🌱【私小説的気づきのエッセイ】『自分で生み出して人に影響を与えたエネルギーは、どんな形であれ、自分に戻ってくる。』と、いうこと。

【気づきのエッセイ】自閉症の娘との触れ合いを通して、鏡の法則のように、自分の出していた『言霊』や『負のエネルギー』に気づいた瞬間のストーリーです。

マルチリンガルな環境で

　うちの娘は自閉症である。3歳になっても宇宙語を話していた。というよりは、歌っていたという方が正しいのかもしれない。

自閉症といっても人それぞれの個性がある。今年で１１歳になる娘は、発語は乏しいものの、聞き取って理解し行動すること、ができるようになってきた。精神的には実年齢よりかなり幼いが、ゆっくりゆっくり成長している。これも周囲の方々の理解と協力のおかげである。本当に感謝しかない。

娘が生まれたのはカンボジア。私は産後３ヵ月で職場に復帰し、タイ人の旦那さんが専業主夫として育児を担ってくれていた。

旦那さんは、驚くべき直感で娘の欲求をクリアし、娘が『ぎゃ』といえばミルク、『ぐぅ』といえばお水、『わぁ』といえばおむつ替え、と、まるでテレパシーで会話をしているように立ち回っていた。

娘の宇宙語を聞いて私に通訳する姿は、まるで、とぼけたチャネリングを見ているようで、楽観的な旦那さんの愛情を日々感じて、娘はのびのびと育っていった。

当時、私は日本語、旦那さんはタイ語で娘に話しかけ、夫婦の会話はシンプル英語、そして、外に出ればクメール語が飛び交う、マルチリンガルな言語環境だった。

『海外育った子供は発語が遅い子が多いみたいだから、あまり焦らなくてもいいんじゃない？』

と、周囲の人は声をかけてくれていていたが、同じような環境で育っている他の子供たちとは明らかに違いを感じていた。

そういったことで、娘と旦那さんの生活の拠点をタイに移すことにしたのである。娘の軸になる言語を身につけさせたい、という一念で。

タイでの生活の始まり

『幼稚園でほかの子供たちと触れ合えば、きっと言葉が出るようになるよ。』旦那さんは常に楽天的である。

私はカンボジアで働きながら、しばらくは定期的にタイへ足を運んでいたのだが、娘が自閉症と診断されたので、タイへ渡る決心をした。

家族の住むパタヤでは、タイ語のできない外国人の私の就職活動は困難であったが、人生の岐路でいつも奇跡が起こる。ご縁があってバンコクで日系の会社に就職することができたのだ。

単身赴任になるため、毎週末にバンコクとパタヤを往復する日々が始まった。そうは言っても、車で２時間ちょっとの距離、そして国境は無い！

ドクターからのアドバイスは、『できるだけ、たくさん話かけて接してください。日本語であっても構いません』というものだった。

インターネットの普及もあり、メッセンジャーのカメラ通話を利用して、私は娘への話しかけをほぼ毎日のように行った。

簡単だけど大事なことについて。例えば、名前の呼びかけ、家族の名前についての理解、あいさつ、今日の予定や出来事、学校の友達のこと、寝る前のお話、にいたるまで、簡単で同じフレーズを繰り返し繰り返し話しかけるのだ。

旦那さんは、お国柄か性格なのか、あまりベラベラと話す方ではない。（彼はタイ東北部、イサーン地方の出身だ）

彼が家族と交わす会話は、ビックリするほど端的である。娘の扱いは本当に上手なのだが、会話はテレパシーのようになってしまう。おしゃべりは女性の方が長けているのかもしれない。そんな生活を送っていると、娘は少しずつ日本語でオウム返しをするようになってきていた。

それはある日突然に、、、

娘の学校はタイ人のための支援学校で、小学校で学べる状態になるまでの約５年間ほどお世話になった。ありがたいことに障害児教育の知識がある先生が常駐されていた。

療育機関が乏しいタイでは、専門のトレーニングを受けることは難しい。仮に受けられる環境を手に入れても、続けることはもっと難しい。大きな町の公立病院で何か月も順番を待ちをするか、プライベートの病院へ高価な医療費を支払って通うことになる。

どちらにしても、支える家族に、金銭的にも肉体的にも大きな負担がのしかかる。そんな状況の中、娘は周囲の理解と寛容さに支えられて成長したのである。

言葉の理解を示しはじめた娘に、旦那さんは嬉しそうに、あれこれと用事を言いつけ、『できた、できた！よくできた〜！』とご満悦である。

それにしても私のタイ語はさっぱり成長しない。数年タイで働いているとはいえ、日本語と英語で働ける環境に甘んじていたのだ。だんだん週末の家族の会話は、タイ語と英語と日本語のちゃんぽんになっていった。

