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映画せんにんの記録

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映画を観て感じたことを綴った記事をまとめました
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蓮っ葉なグレース~「泥棒成金」

蓮っ葉なグレース~「泥棒成金」

グレース・ケリーというと今でも根強い人気を集める往年のハリウッド女優。
彼女のキャリア晩年の作品がこちら。1955年公開「泥棒成金」

そもそも成金というのは、

ということなのだから、泥棒が成金なのは当たり前であり。。どうしてこの邦題が通ってしまったのだろう。

ケーリー(・グラント)は、この時すでに50歳を超えている。やはり絵的にもグレースとはバランスに欠けるのは否めない。
のだが、劇中でグレ

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名曲ありきはズルい~「ボヘミアン・ラプソディ」

名曲ありきはズルい~「ボヘミアン・ラプソディ」

この映画、流行ったなあ。映画館には見に行かなかったけど、周りはみんなこの話で持ちきりだった覚えがある。2018年公開「ボヘミアン・ラプソディ」

あらすじとしては、成功→確執→挫折→復活、みたいなスタンダードな展開。正直その描き方はありきたりで、それほど面白くもない。

でもそんな凡庸な描写も終盤のライブエイドの場面ですべて帳消しにしてくれる。それほどあの場面で受けるカタルシスは素晴らしいものがあ

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ホテルマンは大変だ~「フォー・ルームス」「底抜けてんやわんや」「THE 有頂天ホテル」「グランド・ホテル」

ホテルマンは大変だ~「フォー・ルームス」「底抜けてんやわんや」「THE 有頂天ホテル」「グランド・ホテル」

今回はホテルを題材にした映画をご紹介。
まず1995年公開「フォールームス」
4つの部屋で繰り広げられる物語を4人の監督がそれぞれ作って、持ち寄ったもの。

世間ではどの部屋の話が好きかという話で持ち切りで。
やはり締めを飾るタランティーノの話は、キレがよい。
狂言回し役のティム・ロスのオーバーリアクションも、このホテルではちょうど合っている。

この作品の中でも言及されていて、きっとタランティー

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こういうリタもいいよ~「踊らん哉」「晴れて今宵は」

こういうリタもいいよ~「踊らん哉」「晴れて今宵は」

フレッド・アステアといえば、ジンジャー・ロジャースとのコンビが有名だろう。
全部で10作品ある中の7作目、1937年公開の「踊らん哉」。原題は”Shall We Dance”である。

7作目となると息はぴったり。
でも、どこかやっつけ感も否めない。事実本作は興行的にもいまいちだったようで、アステアは次作ではジョーン・フォンテインとコンビを組むことになる。
お互いに飽きてきていたということか。

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現代につながるアメリカのお国柄~「群衆」

現代につながるアメリカのお国柄~「群衆」

ゲーリー・クーパー祭りも佳境に差し掛かってきた。
名監督にも愛されたクープ。その一人がフランク・キャプラである。
「オペラハット」も好きだけど、今回はこちら。1941年公開「群衆」

汝、隣人を愛せよ。
ちょっとしたフィクションの風刺記事から生まれた架空の人物「ジョン・ドゥ」。彼のこの呼びかけが全米を席巻する。たちまち各地にジョン・ドゥ・クラブが立ち上がっていき、一大勢力に。
それを政治利用しよう

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がんばって最後まで観てみて!~「ボー・ジェスト」

がんばって最後まで観てみて!~「ボー・ジェスト」

ゲーリー・クーパー祭りを実施中なのだが、初期作品はけっこうツラくて途中で気分転換を図ったりしていたのだが。
この作品から再開してみると、案外面白かったので一安心。
という、1939年公開「ボー・ジェスト」である。

「ボー・ジェスト」というのはフランス語で”美しい行い”とのこと。
しかし、本作では主人公の名前でもある。ボー含めたジェスト三兄弟である。

大半は戦場での場面に終始するのだが、そこでは

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思っていたより本格的、だけど・・・「つばさ」

思っていたより本格的、だけど・・・「つばさ」

アカデミー賞の第一作って、いまやどれだけの人が観たことがあるだろうか。
映画が好きになってくると、過去の名作をさかのぼって観たくなるのだけれども、その行き着く先はこの作品になる。
1927年公開、記念すべきアカデミー賞作品賞の第一作目、「つばさ」。
なんとサイレントである。

