公衆衛生と寄生虫の戦い🗺️『死の貝』で学ぶ歴史と現代への教訓
皆さんこんにちは🐰
今日は臨床検査技師を目指して勉強中の私が最近読んだ本についてご紹介します📚
去年学んでいる寄生虫学の授業内容とリンクする部分が多く,とても面白い発見がありました😆
『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』
著者: 小林照幸
出版: 新潮文庫
発売日: 2024年4月24日
日本住血吸虫症の克服から学べること
『死の貝』では日本住血吸虫症という寄生虫病がどのようにして克服されたのかが詳しく描かれています.
寄生虫感染症の解決には,個々の治療だけでなく,水道や下水道などのインフラ整備,さらには社会全体の理解と協力が必要不可欠だったことがわかります.
特に,私たちが日常で行う検査や治療の枠を超え,社会的な取り組みの重要性を再確認しました.
本の成功事例を世界へ広めたい
日本が世界で初めて日本住血吸虫症を克服したという事実は,公衆衛生や医学の歴史において評価されるべき大きな成果です.
この本を通じ,日本が成し遂げた偉業をもっと世界に発信し,国際保健の分野でもその知見を活かしていくべきだと感じました.
こうした事例は,他の国々にとっても有益なモデルとなるはずです.
歴史教育への提案
本書のなかの「解説」で指摘されているように,高校の地歴「歴史総合」などの授業で感染症の歴史として日本の事例を取り上げられる可能性を感じました.
感染症の歴史としてコレラやインフルエンザの世界的な流行が主に扱われていますが,日本住血吸虫症やリンパ系フィラリア症など風土病の歴史を学ぶことも非常に有意義です.
公衆衛生の視点から日本の感染症の歴史がもっと含まれても良いのではないでしょうか.
まとめ
『死の貝』は寄生虫感染症が私たちの日常生活や社会全体にどれほど大きな影響を与えていたのかを改めて気づかせてくれる本です.
臨床検査技師を目出して学んでいる内容とも重なり,今後の学びに役立つ視点をたくさん得られました.
皆さんもぜひこの本を読んでみてください!
寄生虫学の面白さと勉強の仕方について書いた以前の記事もよければどうぞ!
日本住血吸虫について補足 (Perplexity による)
日本住血吸虫は,かつて日本で深刻な寄生虫症を引き起こしていた重要な寄生虫です.
この寄生虫に関する寄生虫学的な知見をいくつか紹介します.
日本住血吸虫の特徴
日本住血吸虫は約20種ある住血吸虫の一種で,人間を含む多くの哺乳類に感染します。この寄生虫は以下の特徴を持っています:
虫卵のサイズは約 70〜100 × 50〜65 μm です
成虫は雌雄異体で,雄が雌を抱え込むような形で生活します
中間宿主としてミヤイリガイという巻貝を利用します
感染経路と症状
日本住血吸虫の感染は以下のように進行します:
ミヤイリガイ体内で成長した幼虫 (セルカリア) が水中に放出される
感染した水に接触した人間の皮膚から侵入
体内で成虫に成長し,肝臓や脾臓に寄生
感染すると以下のような症状が現れる可能性があります:
初期:皮膚炎,高熱,消化器症状
慢性期:肝臓や脾臓の腫大,肝硬変,黄疸,腹水
日本における対策と撲滅
日本では以下のような対策が取られました:
患者の早期発見と治療
感染予防対策の実施
中間宿主であるミヤイリガイの駆除
河川整備によるミヤイリガイの生息地の破壊[3]
これらの努力の結果,1976年を最後に日本国内での新規感染者は報告されていません.
寄生虫学の発展
日本住血吸虫の研究は寄生虫学の発展に大きく貢献しました.
特に宮入慶之助 (1865〜1946) による中間宿主ミヤイリガイの特定は,重要な功績として認められています.
現在,日本国内では日本住血吸虫症の脅威はほぼ消滅しましたが,世界的には依然として重要な寄生虫症の一つとして認識されています.
[1] https://www.kochi-u.ac.jp/w3museum/science_gallery/20111202paracites/2010pipeline_paracites.pdf
[2] https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/413-schistosoma.html
[3] https://www.jrias.or.jp/pdf/2112_IRYOSHISEKI_MOROZUMI.pdf
[4] https://www.dokkyomed.ac.jp/files/dmu/dokuisai/tropical_parasite_02.pdf
[5] http://www.ibaraisikai.or.jp/information/rekisi/h16_04_1/160401.htm
[6] https://matsuyama-u-r.repo.nii.ac.jp/record/108/files/松大論集27-1-研-牧.pdf
[7] https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/8/2/8_2_2_27/_pdf
[8] https://www.jstage.jst.go.jp/article/tmh/36/3SUPPLEMENT/36_3SUPPLEMENT36-S49/_article/-char/ja/