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ドイツ暮らしとサイエンス

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ドイツときどき日本の暮らしで見つけた医学やサイエンスに関する記事を集めました。
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記事一覧

ハンブルク麻薬使用室前で男に追われる

ハンブルク麻薬使用室前で男に追われる

2月28日付の記事で、ドイツには「麻薬使用室」と呼ばれる、麻薬常用者が清潔な針と消毒を使って麻薬を使用するための施設があること、また、ハンブルクでは麻薬使用室周辺の治安が悪化しているため、4月から周辺地区の再開発が計画されていることについて書きました。

あれから、再開発は進んでいるのか、麻薬使用者たちはどうなったのかーー。今日は体を張って撮ってきた写真と共に現状をレポートします!

「ドイツのた

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「ペストの墓」の遺伝子解析

「ペストの墓」の遺伝子解析

スコットランドのカークマイケル(Kirkmichael)という村にある、コーチ・インを改造したアパートに滞在した。コーチ・インとは鉄道が普及する以前のイギリスでもっとも一般的だった宿の形態で、隣接する牧場で馬を休ませながら人間も食事や宿をとれる宿のことだ。ただ、人と馬を泊めるだけでは採算が取れなかったことから、現在ではほとんどのコーチ・インはパブになっており、ロンドンでは今でも宿として機能している

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「21世紀の阿片」フェンタニルと港町ハンブルク

「21世紀の阿片」フェンタニルと港町ハンブルク

ドイツでは今、従来のヘロイン、コカイン、覚せい剤などに加え、「フェンタニル」と呼ばれる合成麻薬が大きな社会問題としてクローズアップされています。

処方麻薬のフェンタニルは、手術の後や末期がんなどの疼痛を緩和するため、医療の現場でよく使われています。その強度は、モルヒネの100倍、ヘロインの50倍と言われており、少量でも疼痛を抑え、多幸感をもたらす強烈な効果があります。

そのため、オーバードーズ

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豆腐を作って考えた「天然塩」と「天然にがり」の付加価値と安全性

豆腐を作って考えた「天然塩」と「天然にがり」の付加価値と安全性

昨今の日本食ブーム・健康食志向も相まって、ドイツのスーパーやドラッグストアではほぼどこでも「豆腐(Tofu)」が売られています。

と言っても、日本の豆腐のように水に入った水分の多いものではなく、持つとずしっと重く、水分が少なくぱさっとした食感のものが、圧縮パックに入って売られています。炒め物などにする分には「まあ許す」という感じですが、そのまま食べられるような代物ではなく、食べた感じも豆腐という

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野生のポルチーニ茸をドキドキしながら食べる

野生のポルチーニ茸をドキドキしながら食べる

パリ郊外の宿を出て車を走らせること30分、森沿いの道に出た。

何があるわけでもないのに車が6、7台とまっている。森に入って行く人も森から出てくる人もバスケット(籠)を持っている。そこから覗いているのは、走っている車からもそれとわかる大きなキノコだ。

急いで車を止め、バスケットはないので買い物用のエコバックを掴み、森へ向かって歩き出した。

と言っても、いったいどんなキノコをどんなところで探した

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疫病、海、教会ーバスクの村から

疫病、海、教会ーバスクの村から

スペインの北部バスク地方に来ています。スペイン南部では連日40度を超える熱波とのニュースが続いていますが、北部は日中も30度を超えることは少なく、夜は長袖1枚が必要なくらいの涼しさです。

旅の途中で美しい教会を見つけました。

ムンダカ村の岬に立つサンタ・カタリナ教会(Herimita de Santa Catalina de Mundaka)です。教会の裏側の岬に立つと270度くらいが見渡せま

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日本でも増えている”E型肝炎”って何?

日本でも増えている”E型肝炎”って何?

わたしのnote ではここ2回、「生の豚ひき肉ペースト」など日本人からすると驚いてしまうような欧州の生肉料理を見ることを通じ、レバ刺しやユッケ、鳥刺しなど、日本で一般的な生肉料理の安全性について検討しました。

今回は「豚肉は生で食べられるのか?」という最初の質問に立ち返り、E型肝炎ウイルスというあまり耳慣れないウイルスの話を中心に、生肉食のリスクについてさらに解説します。

実はワクチンもあるE

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馬刺しとリトアニアのサバ刺身の秘密

馬刺しとリトアニアのサバ刺身の秘密

本記事では、生の豚ひき肉ペースト「メット」について考えた前回記事に続き、生肉を食べることのリスクについて考えます。

前回記事はこちらからどうぞ。

どうしてもレバ刺しが食べたければ馬?前回記事で触れたとおり、2012年以降、日本では牛レバーを生で食べることは法律で禁止されている。また、鶏レバーの生食も法的に禁止されていはいないが、食中毒のリスクが高いため、自己規制がかかっている自治体が多い。この

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豚肉を生で食べても大丈夫なのか?

豚肉を生で食べても大丈夫なのか?

高温多湿の状態が続き食中毒のリスクが高まる中、日本各地で「食中毒警報」が発令されています。そんな中、わたしのnoteでは今回から肉の生食の安全性に関する記事を3回にわたってお届けします。ぜひ、定期購読マガジン「文系女医の書いて、思うこと。」からご覧ください!

生の豚肉!ドイツの国民食「メット」ドイツに暮らしてもっとも衝撃を受けた食べ物は、フランクフルトの市場ではじめて食べた生ひき肉の「メット」

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渚の生と死

渚の生と死

ドイツに暮らしはじめていちばん驚いたのは夏の日が長いことです。

シェークスピアの戯曲「真夏の夜の夢」は夏至祭の日に妖精パックが活躍する物語。夏至に向けて夜がもっと浅く短くなり、人間たちが寝るのも惜しんで屋外を楽しみはじめると、ヨーロッパは妖精が本当に飛びかっているかようなそわそわした雰囲気に包まれます。この空気感は梅雨の最中で夏至を迎える東京では想像できなかったことです。

ドイツより北にあっ

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城と赤死病と栗

城と赤死病と栗

年末年始、いかがお過ごしでしたでしょうか。

わたしはコロナからもインターネットからも自由な時間が欲しくて、チェコとの国境に近い東ドイツの森の中で過ごしました。森の中と言っても森の中にある友人の所有する小さなお城です。

オミクロン株でもクリスマスもお正月も諦めない

オミクロン株でもクリスマスもお正月も諦めない

まだクリスマスイブの今日、ハンブルクはみぞれ交じりの雪です。どこかのクリスマスソングのように夜更けに雪になり、明日はホワイトクリスマスとなるのでしょうか。

ドイツではクリスマスイブが大晦日、クリスマスがお正月と言った感じでみんな帰省してしまうので街もがらんとしています。そして、25日か26日には戻ってきたら1年はだいたい終わり。大晦日はなぜか爆竹を鳴らして新年を迎えますが、今年はコロナのため爆竹

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クリスマス直前、オミクロン株のいる欧州の今

クリスマス直前、オミクロン株のいる欧州の今

「新規感染者数が記録更新したと聞いたけど大丈夫?」
「今年2月以来最高の500人超の死者という報道を見ました」
「医療崩壊が起きているそうですね」

日本からドイツのコロナを心配してくださる声が絶えません。

しかし、ハンブルクではオミクロン株が出現した以降も、特にワクチン接種者の生活はほぼ何も変わっていません。クリスマスマーケットも相変わらずにぎわっていますし、街はクリスマスのイルミネーションと

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