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読書せんにんの記録

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本を読んで感じたこと、思い浮かんだことについて書いていきます。 ネタバレはあるかもしれないですが、あらすじは書かないつもりです。
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記事一覧

すべての人間がこうなのだ、と言っているような~「どん底」

黒澤映画に通底するのはヒューマニズムだと言われる。 でもそれは決して甘いものではなく、残…

せんにん
3か月前
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文字通り”時代をかけめぐる作品”~「時をかける少女」

さて、”角川娘”として薬師丸ひろ子と並び立つのが原田知世。 そのデビュー作にして、日本芸…

せんにん
1年前
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何度でも味わえる総合小説~「罪と罰」

2023年になり今年の目標は何にしようかと考えていたころ、ふと何かの映画を観たときに、「罪と…

せんにん
1年前
4

誰のことでもあり誰のことでもないeveryman~「江分利満氏の優雅な生活」

トリスをのんでHawaiiに行こう! というコピーをご存じだろうか。 いまや、ハワイへの旅行など…

せんにん
2年前
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罪を憎んで人を憎まず~「飢餓海峡」

50年というと長いようにも思うが、人ひとりの人生の長さを考えると身近にも思えてくる期間では…

せんにん
2年前
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自己愛を恋愛に置き換えた時代~「ユーミンの罪」

ユーミンのアルバムをよく聴く。 彼女の作品はシングルではなくアルバムで聴く方が、とても堪…

せんにん
2年前
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元祖”与える男”~「カーネギー自伝」

昔はいわゆる偉人伝のようなものを少年少女はよく読んだものだが、いまはどうなのだろう。 ということで、オトナの読む偉人伝として、今回は最近新版が出たばかりの「カーネギー自伝」を読んでみた。 自伝だから、自分の都合の良いことしか書いていないのは当然なのだが、貧しい移民から一代で巨万の富を得て後年は慈善活動に身を捧げた大富豪の言葉に触れるというのは、何かしらの意義があるといえよう。 カーネギーは少年時代、町工場で働いていたところ、親類の知人から電報配達夫にならないかと誘われた。

現代美術は”美術”か?~「西洋美術の歴史8」

「西洋美術の歴史」シリーズも最終巻、20世紀まできた。 20世紀美術で自分自身一番わからない…

せんにん
2年前
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時間の矢のヒント~「宇宙を解く唯一の科学 熱力学」

以前読んだ、時間に関する書籍の中に、時間の不可逆性について触れてあった箇所があった。 な…

せんにん
2年前
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マネの真似をして印象派は生まれた~「西洋美術の歴史7」

印象派というと、モネやルノワールの名前がまずあがる。 少し詳しければ、その先駆にマネがい…

せんにん
2年前
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生物死すとも生命は死なず~「生物はなぜ死ぬのか」

日本の夏は死を喚起する。 それは、盆の時期でもあり、終戦の時期でもあり、御巣鷹山でもあり…

せんにん
2年前
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ドイツ美術はなぜみにくいか~「西洋美術の歴史5」

改めて西洋美術史を俯瞰しなおすために、「西洋美術の歴史」シリーズを読んでいるのだが、その…

せんにん
2年前
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嫌いなヤツは地獄行き!?~「やさしいダンテ〈神曲〉」

誰しも少し背伸びをしてみたい時がある。 あまりよく分からないけど、ちょっと齧ってみたい書…

せんにん
2年前
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行く末は希望か絶望か~「人新世の「資本論」」

新型コロナウイルスの騒動が始まって、早一年が過ぎた。 この一年で社会は大きく変わってしまったが、これは終わりの始まりなのだろうか。そんなことを思わせる書籍が、いまベストセラーとなっている。 気鋭の若手社会学者・斎藤幸平著「人新世の「資本論」」である。 資本論というと、いわゆるマルクス主義や共産主義だとか、ロシア革命といったキーワードが思い浮かび、いずれも今となっては廃れてしまったものという印象が一般的ではなかろうか。 本書ではまず、現在の世界が直面している問題が資本主義に