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動物との信頼関係について考える (1)

「信頼関係」という言葉を使うと・・・
細かい説明せずに相手を煙に巻くことが出来て、
なんかわからんけどすごいんだーと相手に思わせる事が出来て、
深く理解する必要なくだれでもすぐに使う事が出来る。
とっても便利な言葉ですね。
 
信頼関係という言葉をすぐに使うトレーナーには、ちょっと胡散臭さを感じてしまいます。科学的でより単純な仕組み(強化学習等)で説明できる事について、何で「信頼関係」って言葉使うかなー?って思っちゃうんですよね、きっと何かこだわりがあるんでしょうね。
そもそも、科学的な解釈がどこまで出来るかは、その人の知識や思考の癖(認知バイアス)次第で、その結果「信頼関係」の捉え方に違いが生れるのは致し方ない事ではあると思います。
だからと言って、感情や情動など心に関するものを全否定してしまうのも味気ない気がします。私自身、イルカ達との長い付き合いの中で、「信頼関係的な何か」を感じる場面もあり、「モーガンの公準」を盾に科学的ではない事や、自分が理解できない事について全否定する考え方もちょっと違うのかなーとモヤモヤします。
つまり、信頼関係という言葉を安易に使いたくないけど、科学的に説明がむずかしい感覚的に感じる「信頼関係的な何か」がありそうな気がするので、あらためて信頼関係について考える事にしてみました。
 
感覚的に感じるものがテーマです。どちらかと言えば哲学や思想の分野とご理解ください。
 
前置きが長くなりました、ようやく本題です。
信頼関係とは「お互いに信じて頼りあえる相互関係が出来上がった状態」の事のようです。調べてみると、以下のようなワードも出てきました。

・相互理解
・騙さない
・嘘をつかない
・裏切らない
・安心できる
・予測と結果が一致する
・利益がある、不利益が無い
・対等
 
 
妄想1、人を信頼しているイルカ(動物)が思う事
人と信頼関係が構築できたイルカは、人に対してどう思うのだろうか。イルカが考えている事を妄想してみました。

・人がする事は大体予想出来ているし、実際に予想通りだ。
・人と一緒にいると、安全で、心地よく、楽しい。
・たまに予想外の事が起きるけど大丈夫、
 むしろ楽しい事の方が多い
・人は、私(イルカ)に、欲しいもの(食べ物やおもちゃ等)を持ってきてくれる
・人に対して期待している(何か楽しい事がおきそうだ)
・嫌な事は少ない、本当に嫌な時は逃げることが出来る
・やりたいことが出来る、させてもらえる
・何をするか自分で選べる
・人は、私(イルカ)の好きな事や欲しいもの、嫌な事を知っている
・私(イルカ)も、人が好きな事や欲しいもの、嫌な事を知っている
・私(イルカ)の意思が人に伝わる事を知っている
・私(イルカ)は人が何をしたいかわかる(人の意思を理解できる)
 
妄想2、人を信頼しているイルカの行動
妄想を少しだけ現実の世界へ戻してみましょう。信頼関係を築くことが出来たイルカ(動物)は、どんな行動をするでしょうか。行動に置き換えてみます。

・人を見つけると近寄ってくる
・積極的に人に関与しようとする
・人の近くにいる時間が長い、長い時間人と遊べる
・トレーニング中の離れが無い
・人の事を良く見ている、興味を持っている(観察する)
・人に対する行動に多様性がある(人に対する意志表示)
・人の近くにいる時に筋肉に無理な力が入っていない
 (緊張していない、安心している、落ち着いている)
・正解を求めて何度でもチャレンジする
・正解を求めて行動を変化させることもある
・威嚇・攻撃が無い
 (口を開け無い、噛みつかない、キックしない等)
 
信頼関係を定義してみよう(ちょっと無理やりだけどね)
これまでの内容をまとめて強引に動物との信頼関係とは何か、定義をしてみました。
 
①相互の意思疎通を前提とした動物と人の対等な関係。
②行動の決定権も対等(自分で決められる)、強制されない。
③何をするのか何が起きるのか、お互いに予測が出来る。
④お互いの安心や利益を追い求める
⑤利益は当事者同士以外へも広く波及する
 
個人個人の考え方や感覚の違いから、信頼関係という言葉を絶対的なものとして定義することが難しく、あるとかないとか、はたまた何かの説明に使う事も適切ではない。目標や理想、ありたい姿として設定し、追求し続けるもの。辿り着いたと思ってしまったら、発展も進歩もそこでおしまい、もしからしたら永遠に追いつけないものなのかもしれないね。
 
信頼関係の必要性
について考えてきましたが、そもそも信頼関係は必要なのでしょうか。改めて考えてみると、強化学習の理論さえあれば信頼関係はなくても良さそうに思えます。しかし、イルカ(動物)と過ごす毎日のなかで
 
・サインに対して機械的に反応するだけのイルカ(動物)に物足りなさを感じている。
・自由奔放で手に負えないイルカ(動物)になぜか魅力を感じてしまう
・言う事聞かないイルカ(動物)に振り回されているトレーナを見るのが楽しい
・指示待ちイルカ(動物)では物足りない
・行動形成は出来るようになったけど、何か物足りなさを感じている。
・もっとゲストを楽しませたい、感動させたい
・もしかしたら、ゲストの求めているものはもっと違うものかもしれない
 
こんな風に感じているのであれば、信頼関係を意識してみるのも一つの方法だと思います。一つだけ注意です、本当の信頼関係は、当事者だけでなく、その他多くのイルカ(動物)や人にも、多くのメリットを振りまくものでなければならないと思います。独り占めした信頼関係は、単なる自己満足でむしろ問題を発生させる可能性もあります(トレーナーによる担当個体のペット化)
 
 
いかがでしょうか。
皆さんは、どのようなトレーナーになりたいですか。
続く・・・。

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