れんたろう

気ままに思ったことを。

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moonlit night

雲一つなく、月が輝く夜。 ここ最近、君と会う時はいつもこんな夜だ。 君が僕の誘いを断る時は、いつも決まって雨降りだった。 君からお誘いの連絡が来る時は、いつも決まって満月だった。 君と出会ってからもう数年が経つ。 前は天気なんて気にしていなかったはずだ。 待ち合わせの場所は、いつもの場所。 よくわからないモニュメントの前だ。 夜空からは、一ヶ月振りの満月が僕を眺めている。 君は、いつも少し遅れてやってくる。 「ごめんね」 と、はにかむ顔も見慣れたものだ。 毎回同じ居酒

    • ともに歩く

      今回の作品は、友達との共作です。 「キーワード決めて、それを使って一つの物語を作る」という遊びをしたところ、いい感じにできたので投稿することにしました。 【キーワード】 ・帽子 ・いちごミルク ・注射 ・扇風機 このキーワードが、どこでどう使われるのか。 是非、最後まで読んでみてください。 寝ぼけ眼でカーテンを開けた。眩しい朝日が私を照らしていた。 朝起きてすぐ、スマホの通知がないかを確認するのがいつもの日課だった。その日はめずらしく一件来ていた。私は、慌ててその通知を

      • 無数の光にザワついて

        夜景スポットと呼ばれる場所行ったことがないという人は少ないと思う。 僕も何度か行ったことがある。夜の暗闇に広がる無数の光。確かに綺麗だ。しかし、僕は夜景が苦手だ。 その理由の一つは、あの独特な雰囲気のせいだと言わざるを得ない。 夜景を見るには、街を一望できる高い場所でなくてはならない。大抵は山の上で、人気の少ない場所であることが多い。まず、夜に人気の少ないところに行くということに肝試し的な怖さを感じていまう。場所によっては、観光地として本やサイトに掲載され、夜景を見るために

        • 一度カーテンが閉まると…

          あの部屋に入る時は、冷静に、慎重に。 それが鉄則だ。 私は数枚の衣服を抱きかかえ、その部屋を見つめていた。 入口には門番が威圧感のある笑顔で立っている。一度入ってしまうと手ぶらで出ることは不可能なのではないかと思わせるほどの気迫だ。 もちろん、私もその気でここにやってきたのだが、いざ、あの部屋を前にすると本当に必要なのか、自分の身の丈に合っているのかを考えてしまう。何度も入口の前に立っては、また離れてを繰り返す。 薄い壁に仕切られた小さな個室。 正面に置かれた大きな

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        • 作家ごっこ
          24本
        • ぼくのはなし
          3本

        記事

          ←re start→

          満開の桜を見上げ、まだ少し堅い制服を馴染ませようと、肩や足を大げさに動かす。 桜の花に出会いを感じていたのは、もう数十年前の話。 いつからか散っていく桜を、くわえタバコでぼんやり見つめるようになった。 あの日の輝きは、もう目の中に残っていない。 少しくすんだ世界の中で生きている。 缶コーヒーを片手に喫煙所のベンチに座る。 たまに吹く風が心地いい。 コーヒーを飲もうとすると、桜の花びらが降ってきた。 満開の桜たちが少しづつ散っていく。 たった二週間で何もなかったようにな

          たった一度の帰り道

          いつの間にかその旅は始まっていて、気がつけば 僕は歩いていた。 旅の途中、訳も分からずいろんな荷物を持たされた。僕にしか価値がわからないような石ころや花を拾った。 荷物はとにかく邪魔だったから途中で捨てた。誰かにゴミだと言われても、石ころや花を拾い続けた。どっちがほんとに必要かはわかっていた。 いや、ほんとはなんにもわかっていなかった。 少し歩くと気の合う旅人に出会った。 少し歩くと別れ道があってひとりになった。 少し歩くとまた新しい旅人に会った。 少し歩くとまたひとり

          たった一度の帰り道

          初恋

          緊張か不安か。 震えた手で書いた一通の手紙は、淡く苦い青春の象徴だ。 中学一年生のあの日。それは唐突に……衝動的に。 買ったばかりのシャーペンと便箋を机の上に置き、軽く息を吐いた。 何度書き直したかは覚えていない。 殴り書きの文章。 ただこみ上げる想いを不器用に綴った。 今となっては、この世から消してほしい代物だ。 冷たい風が吹き抜けた夕暮れの土手。 あの人の文字は相手を傷つけまいというあたたかさに溢れていた。 自分に酔ったように遠くを見つめ、ダサい自分を笑った。

          おもひで

          いつかの記憶。忘れないおもひで。 これは恋の話ではない。 あの子は純粋な子だった。 好きなものは好き、嫌なものは嫌。 ハッキリとした性格だった。 子どもだから仕方ない。 子どもの気持ちを掴むには、あれこれ難しく考えないことだ。 ドッヂボールや鬼ごっこ……。 子どもの頃限定の遊びを一緒になって本気でやる。 ピアノや絵、誰でもできるようなことがほんの少しだけ上手くできる。 ちょっとしたことでみんな興味を持ってくれる。 あとは、子どもだからといって安易に子ども扱いしないことだ

