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映画『アントマン&ワスプ クアントマニア』感想

予告編


失敗……なのか?


 MCU事情を追っかけ続けるのも楽じゃない。物量が多すぎてね、どうにも。とはいえ、MCU絡みのネット記事を見つけたら逐一読んでしまうのは、なんだかんだでこれまで追っかけ続けてきたが故の性(さが)というもの。

昨年のコミコンで第5作目となる『アベンジャーズ』のタイトルが発表されたのですが、それが『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』というやつらしくて……。まぁ相変わらずタイトルだけじゃ何のことかもさっぱりだったのですが、本作の予告ティザーやTVスポットを目にした時に、ハッとさせられたんです。本作のヴィランの名前が、征服者・カーンって……。

うーむ、原作とか正直全然詳しくないんですけど、『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』の “カーン” って、そういうことなんですかね?
なるほど、次の『アベンジャーズ』を楽しむためには、本作は必見、もとい必修科目ということですね、了解しました。

 そんなこんなで、若干MCU熱が冷めかけていた僕ですが、慌ててユーチューブでカーンについての解説動画を視聴。……って、いやいや、こんな敵にどうやって勝つんだ?というのが本音。しかし、そんな強大な敵や試練を乗り越えてこそのヒーロー映画。久しぶりにかなりワクワクしながら劇場に観に行けました笑。



 個人的に、『アントマン』は一作目から科学考証・SF考証だの小難しいことがわからなかったので、そういう事情はガン無視で観ています。

 僕らが普段暮らしている世界を小さい者の視点で眺めていた頃とは異なり、最早まったくの別世界が舞台になっていた本作。画面に浮かぶように見切れる埃などで、アントマンたちが小さくなっていることを表現していたような一作目などの映像とは異なり、小さくなったかどうかもよくわかりませんでしたが、普段意識しない・意識できないようなところが、ふとしたきっかけで異世界へと繋がり得るかもしれないというのは、ファンタジーアドベンチャー感があって面白かったんじゃないかな。

 特に、本作で主人公一行が飛ばされた量子世界の見応えが凄い。通常の人間世界から、未知の量子世界へ行く瞬間に、通常のシネマスコープからIMAXの映像に切り替わっていくことで、より小さな世界のはずなのに、逆にとても大きな世界へと突入していくような錯覚を起こしてくれる。未知の世界という得体の知れなさの表現にも繋がるし、視界いっぱいに広がる大きなIMAXスクリーンのおかげで、観客自身が量子世界に飛び込んだかのように楽しめるかもしれません。

 どこか遠い惑星に来たような宇宙空間っぽさや、原動力が良くわからない異文化の技術力などが散見されるのも、先述のファンタジーアドベンチャー感っぽいし、それらを表現するCG映像も、相変わらずマーベル作品は凄いクオリティ。そして、そんな〈未知〉に溢れた世界だからこそ、征服者カーン(ジョナサン・メジャース)の底知れぬ雰囲気がより強化されていた印象です。

まぁその一方で、大きな映像になった分、各所で見受けられる一部の奇妙な生命体の気持ち悪さが際立ってしまったり、或いは(『アントマン』作品では仕方ないかもしれませんが)リアルに描写された昆虫のCG映像などに対して苦手意識が生まれたりしてしまう人もいるかもしれませんので、未見の方はお気を付けください。




 序盤、主人公スコット・ラング(ポール・ラッド)のモノローグで、彼とその周囲の近況報告が語られる。本項の冒頭で述べたように、割とライトなMCUファンである僕にとっては、こういう導入部分があるだけで非常に助かります。『アベンジャーズ エンドゲーム』(感想文リンク)等々、他のMCU作品にもアントマンは登場していたとはいえ、前作の『アントマン』から早5年近く。っていうか『エンドゲーム』ですら4年前とかの話。こういうプロローグ的なものがあると、色々思い出すことができるし、一見さんにとっては簡単なあらすじ紹介シーンにもなる。

 そこで思い出したのは、彼はヒーロー以前にパパだったということ。前作評の中で、心情や表情など〈ヒーロー〉↔〈パパ〉の行ったり来たりムーブがとても面白かったみたいなことを述べた覚えがありますが、本作では、両者を天秤にかけることの葛藤がより強くなっていた印象です。いや、優先順位は間違いなく娘キャシー(キャスリン・ニュートン)なのですが、冒頭シーンでも描かれていたように(勘違いや人違いも混ざってはいたけど)世間からヒーローとして認識されるようになったからこそ、葛藤が強くなったんじゃないかと思えます。


 そんなモノローグの流れで、彼が子供たち向けの講演会(?)で自身の著書を読み聞かせる様子が描かれます——「世界は素晴らしい」「小さきものを見逃すな」「失敗しても良い」「誰にでも成長の余地がある」——。うろ覚えですが、こんな感じだったかと。アベンジャーズとしての経験から来る教訓なのか、彼自身の信念なのかはさて置き、これ見よがしな導入のおかげで、「ここで語られている彼の言葉は、本作のテーマの一つなのかもしれない」と思わされたんです。むしろ、そう思って観た方が本作は楽しめるはず

 世間からヒーローとして認識されている以上、視野は広く持たざるを得ない、だからこそ「小さきものを見逃すな」という言葉の真意を探ってしまう……。「失敗しても良い」、だからこそ彼が本作で取った選択の是非を深く考えてしまう……etc.

 色々と思うところはあった本作でしたが、おそらく次回の『アベンジャーズ』に繋がっている、なればこそ、がっつり痼り(しこり)を残して終幕した本作の後味については、『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』をより楽しむための下拵えだと思って、飲み込むことにします。本作の感想は、続編を観ることでようやく完成する気がします。

 続編が待ち遠しい。


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