パンダ

【本の紹介】『パンダ外交』家永真幸

本の紹介第2弾。今回は家永真幸(2011)『パンダ外交』メディアファクトリー新書を紹介したいと思います。この本は中国のパンダを他国に贈る意味が時代によって異なることを論じています。パンダが好き、中国の外交関係を知りたい方が入門書として読むのにオススメです。

※以下は私が面白いと思った感想を取り上げます。本書の要約とは若干異なります。悪しからず。

感想①:「パンダ」という切り口が斬新、しかも史実に裏付けられてる

 本書は「中国はパンダという「資源」をどう活用し、国際社会を渡ってきたか」という副題がカバーについています。本書は外交史の中に位置づけることが可能です。

 中国(当時は中華民国)が他国にパンダを贈るとき、どのような意図があったのか。アメリカの一例を紹介しましょう(註1)。 1939年を最後に、中国政府の許可なしでパンダを国外に運び出すことは禁止となりました。この頃、ブロンクス動物園のパンダは不幸にもこの世をさります。そして、1941年にはブロンクス動物園からパンダがいなくなりました。

 しかし、1941年9月、中国からブロンクス動物園に新しいパンダが送られることが判明します。そこで登場するのが、宋美齢(そうびれい)です。宋美齢は幼少期からアメリカに留学し、教育を受けていた親米派知識人です。クリスチャンであった彼女はアメリカ人からの好感度が高く、また当時のアメリカ大統領であるフランクリン・ローズベルトとその妻エレノアと親密な関係を築いていました。ちなみに宋美齢の夫は蒋介石です。

 このような経歴を持つ人物が突然アメリカにパンダを贈呈するのです。1941年は日中戦争が激化していた時期にあたります。本書で述べているように、「政治的意図を見出さずにはいられない」ですね。

(註1)家永真幸(2011)『パンダ外交』メディアファクトリー新書、52〜54頁。

感想②:中学レベルの歴史の知識で理解することができる

 本書は19世紀後半から21世紀までを幅広く扱っている本になります。そして、先に述べたように、日中関係を理解する必要がありますが、それは義務教育で習う範囲の知識で対応することができます。例えば、蒋介石や昭和天皇、日中平和友好条約などです。

 もちろん、細かい人物や出来事の話も登場します。しかし、話の大枠は学校で聞いたことがあるような内容だと思います。近現代の日中関係を学び直す最初の1冊として、いかがでしょうか。

おわりに

 本書は全5章のうち3章は欧米の話、2章が日中関係の話になります。個人的には、新書の中でも、文字が大きいですし、簡潔に文章が書かれていると思います。活字慣れしていない人が頑張ってチャレンジする本としてちょうどいいかもしれません。

 ちなみに、著者は現代ビジネスにも寄稿しています。また、2017年には単著も出しています。さらに、学びたい方はぜひ。

http://www.utp.or.jp/book/b307971.html

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