ゆいレギナ

ライトノベル作家・漫画原作家 2022年4月『100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽…

ゆいレギナ

ライトノベル作家・漫画原作家 2022年4月『100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。(GAノベル)』にてデビュー。 2023年7月『3分聖女の幸せぐーたら生活②』が発売中。 小説は計5冊刊行、コミカライズも3シリーズ連載中。

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団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第22話(最終話)

「屋上に連れて行けばいいの?」  三月二十五日。水曜日。週のまんなか。いちばんツライ日だが、給料日でもある。フィフティーフィフティーでプラマイゼロ。きっと今日は普通の日。  別れは突然やってくる。そんな言葉があるけれど、やっぱり突然なんて受け売れられないものなんですよ。だって、私はポンコツの御手洗花子ですもの。そんなカッコいい大人になんかなれません。 「ふっふんたーらーらーったったでぃざいあ♪」  寂しさをごまかすため、両手に二人を乗せた私は、歌いながら階段昇っていく

    • 団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第21話

      「はーい、みなさんおはこんばんは~。死神界のアイドル☆団地の花子さんでっす。え? おまえ如きがアイドルなわけないって? あっはは~、そーですよ? でも私、生者ですから。死んでるみなさんに比べたら生者パワーがキラッキラ……あ、ごめんなさい、石投げないで! それ墓石でしょ? 罰当たりめ……あ、自分のだからいいのかあっはは~☆」  ……うん、ごめんて。耳惠ちゃん、目がないくせにそんな冷たい視線(?)向けないでよ。花子が頑張ってテンションアゲアゲ☆したらこうなるんだってば……。

      • 団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第20話

         ちなみに、橋元くんは前々から私の誕生日を知っていた様子。    地元の駅で橋元くんと別れてから、その口の軽い相手に『なんで人の誕生日漏らすかな』とメールすると、『来週の土日は予定空けておいてねー』とトンチンカンの即レスが返ってきた。  もう知らん。勝手にしろっ!  誰もいない静かすぎる家に帰り、私はそのままお布団にダイブする。電気も着けない。だって、余計に寂しくなるだけだもん。  うん……疲れた。明日の朝にシャワー浴びればいいや。スーツがしわになるのなんか今更だし。明

        • 団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第19話

           三月の給料日まであと三日。そんな生きるのが一番ツラい月曜日。  その辞令は突然やってきた。 「え、転勤?」  私の疑問符に、担当課長代理佐藤さんは「だから」と苦笑する。 「転属(・)ね。内勤から外勤……調剤薬局に薬を運ぶ――俗に言う配送部署に――来月の契約更新のタイミングで異動してもらいたいんだ」  なんやて佐藤。身体は大人、心は|永遠の厨二病(エターナル・ラビリンス)の花子に、お主は何をおっしゃるの? 「三月のこのタイミングで、担当者が家族の介護を理由に急に退職す

        団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第22話(最終話)

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第18話

           どんなに泣いても、お腹は空く。  なんやかんや朝ごはんを抜いていた私の腹の虫は正直で。そんな私に、おばあちゃんは「仕方ないねぇ」とご飯を作ってくれるという。どうやら、またサバカレーのようだ。  実は、私は知っている。おばあちゃんは料理が苦手でね、サバカレーが唯一の得意料理なのだ。お母さん曰く、子供の頃から見かねたお父さんが台所に立ってたんだって。それでもお金持ちだったから、お惣菜や外食も多かったらしいけど。  そんなわけで、先週と同じメニューなことに何も文句ない孫の花

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第18話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第17回

           その翌週。 「今日もいい天気だなぁ☆」  なんて言い訳してベランダから桜通りを覗いたら、おじいちゃんが座っていなかった。 「ん?」  あれ、なんで?  あの通りにおじいちゃんがいなかったことなんて、夜か雨の日しかなかったぞ? いや、小雨くらいなら負けないおじいちゃんだった。  あるべきものがない違和感にパチクリしていると、お部屋の中から声が掛かる。イケメンの声が、まるでお母さんの声のように耳に馴染むようになった。 「花子氏~。早くしないと、津田さんに怒られちゃい

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第17回

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第16話

          「はあ⁉ 何を馬鹿なこと言ってんだいっ!」  だけど、おばあちゃんの家で正座させられた私は、すぐに後悔。別に、老人にタカリに来たことではない。現に机の上には、お持ち帰り用のサバ缶三パックが置かれている。  おばあちゃんがちゃぶ台をバンッと叩くと、積まれたサバ缶が倒れます。だけど奥歯をガタガタ言わせている花子には、それを直す勇気がありません。 「もう一回だけ聞いてやる! どこで、それを知ったんだい! アイツとアタシが知り合いだって!」  私が言ったことは、『あのずっと桜

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第16話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第15話

           正直、今お使い行くのはツラいのだ。  おばあちゃんの家は団地の端っこだから、駅前のスーパーへは我が家を通り抜けて歩いて十五分くらいかかる……とか、いい歳してネギの買い出しにおばあちゃんのお財布を借りて行く不甲斐なさ……とかではない。  例の如く、あのおじいちゃんがいる場所を通るからである。  ……いや、もちろん他の道を選ぶこともできるんだけどさ。やっぱり「いるのかな〜」て好奇心もあるじゃん? 今もあの場所で一人で日向ぼっこしてるのかなって。あの女性を待っているのかなっ

