見出し画像

展覧会レビュ「改組 新 第7回日展」

展覧会はほとんどプロ作家のものしか行かないのだが、唯一公募展で毎年足を運んでいるのが、日展である。
こう言っては不遜かもしれないが、案外掘り出し物があったりするのだ。

通常の展覧会は、全部で多くても80作品程度が適度な感覚を空けて架けられている。作品の大きさもまちまちだ。
公募展となると、まさに壁一面絵で埋め尽くされる。そしてそれが向こうの壁まで、そして隣の部屋まで連綿と続いていく。一つ一つの作品も大きい。
数えたことはないが展示数も数百になるのではなかろうか。

ただ、プロの作品だけではなくアマチュアのもある。
きらりと光るものあれば、うーんと首を傾げるようなものもあるのは事実(完全なる主観)。その膨大な作品群の中からお気に入りの作品を見つけるのが楽しみなのである。

ちなみに去年見つけた逸品がこちら。さっそくフェイスブックでフォローしてしまった。

福田季生(きはる)さんの「花めぐる」である。
近年写実的な美人画が流行しているのだが、この方のも勝るとも劣らない素晴らしい作品だと思う。もっと有名になってもおかしくない。今年は出品されていないようで残念だった。

それで、今年の逸品である。
まずは日本画部門から。
ちなみにこの「日本画」「洋画」の分類、どのような意味があるのだろうか。日本画というから水墨画ややまと絵のようなものを想像していても、まったくそんな作品にはお目にかかれない。もうこんな区分止めてしまったらいいのに。

加藤智さん「夕映え」(キャプションを入れることが掲載のルールなのだ)
まず構図がしっかりしているのがよい。そして全体を覆う色調が統一されていて、無駄な筆遣いがない。東山魁夷のような淡いトーンで、誰もが心和ませる優品に仕上がっている。

神谷恒行さん「祈りの道」
森の中のモノクロームな道は、熊野古道を思わせる。眼を上に移していくとその地面は光輝いて見える。これは反射しているのではなく、そのような色合いになるように工夫しているものだ。まるで天上へと続く道のようで、対峙する者に厳粛なる心持を想起させる。

続いては洋画部門。

鈴木順一さん「海原へ明日もまた」
この写真ではわかりにくいのだが点描画である。現代のスーラだ。
あえて点描を挑戦するのもすごいのだが、その技術もすばらしい。
夏の日差し独特のまぶしさや暑さも伝わってくるようだ。

歳嶋洋一朗さん「地中海を望む」
今回のマイベストフェイバリット作品である。前回も出品していてとても気に入ったのだが、今回も出会えてうれしい。
無駄がなくシンプルでありながら、アクセントもあって見飽きない。
何よりグイグイと迫ってくる我欲が感じられないのがいい。

会場には、この他に彫刻部門もあったのだが、こちらはけっこう似たり寄ったりの作品が目に付いた。特に女性裸婦像が多い。
裸婦像が悪いとは言わないが、このような時世にあって、仮にも芸術を志す人が何の疑いもなくそういう作品を世に出すというのは、そしてそういう人が多いと言うのは、ちょっとどうかと思ってしまった。

毎年のことではあるが全体として、何を描いているかわからないもの、情報量が多いもの、独りよがりなものが少なくない。もちろん公募展だし、個人の趣味であればそれでも構わない。こちらも趣味で絵を見ているのだから、差し支えない範囲でいろいろ言いたいだけである。他意はないのだ。

それでも先にあげたような素晴らしい作品に、今回も出会えたのだから、とても満足のいく日展であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?