サイレントとはいえ、馬鹿にしたものではない。かのチャップリンの名作の多くもサイレントである。

本作、1927年ということ

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これは映画史に残る傑作~「情婦」

これは映画史に残る傑作~「情婦」

マレーネ・”ディ”ートリッヒ、ですね。デートリッヒではなくて。
さて、彼女の出演している作品の中で最高傑作と言えばこちらだと思っている。1957年公開「情婦」。原題は「検察側の証人」

後年「お熱いのがお好き」や「アパートの鍵貸します」を監督するビリー・ワイルダーの監督作品。どうもコメディ作品の監督と思いがちなのだが、彼のキャリアの前半、というか大部分はこうしたシリアス系が占めていた。

作品の中

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アメリカの良心も最後は手が出ちゃう~「砂塵」

アメリカの良心も最後は手が出ちゃう~「砂塵」

いまはちょっとした個人的マレーネ・デートリッヒ祭りでして。
彼女の代表作って何だろう。
今回は1939年公開の「砂塵」である。

砂塵、砂嵐は本作には出てこない。どうも砂嵐のようななんとか、、という意味合いのようなのだが、ちょっとよく分からなかった。

相方はジェームズ・スチュワート。同年「スミス都へ行く」にも主演しており、スターの仲間入りした頃。
暴力まっさかりの中、彼はあくまで非暴力を貫こうと

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みんな大好きシャイニング~「ROOM237」

みんな大好きシャイニング~「ROOM237」

映画や小説など、世に出した時からそれは監督・作者のものではなく視聴者・読者のものとなるー
そんな言説も聞かれるけれど、それを映画にしてしまってもいいのか。。。
という作品が今回の「ROON237」である。

今でこそ、映像作品の深読み・謎解きは当たり前で、むしろそれを初めから期待するような作りもざらになっているが、キューブリック監督作品はどれもその走りだったのではないだろうか。なかでも「2001年

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言うほどにはお洒落過ぎなかった~「オーシャンズ」シリーズ

言うほどにはお洒落過ぎなかった~「オーシャンズ」シリーズ

「ヘイル、シーザー!」のジョージ・クルーニーつながりで、この大ヒットシリーズをまだ観ていないことを思い出した。ということで今回は3本立てで。「オーシャンズ11」「オーシャンズ12」「オーシャンズ13」

クルーニーのオーシャンズの前に、オリジナルから。
フランク・シナトラの「オーシャンと十一人の仲間」である。1960年公開。
観ていけばわかるが、オーシャンズシリーズと共通しているのは、オーシャンと

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クールなのか野暮なのか~「ヘイル、シーザー!」

クールなのか野暮なのか~「ヘイル、シーザー!」

とりあえず、U-NEXTで配信されているコーエン兄弟監督作品の最新作はこちら。2016年公開「ヘイル、シーザー!」

バイオレンスもないからか、ストレスなく視聴できる。
が、とっかかりもないということなのかもしれない。

いろいろと風刺しているのかもしれないけど、ややドタバタの方に偏っている印象。言ってみれば少し野暮というか洗練されていないんだよね。「こういう外し方ってクールでしょ?」と言っている

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マジメに生きていても災難ばかり~「シリアスマン」

マジメに生きていても災難ばかり~「シリアスマン」

今週もまだコーエン兄弟作品を視聴中。
今日は2009年公開「シリアスマン」

主人公が大小さまざまな災難に見舞われていくというお話。
不条理系とも見えるが、その災難のどれもがあってもおかしくないようなものばかり。ただそれが一度に降りかかってくるというもの。

この主人公の責任ではないものも多いのだが、なんとなくそのキャラクターから同情心が起きてこないのも我ながらおかしい。それはコーエン作品特有の”

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ちゃっかり妻と必死な夫~「オー・ブラザー!」

ちゃっかり妻と必死な夫~「オー・ブラザー!」

ただいま、コーエン兄弟・集中視聴期間。
と言いつつ、あまりコーエン兄弟らしくないかもしれない作品を紹介してしまう。2000年公開「オー・ブラザー!」

コーエン兄弟というと(ここまで観た作品は)ヘンな登場人物と独特の間と不思議なテンポなどが特徴なのだが、本作は登場人物はヘンではあるが全体的に見やすい仕上がりになっている。

原案はオデュッセイア。そう聞くと本家「ユリシーズ」が思い出される。

本家

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