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第15話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第14話

           そうして眼球くんが震えた後は、とても健全だった。  ジャージにティーシャツ。そんな姿で引っ越す二人。 『奮発しちゃった』と引っ越した先は、見覚えのある団地だった。狭いワンルームに置く家具は少ない。それでも工場やスーパーなどで、休む暇なく働く二人の汗は眩しかった。  忙しい間をぬって、彼らは遊んだ。春は桜の綺麗な通りでお花見をして。夏も同じ通りで花火をして、警察に怒られていた。秋は紅葉の下でお弁当を食べて、冬は雪をかき集めて雪だるまを作る。家の近くで、決して派手な遊びでは

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第14話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第13話

          「ねーねー、花子氏~。次のターゲットは~?」  今日はのんびり日曜日。まだまだお外は寒いけど、三月って数字を見ると春らしくなった気がするのはなぜだろうね。それでも花子はごまかされずに、お布団に潜ったままの偉い子なのですが。  昨日の土曜日にいっぱい寝たので、朝の九時でも眠くありません。だけど布団から出る用事もないので、うもうもと全ゲームのログインボーナスを回収したいのですが、今日も爽やかな死神くんが全力で私を揺さぶってきます。 「もう一ヶ月も投稿出来ていないんですよー。

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第13話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生解説動画 第12話

           なんやかんや家に着いたのは、深夜十二時すぎ。  それでも、玄関を開けると部屋は明るかった。その色も、その声も。  そして例の『ディザイア』な音楽をガンガンに掛けながら、死神くんが大笑いしていた。眼球くんのハイビジョンが、私が『ディザイア』連呼し終えた後を写している。支店長が『ほんとアイツ女見る目ねーなー』とひとり酒をしていた。  この様子だと、どうやら今回も隠し撮りを動画にされそうである。 「ヒーヒヒヒヒッ。いやぁ、あの熱弁は今回も傑作でしたなぁ。ディザイア……ねぇね

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生解説動画 第12話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第11話

           内緒話中の支店長の声は、妙に優しかった。 「正直、あの女性はキミに不釣り合いではないかい? 生きる世界が違うというか……自分の娘なら、もっと気立てもいい。キミのことを話したら、娘もとても乗り気でね。学生なら変わった相手に目を惹かれることもあるかもしれないが、キミももう社会人だ。現実的な伴侶を探すに、早すぎるということはないだろう」  ううむ……やっぱり花子は橋元くんの婚約者に無理があったと?  でーすーよーねーっ‼ ぶっちゃけ、私もそうだと思うわ。こんな服装してなくて

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第11話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第10話

          「どうしてこうなった?」  私はきちんと言ったのだ。ちゃんと今どきの化粧で可愛くしてね、と。  それなのに、私を仕立て上げた鏡越しの死神くんはドヤ顔だった。 「だから、化粧はちゃんと『イマドキ』ってやつを勉強したじゃないですか」 「じゃあどうして私は着物を着てるんだあああああああああ⁉」  厳密に言えば、着物じゃない。着物のような……洋服になるんだろうか? 首周りは緩く、だけど太い帯はキツく。裾は膝丈。黒タイツとブーツを履いているから、防寒対策に抜かりはない。  ラジ

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第10話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第9話

           そして、橋元くんとの邂逅はすんなりと週末の土曜日に決まった。時間は夜。場所は電車を一本乗り換えた所。埼玉だと思っている人も多い、れっきとした東京の代表とされる繁華街だ。『橋元で予約してありますから』とメッセージにお店のアドレスが添付されてきたから、少し迷いながらも頑張っていかねば――と、その前に。 「ふむ……」  私は津田さん家のワンルームにお邪魔していた。動画で見た通りのデデニー満載のメルヘンなお部屋だ。  人の家の鏡の前で、ワンピースに着替えさせられた自分を見る。

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第9話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第8話

          「さぁさ今日もおはこんばんは! 皆さんの心のアイドル死神くんと団地の花子ちゃんです!」 「こ、こんにちは~」  あぁ、眼球くんからビームされるハイビジョンを見ながら耳惠ちゃんに話すのは、二度目でも慣れない……。しかも私は寝間着です。襟元が破れている色落ちした紫のジャージです。髪は死神くんが丁寧に乾かしてくれたから、無駄にサラサラ。あまりの気持ちよさに、私はウトウトしかけました。  ともあれ、深夜0時。死神くんは今夜も絶好調。 「ちょっと花子氏。視聴者の皆さんはいつ観てる

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第8話

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第7話

           その出会いは突然だった。  お昼休みが終わってしまうと、エレベーターに駆け入ろうとした時である。私は肩をぶつけられてすってんころりん。お尻も痛いけど、足も痛い。あ、ヒールのゴムがポロンと取れとる。あーあ、また接着剤で止めなきゃ。 「す、すみません! 俺、急いでて……」  うん、仕方ないね。私も急いでたんだもの。チンタラしてたら、受付秘書の人に話しかけられちゃうし。また津田さんじゃないのが厄介なの。「実は津田さんってさぁ~」て花咲かせられるほどの陰口のネタを、御手洗花子、

          団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画 第7話