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【簡単あらすじ】名探偵のいけにえ(微ネタバレ)【白井智之/新潮社】

「私を雇ってください」


当時大学一年生だった有森りり子が大塒探偵事務所で働き始めるまで、大塒宗(おおとやたかし)は浮気調査を中心とした「普通の」探偵だった。

しかし、入社後のりり子の活躍は凄まじく、その結果警察関係者からも様々な依頼が舞い込むまでになり、さらにりり子はそれをも解決してしまう。

気づいた時には、大塒探偵事務所は「普通の」探偵事務所では無くなってしまい…



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『はじめに』
私は自他共に認める出不精です。さらに冬の寒さをひしひしと感じ、外出する頻度が減っているのですが、それに反比例して読書量は増加しています。
ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

第4回ほんタメ文学賞(2022年下半期)大賞受賞作品です。

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時代は1978年(昭和53年)。

宮城県石巻市とアメリカ・サンフランシスコのジョーデンタウンで発生した殺人事件に、大塒探偵事務所所長・大塒宗と、部下の有森りり子が臨みます。

混沌とした時代で、さらに宗教団体が絡んでいることもあり、理論や理屈でなく、あっさりと人が殺されてしまう危険性を秘めているという、そういった、現代とは違った背景を基本にしながら物語が進みます。

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この作品では、一つの殺人に対して、「立場・考え方・結末」など様々な要素を熟慮し、探偵役が数種類の推理を行います。

ある推理では矛盾が発生してしまうが、次の推理でその矛盾は解決する。

しかし、解決してしまうと様々な問題が発生してしまうので、わざと違う観点からの推理を行う…

このように、推理自体に多くのページを割いているため、まさに「推理小説」と言える作品です。

日常生活の描写の中に紛れ込ませた伏線だけでなく、ある推理によって発生した伏線(=謎)も全て丁寧に回収しているので、じっくり読むのに最適な作品です。

とはいえ、ジョーデンタウンで発生した殺人事件から一気に物語がスピードアップし、それにつられて読者の読むスピードも上がってしまい、特に残りの数十ページになってからは怒涛の展開です。

つまり、細かい描写まで目を通すことが難しい作品でもありますので、何度も読み返すことになること間違い無しです。

最後で「題名」が解明されるところも、とても私好みでした。

次回作もとても楽しみです。



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