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【簡単あらすじ】フーガはユーガ(微ネタバレ)【伊坂幸太郎/実業之日本社】

常盤優我常盤風我、双子の兄弟が織りなす「闘いと再生」の人生。

「現実はそんなに甘くないけど、しっかり自分を生きていこう」と心に決めた二人の、少年から青年時代にかけての物語。



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『はじめに』
季節が変わり、読書の秋ではないですが、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいた本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたいのですが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』がありますので、その点にご注意ください。


私のように「双子には、他の人には分からない何か不思議な能力がある(共有している)」と思っている方は多いと思いますが、その「不思議な何か」を持っている二人を中心とした物語です。

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舞台は仙台市のあるファミレス、主人公の一人常盤優我が、若手有望ディレクターである高杉と話しているところから始まります。

高杉は、タレコミされた不思議な(盗撮)動画を優我に見せ、詳しく問いただします。

高杉からの追求を、初めはのらりくらりとはぐらかしながら対応していた優我でしたが、

「言っておきますけど、僕が喋ることには嘘や省略がたくさんあります」(P16)

と前置きしたうえで、その不思議な動画に関連する、自分と弟の風我に起こった・体験した子供時代から現在までについて語ります。

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小学二年生のとき、二人は「不思議な何か」を自覚し、その後双子は様々な行動を起こします。

マンガやドラマのように、「不思議な何かを持った二人が正義感に目覚め世の中の悪を全て倒す」ことに使うわけでは無く、どこにでもいる子供のように、自分が気になった人のために使いたい・使ったら面白いのではないか?と思った場面で、「不思議な何か」を使います。

常盤家の家庭環境、ワタボコリの学校生活、小玉がやらされていること、優我が出会ったハルコさんとハルタくんの現状。

そして結末。

登場人物のほとんどは平穏な生活を送ってきたわけでなく、これらを詳細に記述するとかなり重たい話になります。

しかし、読了後に振り返ってみると重たい話と感じることを少なくし・読みやすくしているところが、伊坂さんの凄いところです。

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また、最後の数ページは、風我が述べているようで、客観的な第三者が述べているようでもあります。

つまり、もしかすると… という考え(願望)を持たせてくれますし、ワタボコリ・風我・小玉、そして、少し大人びたハルタくんなど、登場人物全てに希望を持たせるまとめ方が、伊坂幸太郎さんの作品を読みたくなる一因です。

優我と風我に起きる「不思議な何か」は、使い方によって、楽しく、爽快なフィクションになり、問答無用のハッピーエンドにつながる題材ですが、過酷な状況で生きている子供たちもいる、という現状を入れ込んだことで、読了後に少し寂しさを感じる作品です。

こういう作品も良いですよね。


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画像は【nenecco】さまからお借りしました。ありがとうございます。

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