          まちあわせ

          駅前の広場のちいさなベンチ あなたとは、いつもここで会う 柄にもなく黙り込むあなた なにを言いたいかはわかってる わざと知らないふりをするわたし 答えは「はい」と決まってる あなたが帰ったあとのベンチ 名残惜しくて、帰れない あの日を想う、まちあわせ 駅前の広場のちいさなベンチ わざわざここを選ぶなんて 静かに隣に座ったあなた なにを言いたいかはわかってる 覚悟を決めたふりをするわたし 答えは「はい」と決まってる……? あなたが帰ったあとのベンチ もうちょっと

          口下手だって叫んでみればいいじゃない

          「おしゃべりな口下手」 人とのコミュニケーションについて、僕は自分をこう表す。矛盾してると思ったかもしれない。 だが、調べてみると、 「おしゃべり=とりとめのない会話。口数が多いこと(そういう人)」 「口下手=ものの言い方が巧みでないこと」 と書いてあった。 なので、僕は、「無駄話はできる、でもいざという時に思いをうまく伝えられない」という意味で「おしゃべりな口下手」と表現している。 人と話すのが苦手なのかというとそういうわけではない。 友達とは何時間でもしゃべっていられる

          口下手だって叫んでみればいいじゃない

          2023年は…

          どうも。れんたろうです。 今日で2022年が終わりますね。 今年の9月から「作家ごっこ」と題して、超短編の物語を投稿してきましたが、2023年は、短編、中編、長編……色んな形式の物語を創りたいと思っています。 と言いつつまだ完成していないので、少しづつ書いて修正してを繰り返しながら、自分自身が納得できるものを投稿していけたらと思っています。 始めた時から、「自分のためにやるんだ」と思うようにしているのですが、いざ始めてみるとどうしても欲が出てしまうわけで、今は「どこか

          12月24日

          サンタクロースは赤い服なんて着ていない。 八歳の夜、サンタの姿を見てみたくて、寝たふりをして待っていた。扉が開いたからそっと目を開けてみると、お父さんだった。目が合うと少しびっくりして、「早く寝ないとサンタさん来ないよ?」と言って部屋を出ていった。 いつもは頭を撫でてくれるのに、あの日は撫でてくれなかった。 二十四歳の夜、大好きな彼女をデートに誘った。 いつもは行かないオシャレなレストラン。 指輪を持つ手は、ポケットの中で少し震えている。 山下達郎が流れるイヤホン。 サン

          「緑茶好きの父」

          ―十二月某日。一人の男が殺害された。 被害者は、ある大企業の会長。 容疑者は、会長の息子である三兄弟。 容疑者一人目、長男。 長男ということもあり、会長からは特別可愛がられていたようだ。もうじき社長に就任するという噂も流れている。彼はいつも赤い靴下を履いていた。 容疑者二人目、次男。 次男は、いつも緑のシャツを着ている。自ら会社を立ち上げ社長を務めている、行動力溢れるパワフルな男だ。自分の会社に入らないという事で会長と揉めた過去もあるようだ。 容疑者三人目、三男。 三男

          「緑茶好きの父」

          What is love?

          「なんだありゃ……愛についての授業?」 キーンコーンカーンコーン…ガラガラガラ 「はい、皆さん。席について!授業を始めます」 徐々に静かになる教室。 黒板にでかでかと書かれた文字は「愛」 「皆さんにとって愛とはなんですか?」 生徒から次々に声が上がる。 「大切に思うこと!」 「伝えるべきもの!」 「うちに秘めるもの」 「何があっても許すこと!」 一通り言い終わると、生徒たちは答えを求めるように先生を見た。 「皆さん、まだまだアオいですね〜。いいですか?愛とは、人の

          What is love?

          気取った男の説明書

          男には、決して譲れない自分だけの美学がある。 次元大介然り、立川談志然り、美学を貫く男ほど格好良い男はいない。 幼い頃から、取り憑かれたように戦隊ヒーローやバトル漫画にハマり、仮面ライダーの変身ポーズを真似するのは、それがほとんどの男にとって「格好良い」の原体験だからだ。 そんな男に、「カッコつけすぎ」なんて台詞は野暮だ。男は須らく皆美学を追い、無意識に気取ってしまうものなのだ。 「もう別れよ?」 「何で?」 お互い目を合わせず言った。 「こだわりが強くてしんどい。あと

          気取った男の説明書

          しあわせの足音

          「ちゃんと夢叶えて看護師になったんやもんな。ほんますごいわ」 「まあな……。でも、来年には辞めて地元に帰えんねん」 「えっ、そうなん。なんで?」 「結婚するから」 そんな報告を受けたのは、彼女と数年ぶりにあった日のことだった。 ―愛とは、深く美しいものである 私の母は、女手一つで私を育ててくれた。 家族に対して不満を感じたことは一度もない。 ただ、母に無理をさせてしまっているのではないかと心配に思うことはあった。 新しい相手を見つけて一緒になれば、きっと少しは楽になるは

          しあわせの足音