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映画『BLUE GIANT』感想 

予告編
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 もともと観に行く予定ではいたものの、なかなか予定が合わず今頃になって鑑賞。既に観に行った知人に「マスクびしょびしょになるくらい泣いた」と聞かされていたけれど、逆にそんなに「泣ける」なんて言われると冷めちゃうよね……なんて思っていましたが、嗚咽が出そうになるくらい感動してしまいました笑。原作は未読、もっと言えば音楽の、それこそジャズについての素養なんか持ち合わせていない僕でも楽しめる。とても素敵な作品でした。

 もちろん、流れてくる音楽それ自体にも感動できるのですが、こんな僕でさえ “この演奏は凄いのだ” とわからせてくれる工夫があるので、物語に入り込みやすい。主人公・大(山田裕貴)の演奏を雪祈(間宮祥太朗)が初めて聴くシーンで、彼の演奏に驚愕している雪祈の心情を表すかのように、画面が激しく動き回る。(まぁ白状すると、全編を通して演奏中のモーションキャプチャのヌルヌルした動きには若干の違和感を感じてしまったものの笑)、聴く側の心情にフォーカスするような映像のおかげで、「えーっと……、これって良い演奏ってことで合ってるのかな?」という不安を抱えずに音楽を楽しめる。それは同時に、音楽が魅力的な本作を、セリフや言葉で説明するという野暮ったく無粋な工程を省ける要因にもなっていたんじゃないかな?

一方で、演奏する彼ら自身の心情や熱量も、映像として楽しめるのも見どころの一つ。赤色から青色への変化や、観客席を暗く、或いは描かずに、演奏者だけが浮かび上がるような描写なんかもあった。ライブシーンでの色使い、光の当て方などなど、アニメーションだからこその面白さも詰まっていました。


 僕なんかが言っても説得力はありませんが、もう音楽の素晴らしさは言わずもがな。YouTUBEで本編映像の一部——JASS(大、雪祈、玉田(岡山天音)の三人のバンド名「ジャス」)のライブシーン——が一部公開されていますけど、劇場で観て、もとい聴いて堪能するのがベスト。これ以上の説明は不要だと思うので、ここであーだこーだと述べることはしません。こちらからは以上です笑。



 本作は、演奏シーン以外にも素敵な瞬間がいくつもあります。個人的に好きなのは、JASSの三人が地下鉄線の電車に乗っているシーンでの描写。何故か、車内の「表参道駅」の表示が際立ちます。「ここで何か起こるのか?」と思わされるが、特にそういうわけでもない。たまたま乗り込んできた、楽器を背負った女子学生が映る。それを目にしたのか、はたまた背景として偶然紛れ込んでいただけなのかは定かではありませんが、ここで交わされる会話は、とある女の子の話。雪祈が幼少期の頃に知り合いだったその子は、家庭の事情もあり、今でもピアノを続けているか不明だという。おそらくもうやめているだろうと口にする雪祈に対し、大が即座に「きっと今でも続けている」と口を挟む。その瞬間、電車は地上へと出てくる。そう、彼らが乗っていたのは銀座線。表参道駅から渋谷駅へ向かう際、この路線は地下鉄でありながらも地上に出てくる

 だから何だ、ってわけじゃないんだけどさ、なんとなく、“地下から地上へ上がるという変化” が、残念そうに話す雪祈とは対照的なことを口にする ”大のポジティブで明るい感性を象徴している” ように感じられたんです。

また、直前に描かれたライブの後に、音楽プロダクションの人に名刺を渡された三人。名刺をまじまじと眺めるシーンで、さりげなく「渋谷区」と名刺に記されており、表参道駅から渋谷駅という進行方向を暗に示しつつ、同時にその行先(渋谷)にある音楽プロダクションの存在をも際立たせ、ひいてはそれがJASSとしての明るい未来やステップアップをも予期させているようにも感じられました。地下から地上へ上がるという舞台の変化が、ここのシーンでの会話と、ストーリー展開の両方と呼応していたような印象です。丁度良いタイミングで地上に上がれるのも、アニメーションだからこそ可能な表現と言えるかもしれません。



 あと、ネタバレになるので細かくは言えませんが、序盤、上京したての大が都内を歩き回るシーンで、新宿駅構内の案内板がたくさん映されていたカットが、最期の最後になって活きていたのも非常に素敵だった。中央線やら総武線やら山手線やら、どこをどう行けば良いのか、右も左もわからなかった仙台出身のがむしゃらな若者が、遂に大きな一歩を踏み出す。そして新宿駅の時とは違い、進むべき道がはっきりとしていることがわかるラスト。もぉ最高。エンドクレジット後のシーンまで見逃せない……にも関わらず、相変わらずクレジットが流れ出すと席を立って帰り出す人がちらほら……。まぁクレジットを最後まで見るか見ないかは人それぞれで良いと思いますけど、そういう方々は、そんな素敵なシーンがあるとも知らずに劇場を後にしているわけで。あ~あ、なんともったいないことか。



 当初、メインの三人に俳優をキャスティングすると知ったときは不安もあったものですが、はっきり言います。まったく問題ありません。むしろ最高のキャスティング。っていうか逆に、俳優さんにあんな素敵な芝居をされちゃあ、声優側の立つ瀬が無くなりそうです笑。あくまで、僕個人の意見ですが。


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