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これは令和の絵師だ~「中村佑介展」

画家とイラストレーターとの違いはなんだろう。
と言っても、日ごろからこのような問いを抱いているわけではないのだが、今回その境目がなんとなくわかったような気がした。
東京ドームシティのギャラリーアーモで開催中の「中村佑介展」に行ってきた。

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名前は知らずとも誰もが目にしたことのある絵というものがある。
わたせせいぞうや生頼範義などはもうクラシックになりつつあるが、この中村佑介も間違いなくその一人に加わるであろう。

彼のことを気になりだしたのは、もう10年も前になる。彼の最初の画集”Blue”が手元にあるのだが、奥付を見ると2009年の版とのこと。見返してみても、そのトーンの変わらなさに驚く。別にこれは悪い意味ではないと思う。それは、彼がイラストレーターだからだ。

かつて、画家とは芸術家にはあらず、職人であった。
教会や貴族、日本なら寺社仏閣や権力者から依頼を受け、求められる画題に沿った作品を仕上げる、それが彼らの仕事だった。渾身の出来と思っても、クライアントが満足せずに、受け取りを拒否されることもしばしばあったことだろう。だから彼らは制約の中で創意工夫を重ねていき、技を次第に芸術へと昇華させていったのだ。
そのような意味で中村佑介は職人、絵師だと思う。求められるまま、一定のクオリティで作品を生み出し続けている。それが気づいたらもう10年以上のキャリアだとか。

クオリティを保つ技なのか、彼の描く人物はポートレートか正面かのどちらかしかないのが特徴的だ。こうすることで、わざと「つくりもの」めくようにしているのではないかとも感じられる。

ただ、昔の画集と見比べて最近の作品は、より密度が濃くなっている印象を受けた。ミッチリとしているのだ。
やっぱり適度な間がある作品の方が好きなんだな。
ちなみに気に入った作品はこちら。「セーラー服と機関銃」
少し古い作品だけど、今回も展示されていてよかった。

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花札のモチーフが散りばめられているのが、ナイスなのである。

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