな戦争は嫌だというムードである。好景気に

          思っていたより本格的、だけど・・・「つばさ」

          これは映画史に残る傑作~「情婦」

          マレーネ・”ディ”ートリッヒ、ですね。デートリッヒではなくて。 さて、彼女の出演している作品の中で最高傑作と言えばこちらだと思っている。1957年公開「情婦」。原題は「検察側の証人」 後年「お熱いのがお好き」や「アパートの鍵貸します」を監督するビリー・ワイルダーの監督作品。どうもコメディ作品の監督と思いがちなのだが、彼のキャリアの前半、というか大部分はこうしたシリアス系が占めていた。 作品の中で、ディートリッヒはプロット上でも重要な役回りを演じている。ネタバレになるのであ

          これは映画史に残る傑作~「情婦」

          アメリカの良心も最後は手が出ちゃう~「砂塵」

          いまはちょっとした個人的マレーネ・デートリッヒ祭りでして。 彼女の代表作って何だろう。 今回は1939年公開の「砂塵」である。 砂塵、砂嵐は本作には出てこない。どうも砂嵐のようななんとか、、という意味合いのようなのだが、ちょっとよく分からなかった。 相方はジェームズ・スチュワート。同年「スミス都へ行く」にも主演しており、スターの仲間入りした頃。 暴力まっさかりの中、彼はあくまで非暴力を貫こうとする。この辺はジミーの個人的な持ち味とも言えようか。共通したキャラのように思える

          アメリカの良心も最後は手が出ちゃう~「砂塵」

          みんな大好きシャイニング~「ROOM237」

          映画や小説など、世に出した時からそれは監督・作者のものではなく視聴者・読者のものとなるー そんな言説も聞かれるけれど、それを映画にしてしまってもいいのか。。。 という作品が今回の「ROON237」である。 今でこそ、映像作品の深読み・謎解きは当たり前で、むしろそれを初めから期待するような作りもざらになっているが、キューブリック監督作品はどれもその走りだったのではないだろうか。なかでも「2001年宇宙の旅」に並ぶ人気作が「シャイニング」である。 シャイニングというと、原作者

          みんな大好きシャイニング~「ROOM237」

          言うほどにはお洒落過ぎなかった~「オーシャンズ」シリーズ

          「ヘイル、シーザー!」のジョージ・クルーニーつながりで、この大ヒットシリーズをまだ観ていないことを思い出した。ということで今回は3本立てで。「オーシャンズ11」「オーシャンズ12」「オーシャンズ13」 クルーニーのオーシャンズの前に、オリジナルから。 フランク・シナトラの「オーシャンと十一人の仲間」である。1960年公開。 観ていけばわかるが、オーシャンズシリーズと共通しているのは、オーシャンと11人仲間がいるという設定だけ。ストーリーはほぼ無関係である。 かつ、少々キャラ

          言うほどにはお洒落過ぎなかった~「オーシャンズ」シリーズ