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解説 偽預言者に注意せよ(前編)(第二説教集2章3部) #88

原題: An homily against Peril of Idolatry, and superfluous Decking of Churches. (教会をいたずらに飾り立てて偶像崇拝を行うことの危うさについての説教)

※第3部の解説も3回にわけてお届けします。
※第2章の全体像についてはこちら:

第二説教集第2章第3部に入ります。解説の1回目です。この第3部はとてもとても長いものです。テーマを聖句で言うとこうなるでしょう。

しかし、私を信じるこれらの小さな者の一人をつまずかせる者は、ろばの挽く石臼を首に懸けられて、深い海に沈められるほうがましである。人をつまずかせるこの世に災いあれ。つまずきは必ず来るが、つまずきをもたらす者には災いがある。(マタイによる福音書 18章6~7節)

第3部のポイントは次の9点です。今回は①~③についてになります。

①第2部までの振り返りと第3部の目的
②偶像を正当化する者たちのへの反論
③偶像および偶像崇拝の持つ問題点の整理
④偶像によってどれほど信仰が乱れているか
⑤キリスト教会が全体として抱えている問題
⑥偶像崇拝に対する世の法の無力
⑦偶像に惑わされることへの戒め
⑧真の信仰に立ち帰ることの勧め
⑨まとめと結びの祈り

この第3部には副題がついています。他の説教でも、ごく一部ではありますが、章のなかのひとつの部に副題がついていることはあります。しかしこれほどに長い副題がついているのは他にはありません。副題はこのような意味になります。

偶像を正当化する主な説を論破し、偶像そのものと偶像への崇拝を戒める。これはキリスト教をよく理解するべき聖職者に向けたものでもある。

第3部はとてもとても長いのですが、これは第3部には説教壇で司祭が読み上げて民衆に説くという目的に加えて、いわば司祭の見識を高めるという目的もあるものと考えられます。実際、翻訳を進めていきますと、これはうなずけます。

まず第2部までの振り返りがあって、そののち、第3部の目的が示されますが、それは端的にこの言葉に収斂されます。

ここからはさきの説教でお話した多くの事柄を再び読み上げることになりますが、繰り返してお話するのは余計なことではなくむしろ必要なことです。

つまり、実質的には第2部をもってこの説教は終わっているが、もう一度繰り返してお話しましょう、という向きを第3部は持っているということになります。実際、第3部には第2部までに述べたことがほぼそのまま繰り返されている箇所もあるほどです。まずは偶像を正当化する論への反駁が展開されます。神の像やキリストの像を造るということについてはこう説かれます。至極もっともなことです。

極めて高貴な霊である神を誰も見たことがないというのに、どうして形ある粗悪な似姿を造ることなどできるというのでしょうか。

キリストがどのような体格や特徴を持たれていたのかについては知られていないのですから、その肉体を象った真の像など造られようがありません。

そして、仮に神やキリストを象ったものを造ることができるとして、という前提に立ちつつ、それでも偶像を造ることはまかりならないということが説かれます。これには聖書のこの言葉が引用されます。

「あなたがたは自分のために偶像や彫像を造ってはならない(レビ26・1)。」

これと合せて、第2部にあった、民衆を教化するためのいわば「必要悪」として絵画という偶像を正当化するに至ったグレゴリウス1世に関わる事柄が引き合いに出されます。教会堂に偶像を置くことは決して無害ではない。そうも説かれます。この上で、偶像が持つ問題点が改めて整理された形で提示されます。

 第一に、公のところに置かれた偶像はすべて、結局は学識のない人々や信じ込みやすい人々からの崇拝を受けていますが、それに加えて学問を収めた博学の人々からも崇拝を受けてしまいます。
 第二に、そういったものはこれまでも多くの場所で崇拝されてきていますが、今日においてもそうであるままです。
 第三に、神やキリストや聖人たちの像は、特に教会堂という神殿において、いずこでもいつの時でも、崇拝を向けられずにはありえません。(略)偶像崇拝は特に教会堂という神殿においては、その言葉のとおり偶像とは不可分のものです。

この3点について、このあと詳しく話が進められていきます。ここまで見てきているように、第2部までの内容を繰り返して強める第3部がさらに続きます。


今回は第二説教集第2章「教会をいたずらに飾り立てて偶像崇拝を行うことの危うさについての説教」の第3部「偽預言者に注意せよ」の解説(前編)でした。次回はこの解説の中編をお届けします。


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