見出し画像

ベトナムの街路をモチーフにした公共空間とソーシャルディスタンスをめぐる実験

ベトナム・ホーチミンを拠点に活動する私たちrice は、ニューノーマルにおける公共空間をテーマにしたアートプロジェクト「Where We Stand」に参加しました。

街路を自由につかうベトナムのライフスタイルからインスピレーションを受けて、公共空間の用途を多様化することをテーマに作品を発表しました。


Where We Standとは

Where We Standは、モノクルマガジンやアクネスタジオの仕事で知られるクリエイティブディレクター David Michonと、クリエーターとプロジェクトをつなげるプラットフォームであるASK US FOR IDEASによって実現したイニシアチブです。世界各地から参加した15組のクリエイターやデザイナーが、都市における「ソーシャル・ディスタンス」への対応をテーマに、プロジェクトを作り出しました。

ロンドンのサッカー場やベルリンの空港、パリのポンピドゥーセンターにシンガポールの植物園など。各都市における公共空間が、新しいビジュアルシステムの実験場になっています

ベトナムの路地を拡張する

riceがテーマにしたのは、ベトナム・ホーチミンのストリートです。

この街では、ありとあらゆる道路が、拡張的に利用されています。ここで暮らす人々は、創造的/流動的な都市の機能のなかで共存している。つまり公共空間が多様な用途で活用されているのです。

画像1

細い路地は移動のためだけでなく、お店を出したり洗濯物を乾かしたりする場所でもあり、ときに遊び場にもなる。地面に描かれた線は、行動を制限するものではなく、遊びを、場所の創造的活用を、誘発する。


わたしたちは、空間のイマジナリーな活用をビジュアライズすることで、その用途を多様化・拡大することを目指しました。小さいけれども目にとまるようなインスタレーションで、街路へ介入することを試みたのです。持ち運べる家具、屋外に引かれた配電線、拡張的な歩道の利用など。ベトナムの街中に溢れる、レディメイドな実践に目を向けるものです。

画像2

屋外に配線をひくことで、街路での活動は自由度を増す。


デンマークの建築家・都市コンサルタントであるJan Gehl(ヤン・ゲール)も、こんなことを言っています。「人々が望むものを提供するように、都市に働きかけること。これ以上にシンプルで安上がりな方法はない。」と。

画像3

ベトナムでは、プラスチックの椅子が、いたるところに置かれている。安価で軽いこの椅子があることで、人々は屋外へと自由に出ていくことができる。


以下は、Where We Standに掲載されたインタビューから。

—このプロジェクトでは、それぞれのアーティストがお気に入りの場所を選んで、作品をつくりました。riceは広い意味の「場所」を選びましたね。

rice)ホーチミンという都市そのものが、わたしたちの場所です。そして今回のプロジェクトは、街路を自由に活用するベトナムのライフスタイルからインスピレーションを受けています。これは「ホーチミンの日常を切り取りたい」という思いからはじまりました。

—何故、そうした考え方にいたったのですか?

rice)バイクや車であふれるホーチミンのストリートの最大の特徴は「公共に開かれている」ということ。人が行き来する普通の道に、夜になるとレストランやバー、屋台があらわれて、皆が集まる場所になる。一日を通して、ストリートの機能や商いが変化するのです。こうした都市の側面を強調することで、空間を賢く活用する姿勢を、皆さんに提案したいと思いました。

—ソーシャル・ディスタンスを促進するために、どんな工夫ができるでしょう?

rice)わたしたちが大切にしたいのは社会的共存(social coexistence)です。ホーチミンは個人が責任と思いやりを持って行動し、公共空間をうまく活用している街だから。

—距離をとることが求められるような状況でも、今回のコンセプトを応用することができると思いますか?

rice)わたしたちのアプローチは、COVID-19に特化したものではありません。これは、ミニマルでありながらインパクトのある「介入」を企図するものです。クリエイティブな空間の活用を促し、その用途を多様化/拡大することを目指しているのです。わたしたちを取り巻く周辺環境や人々にインスパイアされて生まれた今回のプロジェクトは、社会的交流(social interactions)を祝福するものです。

—このコンセプトはホーチミン特有のものでしょうか?

rice)わたしたちのコンセプトは、固有の場所に限ったものではありません。解決策を示すというよりも、検証したいと思ったのです。公共的であり、かつ小規模な介入が、どのように共存関係に影響をあたえ、それを強化しうるのかということを。そしてこうした実践は、他の場所でも再現することができると思っています。

—riceがこのプロジェクトで作り出した架空の空間を、人々はどのように活用することができるでしょうか?

rice)完全に自由に。ここで表現されているのは、絶え間なく形をかえ、変化するもの。予想だにしなかった結果をもたらすための、余白を生むものです。

—riceにとって、公共空間の重要性とは何でしょうか?

rice)本当の意味で「公共」であること。人々の変わり続ける要求に、こたえられることです。


-----


今回のプロジェクトに参加したriceのメンバーはJoshua Breidenbach, Dan Keeffe, Hélio Teles, Loi Xuan Ly, Lan Le, Aprar Elawadです。世界中のさまざまな場所から集まったメンバーと、クリエイティブなプロジェクトをつくり上げることは、わたしたちriceの喜びです。チームへの感謝を込めて。

rice の最新のワークスはBehanceからご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?