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【感想】友達とただ話すだけで何時間でも過ごせるあの不思議さ / 夜のピクニック(恩田陸)

こんにちは、ラマ王です。
とても久々にnoteに帰ってきました。
一年前くらいに結構ハマってたのに「受験期」を迎えてフェードアウトしてしまったんですよね、、、。

最近、恩田陸さんの『夜のピクニック』を読みました。
第二回本屋大賞を受賞している作品で、永遠の青春小説といわれるほど人気が高い一冊です。

感想

まず、率直な感想として、これが名作として多くの人に語り継がれるのは
めちゃくちゃ納得だなということです、はい。面白かったです。

まず、登場人物たちはふつうの高校生たちです。でもその高校が少し変わっていて、「歩行祭」という24時間かけて80キロのコースを歩く独特な行事があるんです。
そして主人公は西脇融(“融”と書いてとおると読む)と甲田貴子のふたり。
本のあらすじには、貴子がなにやら誰にも言えない秘密をかかえていて、この「歩行祭」で小さな賭けをする、と書かれていたんですが、それを見て「ん?主人公が男女ふたりで、女の方が秘密を抱えているっていうのはシンプルに男の方への恋心的なものか?」と安易に僕は推測しました。
ただ、そんな単純なものではないんですよね。(秘密自体については割と序盤で明かされます)
でも!この”小さな賭け”ってのが思いのほか良かった!!
ほんとにほんとに小さな賭けなんだけど、二人の関係性が見えてくると
これがめちゃくちゃ切ないものだって分かるんです。たかこぉ~

面白かったところ

そして、僕が特に面白いと思ったポイントが”登場人物たちの会話”なんすよね。

登場人物たちはみんな高校生なんだけど、その言葉の節々にリアリティがあるというか、でもどこかユーモアのある言い回しをしてたりするところとか、ホントに読者の自分がみんなと一緒に列の中で歩いているような”近さ”を感じられる会話が最高だった。

そしてその会話の話題も「歩行祭」が進み、夜になってくるとより深みを増してくるんだよね。普段、昼間の学校じゃ話さないようなことが、お互いの顔も見えないほどの暗闇の中を歩いていると自然とできてしまうところとか、近しいので言えば消灯した修学旅行の部屋で、布団に入ったままみんなで話す感じで、めちゃくちゃ青春だなと思った。

そして、この「歩行祭」自体はホントにただただ全校生徒で歩き続けるだけで、道中おもしろい企画があるわけでもないし、特別な場所を巡るわけでもないのに、ただ「友達と話すだけ」の時間がなににも代えがたい大切な思い出になっているってのも最高。

本当にくだらない話とか、歩きながらできるちょっとしたゲームとか、
言ったら、なんの味付けもされておらず、ボーンと前に置かれた行事を、
生徒たち自身が、自分たちの好きなように楽しみながら味付けしている感じ。

冷静に振り返ると、日程のうち楽しかったのは序盤だけで、残りの多くの時間は体中に疲労を感じ、きつい思いをしていたはずなのに、それでも生徒の多くはこの「歩行祭」を経験したことを誇らしく、そして満足そうに大人になって思い出すという。その感覚も読んでいるととても分かるし、自分の高校にもこの「歩行祭」があればよかったのに、と思ったくらいだ。

友達とただ話すだけで

そして、やっぱり思うのが
どんなときも、「なにをやるか」より「誰とやるか」だと言うこと。

自分の学生時代を振り返っても、
ただ友達とだらだらとくだらない話をし続けるだけで、
時間があっという間に過ぎていくあの感じ、
特に話すことなんてないのに、このまま無限に何時間でも話せるような気がしてしまうあの感じが、この「歩行祭」に挑んだ主人公たちに共感できる理由だと思う。

学生時代を振り返ると起こる現象

あの時、なんの特別感もなかったものほど、
今となっては何よりも輝く思い出になっている。

今まさに青春の日々を送っている中高生には言っても
分かってもらえないであろう「青春の不思議な現象」が
本当に実在することを再び思い出させてくれる一冊だった。

ってまだ大学生のうちから言うのは感覚が老いすぎてるか。
大学生活だって青春だろぉぉお
なにをやってんだ俺はっ!いっぱい友達を作れ!恋愛をしろ!

まとめ

今回僕が読んだ『夜のピクニック』は、迷うことなく名作といえる一冊でした。まだ読んだことがないあなたも、読めばきっと僕が言いたいことが分かるはずです。読者の心に体験していないはずの「歩行祭」の懐かしい思い出が刻まれる、そんな面白さを秘めた一冊ですので、ぜひ読んでみてください!また、すでに読んだことのある人の感想も聞いてみたいです。ぜひ、コメントお願いします!

以上、ラマ王でした。


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常時お金には困っている貧乏大学生です。図書館にない本、映画鑑賞や旅行の費用とさせていただきます。そこで得た知識や経験を基にこのページを発展させていきたいと思っています。