リュックの中にもポッケのなかにも、1枚のノートも1つのコインもない。 日頃の行き届いた管理の良さがこんなところで裏目に出たのだ。
いろんなことで頭が痛い毎日ではあるけれども、
朝から元気に徒歩出勤をしてきた。
土曜日ももちろんお稽古があるのだ。
チャツウッドの駅前のベトナム系のベーカリーにいく。
Good Morning. 挨拶を交わす。常連なのだ。
コーヒーとマフィンを注文する俺。
朝からおしゃれだ。
いれたてのコーヒーと焼き立てのマフィン。
美味くないわけがあろうか。
リュックから財布を出す。
財布を、出す。財布を…。あれ?
そうだ、昨日オフィスに財布も小銭入れも忘れてきたんだった…
やばいやばいやばい。
リュックの中をまさぐる。ない。
ズボンのポッケもまさぐる。ない。
リュックの中にもポッケのなかにも、1枚のノートも1つのコインもない。
日頃の行き届いた管理の良さがこんなところで裏目に出たのだ。
そんな状況で店に入って、生意気にブルーベリーマフィンなぞをオーダーした。ああ、美味そうな響き、ブルーベリーマフィン。
俺の口から出たのはアーノルド・シュワルツネガーのあの言葉だった。
I'll be back.
言い方はあんなに落ち着いた感じではもちろんない。とにかく急いで取りにいかなくちゃなのだ。
「いかんな、油断した。」
走ってオフィスに向かいながら俺はそう思った。
テレビの時代劇の『大岡越前』(加藤剛)。
江戸城を抜け出して下々の生活のお忍び視察を試みる将軍吉宗(山口崇)。
世間知らずの身分ゆえに金も持たずに飲食し、無銭飲食でお上に突き出されそうになる。
そこへ偶然、越前守・忠相の奥方雪江(宇津宮雅代)が通りかかって支払いを済ませて事なきを得る。
…なんていう場面を見たことがあるだろう。
それだ。
やれやれ、
あやうく俺が上様だとばれるところだった。
いかんいかん、まだ寝ぼけていて油断してしまってた。
忠相の奥様も偶然にシドニーまでは来てくれない。
「よきにはからえ」ってわけにもいかない。日本語通じないし。
とにかくオフィスまで走って財布を取り、ダッシュで戻って金を払った。
店が近くてよかった。
残念ながら俺は瞬間移動も武空術も使えない。
自分の足で走るしかない。
よかった。
オフィスと5kmくらい離れてたら
財布を取りに走っている間にコーヒー冷めちゃうもんな。
英語圏で書道を紹介しています。収入を得るというのは本当に難しいことですね。よかったら是非サポートをお願い致します。