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Yuka Kato
2019年8月23日 12:31
※ 夕方の散歩中に犬を見た。よく見知っている犬だ。顔が黒と白の八割れで、人の顔を見れば必ず吠えてくる、憎たらしいあいつだった。 けれども、今日は様子が違っていた。いつものように、檻の中に気だるげに寝そべっているのではなく、飼い主のおじいさんが運転するシニアカートに乗っていた。普段浮かべている、世の中をどこか諦めたような表情はどこへやら、カートの前部に陣取り、あたかも自分がおじいさんを率いる将
2019年8月9日 19:03
小さな石橋の上に、傘を差した少女が立っていた。少女は真っ白なワンピースを着ていた。差している傘も真っ白だった。少女にそれらを与えたのは彼女の恋人であった。そうして、少女はその小雨の降る中、その澄んだ美しい瞳をじっと見据えて、その恋人を待っていたのである。少女の恋人は、二三年前、少女の国と隣の国との間に戦争が起こった、兵士として駆り出されていった。そのとき、少女は恋人が町を出て行くのを、遠く