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音読・黙読・速読(その1)

 今回から三回に分けて「音読・黙読・速読」という連載をします。


黙読しやすい文章


 漢字が適度に使われている文章は黙読しやすい気がします。読むというよりも、見て瞬間的に意味を取るのに漢字が適しているのは、もともとが象形文字だったからでしょうか。

 形を音に変換してその意味を理解するのではなく、形で直接意味が理解される回路が頭の中にできているように思えます。

 フォトリーディングという言葉を聞いたことがあります。その内容は知りませんが、写真のように文字を即理解するとすれば、その理解の仕組みは漢字ぽいなあと想像しています。

 ことばはえ。
 言葉は絵。

 しゃしんをとるように、ぱちっとあたまにはいる、ことばやぶんしょうがある。
 写真を撮るようにパチッと瞬間的に頭に入る言葉や文章がある。

 かんじがまじっていると、しゃしんやえのように、りかいできる。
 漢字が混じっていると写真や絵のように理解できる。

 めにはいりやすいことば。めにはいりにくいことば。
 目に入りやすい言葉。目に入りにくい言葉。

 というわけですね。

 文字どおり、一目瞭然。説明は要らないと思います。

見やすい文章


 ことばはえ。
 言葉は絵。

 しゃしんをとるように、ぱちっとあたまにはいる、ことばやぶんしょうがある。
 写真を撮るようにパチッと瞬間的に頭に入る言葉や文章がある。

 かんじがまじっていると、しゃしんやえのように、りかいできる。
 漢字が混じっていると写真や絵のように理解できる。

 めにはいりやすいことば。めにはいりにくいことば。
 目に入りやすい言葉。目に入りにくい言葉。

     *

 上のペアを見ていて、どちらが見やすいでしょう?

 下のほうが見やすいと私は感じます。

 黙読しやすい文章は見やすい文章と言えそうです。なにしろ速く読めます。

 ということは、黙読しやすい文章は見やすい文章で速読しやすい文章だと言えるかもしれません。

音読しやすい文章


 ことばはえ。
 言葉は絵。
 言葉ことば

 しゃしんをとるように、ぱちっとあたまにはいる、ことばやぶんしょうがある。
 写真を撮るようにパチッと瞬間的に頭に入る言葉や文章がある。
 写真しゃしんるようにパチッと瞬間的しゅんかんてきあたまはい言葉ことば文章ぶんしょうがある。

 かんじがまじっていると、しゃしんやえのように、りかいできる。
 漢字が混じっていると写真や絵のように理解できる。
 漢字かんじじっていると写真しゃしんのように理解りかいできる。

 めにはいりやすいことば。めにはいりにくいことば。
 目に入りやすい言葉。目に入りにくい言葉。
 はいりやすい言葉ことばはいりにくい言葉ことば

     *

 上の各組のセンテンスでどれが音読しやすいかを、実際に声を出して読んで確かめてみると面白いかもしれません。

 音をあらわすと言われるひらがなが、必ずしも音読をしやすくするわけではなさそうです。読みを助けるはずのルビがウザいと感じる人もいるにちがいありません。

 いま述べたことは、国語・日本語の学習がどれだけ進んでいるかによる気もします。誰でも分かりきったことはウザいと感じるものです。

 また、ウザいと感じることで作業能率は低下するにちがいありません。つまり、余計に読みにくく感じるのです。私の知り合いにルビが大嫌いだという人がいますが、イライラして読む気が失せるとまで言うのです。

     *

 黙読している最中に頭の中で音読しているかというと、私の場合には、そうでもなさそうな気がします。黙読のさいには音(文字の音)は邪魔になるような感じもします。

・ひらがな(音)、漢字(形)、文字(音・形)
・黙読、音読、速読
・見やすさ、読みやすさ、意味の取りやすさ

 文章を読むという行為を改めて考えてみると、なかなか複雑そうで一般化は難しい気がします。言語、特にその言語の文字の体系による違いがかなり大きいだろうと想像しています。

