解読 ボウヤ書店の使命 ㉕-33
長編小説『路地裏の花屋』読み直しつづき。
《奈々子のヒーリングルームに行く日、雨が降っていた。雲がそれほど厚くないのか空は白く擦り硝子色に光っていたが、アスファルトをしっとりと濡らしているところを見ると、気まぐれに落ちてきた雨ではないようだった。夜明け前から降り出したのか。風もなくたらたらと降り落ちるので、これから半日くらいは続きそうに思えた。なるほど『過去の不要なお話』を語らなければいけない日にぴったりの天候だ。もちろん『過去の不要な話』は捏造するつもり。こんな天気なら、