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作家ごっこ

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超短編
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moonlit night

moonlit night

雲一つなく、月が輝く夜。
ここ最近、君と会う時はいつもこんな夜だ。

君が僕の誘いを断る時は、いつも決まって雨降りだった。
君からお誘いの連絡が来る時は、いつも決まって満月だった。

君と出会ってからもう数年が経つ。
前は天気なんて気にしていなかったはずだ。

待ち合わせの場所は、いつもの場所。
よくわからないモニュメントの前だ。
夜空からは、一ヶ月振りの満月が僕を眺めている。

君は、いつも少し

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ともに歩く

ともに歩く

今回の作品は、友達との共作です。
「キーワード決めて、それを使って一つの物語を作る」という遊びをしたところ、いい感じにできたので投稿することにしました。

【キーワード】
・帽子
・いちごミルク
・注射
・扇風機

このキーワードが、どこでどう使われるのか。
是非、最後まで読んでみてください。

寝ぼけ眼でカーテンを開けた。眩しい朝日が私を照らしていた。
朝起きてすぐ、スマホの通知がないかを確認す

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一度カーテンが閉まると…

一度カーテンが閉まると…

あの部屋に入る時は、冷静に、慎重に。
それが鉄則だ。

私は数枚の衣服を抱きかかえ、その部屋を見つめていた。
入口には門番が威圧感のある笑顔で立っている。一度入ってしまうと手ぶらで出ることは不可能なのではないかと思わせるほどの気迫だ。

もちろん、私もその気でここにやってきたのだが、いざ、あの部屋を前にすると本当に必要なのか、自分の身の丈に合っているのかを考えてしまう。何度も入口の前に立っては、ま

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←re start→

←re start→

満開の桜を見上げ、まだ少し堅い制服を馴染ませようと、肩や足を大げさに動かす。
桜の花に出会いを感じていたのは、もう数十年前の話。

いつからか散っていく桜を、くわえタバコでぼんやり見つめるようになった。

あの日の輝きは、もう目の中に残っていない。
少しくすんだ世界の中で生きている。

缶コーヒーを片手に喫煙所のベンチに座る。
たまに吹く風が心地いい。
コーヒーを飲もうとすると、桜の花びらが降って

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たった一度の帰り道

たった一度の帰り道

いつの間にかその旅は始まっていて、気がつけば 僕は歩いていた。

旅の途中、訳も分からずいろんな荷物を持たされた。僕にしか価値がわからないような石ころや花を拾った。

荷物はとにかく邪魔だったから途中で捨てた。誰かにゴミだと言われても、石ころや花を拾い続けた。どっちがほんとに必要かはわかっていた。
いや、ほんとはなんにもわかっていなかった。

少し歩くと気の合う旅人に出会った。
少し歩くと別れ道が

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初恋

初恋

緊張か不安か。
震えた手で書いた一通の手紙は、淡く苦い青春の象徴だ。

中学一年生のあの日。それは唐突に……衝動的に。

買ったばかりのシャーペンと便箋を机の上に置き、軽く息を吐いた。

何度書き直したかは覚えていない。
殴り書きの文章。
ただこみ上げる想いを不器用に綴った。
今となっては、この世から消してほしい代物だ。

冷たい風が吹き抜けた夕暮れの土手。
あの人の文字は相手を傷つけまいというあ

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おもひで

おもひで

いつかの記憶。忘れないおもひで。

これは恋の話ではない。

あの子は純粋な子だった。
好きなものは好き、嫌なものは嫌。
ハッキリとした性格だった。
子どもだから仕方ない。

子どもの気持ちを掴むには、あれこれ難しく考えないことだ。
ドッヂボールや鬼ごっこ……。
子どもの頃限定の遊びを一緒になって本気でやる。
ピアノや絵、誰でもできるようなことがほんの少しだけ上手くできる。
ちょっとしたことでみん

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まちあわせ

まちあわせ

駅前の広場のちいさなベンチ
あなたとは、いつもここで会う

柄にもなく黙り込むあなた
なにを言いたいかはわかってる

わざと知らないふりをするわたし
答えは「はい」と決まってる

あなたが帰ったあとのベンチ
名残惜しくて、帰れない

あの日を想う、まちあわせ

駅前の広場のちいさなベンチ
わざわざここを選ぶなんて

静かに隣に座ったあなた
なにを言いたいかはわかってる

覚悟を決めたふりをするわた

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12月24日

12月24日

サンタクロースは赤い服なんて着ていない。

八歳の夜、サンタの姿を見てみたくて、寝たふりをして待っていた。扉が開いたからそっと目を開けてみると、お父さんだった。目が合うと少しびっくりして、「早く寝ないとサンタさん来ないよ?」と言って部屋を出ていった。
いつもは頭を撫でてくれるのに、あの日は撫でてくれなかった。

二十四歳の夜、大好きな彼女をデートに誘った。
いつもは行かないオシャレなレストラン。

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「緑茶好きの父」

「緑茶好きの父」

―十二月某日。一人の男が殺害された。
被害者は、ある大企業の会長。
容疑者は、会長の息子である三兄弟。

容疑者一人目、長男。
長男ということもあり、会長からは特別可愛がられていたようだ。もうじき社長に就任するという噂も流れている。彼はいつも赤い靴下を履いていた。

容疑者二人目、次男。
次男は、いつも緑のシャツを着ている。自ら会社を立ち上げ社長を務めている、行動力溢れるパワフルな男だ。自分の会社

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What is love?

What is love?

「なんだありゃ……愛についての授業?」

キーンコーンカーンコーン…ガラガラガラ

「はい、皆さん。席について!授業を始めます」
徐々に静かになる教室。

黒板にでかでかと書かれた文字は「愛」

「皆さんにとって愛とはなんですか?」
生徒から次々に声が上がる。
「大切に思うこと!」
「伝えるべきもの!」
「うちに秘めるもの」
「何があっても許すこと!」

一通り言い終わると、生徒たちは答えを求める

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気取った男の説明書

気取った男の説明書

男には、決して譲れない自分だけの美学がある。
次元大介然り、立川談志然り、美学を貫く男ほど格好良い男はいない。

幼い頃から、取り憑かれたように戦隊ヒーローやバトル漫画にハマり、仮面ライダーの変身ポーズを真似するのは、それがほとんどの男にとって「格好良い」の原体験だからだ。

そんな男に、「カッコつけすぎ」なんて台詞は野暮だ。男は須らく皆美学を追い、無意識に気取ってしまうものなのだ。

「もう別れ

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しあわせの足音

しあわせの足音

「ちゃんと夢叶えて看護師になったんやもんな。ほんますごいわ」
「まあな……。でも、来年には辞めて地元に帰えんねん」
「えっ、そうなん。なんで?」
「結婚するから」
そんな報告を受けたのは、彼女と数年ぶりにあった日のことだった。

―愛とは、深く美しいものである

私の母は、女手一つで私を育ててくれた。
家族に対して不満を感じたことは一度もない。
ただ、母に無理をさせてしまっているのではないかと心配

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なんで「すき」っていわないの?

なんで「すき」っていわないの?

「ひとのこころ」が ひかってみえる
それがわたしの ちいさなとくぎ

わたしのままと わたしのぱぱは
わたしをみると えがおになって
まぶしいくらい こころがひかる
そのあと「すき」って いつもいう

公園にある ふるーいベンチ
いつも 2人ですわってる
あのおにいさんと おねえさん
どっちもこころは 光ってる
なんで「すき」っていわないの?

男子のこころが 光るとき
それはサッカーしてるとき

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