 個人レベルでのケースバイケースではないかという感じもします。文章の内容にもよるでしょう。

     *

 次に、文章の内容、つまり意味の理解について考えてみます。

 速読というのは、意味や内容(小説であればストーリー)を取ることを優先した読み方ですが、速読に適した文章とはどのようなものなのでしょう。

速読しやすい文章


 速読については、いろいろな本があります。上では漢字混じりの文章について述べましたが、そもそも速読は英米から来たような記憶があります。

 高校生から大学生の頃に、「速読」という文字の入った本をよく見かけました。英語の速読の本も本屋さんにたくさん並んでいました。

 各段落の冒頭のセンテンスがその段落を要約しているから、各段落の初めだけを読んで一冊の本を数時間で読み終えるなんて、乱暴な内容の本もありました。

 英語では単語間にスペースがあるので、各単語が漢字のように一つのまとまりを持った「意味のかたまり」(ほぼ形)に見えるのかもしれませんね。英単語漢字説なんて感じですが、まさにそうだと思います。

 英語を速く読んでいる時には、単語を意味のかたまりとして見ている気がしてなりません。

 英語を読むときに頭の中で音が聞こえると速く読めない気がします。これは日本語でも感じますけど。文字から意味へ行く前に、音に置き換える作業が入るためにその分だけ遅くなるのでしょう。

     *

 日本語だと、適度に漢字が混じり、センテンスが短めで、改行が多く、一段落の行数が少ない、と速読に適している気がします。この記事も、そういう工夫をしています。

 あと、いちばん大切なことは、書かれているテーマに詳しいことです。これが決定的な速読の条件なのですが、自分がよく知っているテーマなら速読できるという当たり前の結論になりました。

・自分が知っているテーマや話の文章は速く読める。
・自分が興味のあるテーマの文章は速く読める。

 あとは、その時の体調とか気分とか気合いでしょうか。

・精神一到何事か成らざらん。
・すべては、気合いだ!

 冗談ではなく、そうした気持ち的なものによって、さくさく読める時と、遅々として読み進めないことがあると自分の経験から思います。

     *

 ところで、文字には、頭に働きかけるだけではない要素や側面があるのではないでしょうか? 

 ひらがな(音 ⇒ 音楽・旋律・流れ・音色) 
 漢字(形 ⇒ 文字の顔や表情・文字の肌触りや匂い) 
 文字(音・形 ⇒ 聴覚や視覚だけはなく、他の知覚に訴える作用)

 たとえば、文字には、意味だけでなく、また音だけというよりも、音楽や旋律(音の流れ)や楽器の音色に似たものを感じさせる面があると私は思います。

文字の手触りや音色を楽しむ


 こうも言えるでしょう。漢字では意味が視覚的に飛びこんでくる。ひらがなは意味を奏でる。

 漢字は意味を目で感じる。意味を目で漢字る。
 かなは意味を音で奏でる。意味を音で仮名でる。

 語感は五感(五官)と深くむすびつき、人同士での「互換性」もありそうです。語感(五官)の互換性です。これは交感とか交換とか交歓とも言えるでしょう。

 ところで、いま書いた上の文章ですが、掛詞(駄洒落とも言います)が多いです。こういうのは見にくいし醜いし、読みにくいし、速読しにくい文章の典型でしょう(コスパが悪いということです)。

 むしろ黙読に適し、音読については、しにくいというよりも音読不能と言えそうです。試しに上の拙文を音読して、どなたかに聞いてもらってください。

 意外とストレスを感じるものです。音読されるよりも音読する人のほうが、です。伝えるのがとても難しいのです。アクセントに苦労します。

 この苦労は体験してみないと分かりません。

 なお、こうしたいわば「音読不能文」については、今後の記事でも触れるつもりです。

     ◆

 今回の記事「音読・黙読・速読(その1)」と関連して、いま述べたようなことを書いた記事「意味を絵で見せる漢字、意味を音で奏でる仮名(好きな文章・05)」があります。よろしければお読みください。

 速読とは真逆の話です。

(つづく)

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