21. 取引先から奴隷になって。

大口の取引先相手に重大な損害を与えてしまった場合、そのミスをした営業担当者を変えるというのはよくあることではないだろうか。

そうしてくれるといいな、と思っていた。私は直接ミスをした人間ではないけれど、こんなに大きいミスがあったのだから、担当者を変えて二度とこのようなことが起きないようにします。そう会社が判断してくれればいいと思っていた。

だけど、事件後に会社が下した判断は、私にとってあまりに残酷だった。

ほかのすべての取引先の担当から外すから、ミスがあった取引先のみに集中して担当しなさい。

世界と自分との間に黒い幕が降りていった。

それまで担当していた取引先は20くらいあった。大口ではないが、とてもよくしてくださる取引先の方はたくさんいた。気軽に飲みに行ってくれたり、打合せさえも楽しくなるような。

ミスがあった取引先は、売上では一番大きかったが、少なくともそんな関係ではなかった。担当者は常に仕事に追われている方が多く、みんな余裕がない。正直言って私はとても苦手だった。

しかもあんなミスが起きているのである。それ以降はもはや取引ではない。奴隷だ。
二度とミスが起きないように、もっと厳重にやるのが当たり前でしょ?あんなミスがあったのにまだ取引してあげてるの、普通こんなことないよ?という威圧はそこかしこにあったし、私も過剰な恐怖を感じてしまっていた。

仕事量は極端に減った。その取引先から新規の案件がくるまで、仕事が見つけられない日もあった。
社内はいつも騒々しい。今日も帰れない、と愚痴めいた会話が聞こえる中、私は時間を持て余すことが多くなった。

もうやることがない。会社にいたくない。だけど今日新しい案件が入るかも知れない。せめて定時まではいなくてはならない。

定時で帰ってしまったあとにその取引先から電話があったときなど、心臓が縮み上がった。
ごめんなさい、もうしません。ちゃんとやります、ミスが起きないように何度もチェックします…。

食欲がなくなった。体調が悪いな、と思うことが増えた。外食で油が多いものを食べたりすると、すぐ腹痛で動けなくなった。
目に見えて痩せていく私を、会社の人たちは痛々しい目で見ていた。

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