そんなある週末のこと。。。

どこからか、娘の声がした。

『ちゃん、と〜！ちゃん、と〜！』
『もう〜、あ、た、わぁ〜』
『なんでぇもぉ〜』
『あかんやろぉ〜』
『なにしてんの！もぉ〜』　

さらに続く、、、、、

『これ、わぁ〜』
『もお、しない！もお、しない、よぉ〜』

旦那さんが私にいう。

『最近、日本語話すんだよ〜笑　ママが来る日に、必ずはじまるんだ。何て言ってるのかなぁ？』

　
私は、顔から火が出そうになった。すべて私の口癖である。娘はタイ語と日本語の違いはわかっている。彼女の覚えている限りの日本語を私にぶつけてきたのだ。
でもそれは、『おはよう』でも、『こんにちは』でも『おやすみ』でも『だいすき』でもない。私が無意識にイライラとした感情で、娘に吐いた言葉だった。

着替えがうまくできない時、くつを履けない時、私はいつも言ってた。　結構厳しめに、、

『ちゃんとする！ちゃんと！』（大阪弁）※きちんとしなさい！きちんと！の意

おもちゃを片付けない時、私はかなり不機嫌になっている、、、

『もぅ、あんたわ〜！ちゃんとしなさい！』（大阪弁）※もう、あなた！きちんとしなさい！の意

いたずらした時、かなり沸騰中の私、、、

『何で？もぅ〜！あかんやろぉ〜、あんたわ〜！』（大阪弁)　※どうして？もうだめでしょ、あなたは！の意

ふざけて冷蔵庫を開けたり閉めたりした時、大きな声で威嚇してる私、、、

『何してんの！もぉ〜、あかんやろ！これわ〜』（大阪弁）※何しているの！もう、だめでしょ、こんなことしたら〜、の意

何度も繰り返して、注意してもやめない時、キレキレで、強制終了させようとしている私、、、（ここだけなぜか標準語に近い）

『もう、しない！もうしないよ！』

　さらに娘は続ける、、

『ざっつわーい！』
『りっすん！』
『えくすきゅーず、みぃー！』

まさかの英語である。これにはさすがに参った。私が旦那さんに吐いていた言葉であった。
旦那さんの行いを指摘したり、彼の言い分を遮ったりする時、私が言ってた言葉。
娘はしっかり聞いていた。覚えているということは繰り返し聞いているということ。ママの言葉として認識しているということだ。

こんな怒りの感情がこもった言葉を、何回も何回も浴びせていたなんて、恥ずかしいを通り越して、自分が情けなくて、娘に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

本当にごめんなさい。心からごめんなさい。

無意識に潜む『はかり』

娘は何の意図もなく、私の無意識の部分に刷り込まれている言葉を露呈してくれた。まさに見えない言葉を鏡に映すかのように。。。

そして私はその言葉にこもっている意味とその理由について考えた。

ことばには言霊が宿るというけど、ことばの持っている意味だけではなくて、感情のエネルギーも同時にこめられてる。ってことかもしれない。

怒りの感情がこもれば恐怖を与えて、優しい感情がこもれば、穏やかな気持ちを与えることができるのかも。

私は無意識のうちに恐怖を与えて、娘をコントロールしようとしてたんだ。何てこと！

でも怒れば怒るほど、同じことを繰り返すし、気を引こうとする兆候も出てる。結局、悪循環なのかもね、、、

そもそも、『ちゃんと』って何だろう？　

わたしはそうやって育てられたんだな、忘れてたけど。
『ちゃんと』しないと、日本では『みっともなくて恥ずかしい』になっちゃう。
だから、日本のしつけとして、親は繰り返し『ちゃんと』を教えてくれたんだよね、それが愛だったんだ、きっと。

私の『ちゃんと』は、
娘にとって必要なんだろうか？

必要かもしれないけど、それは今じゃないのかも。ハードル上げすぎだったんじゃない？
私は日本でそう刷り込まれて育ったけど、ここはタイ。
みんな、おおらかに笑って教えてあげてる。失敗してもたいしたことない。マイペンライ、、って。

そういえば、旦那さんに対してもついつい言ってたなぁ、『お願いだから、ちゃんとして〜』とか、『ちゃんとしないと、あとで困るよ〜』とか。
旦那さんは『はい、はい〜』って笑って逃げてたけど、きっと理解不能だったんじゃないかな。
育った環境が違うんだもん、当然だよね。私のはかりと彼のはかりの基準も制限も違うでしょ。。でもテレパシーの使い手だから、ちょっとくらいは、、、なんてね。

っと、あれこれ思考を巡らせていると、娘が大好きなパイナップルを冷蔵庫から出してきた。お腹がすいたのね。

娘『ま〜まぁ、たっべ、るゅ〜』

私『おっけー、たべるぅ？　じゃあ、大きいから半分こしようか。あぶないから、ママがカットしまーす。パパも呼んできて！お願いしまーす！』

娘は私の目を見ると、くるっと後ろを振り返ってパパを見つけると、手を引っ張って連れてきてくれた。

日本語を理解しているのか？それとも、パパという単語でひらいめいたのか？まさか、私の目を見て読み取っているのか？もしかしたら、テレパシーの使い手はこの子の方なのかも、、、

　みんなで食べると美味しいね〜、ごちそうさまでした！っと。

それを合図に娘がお皿を洗ってくれる。
旦那さんといえば、おなかいっぱい〜、ちょっとねむる。。。っとハンモックへごろり。
その横へ、わたしも！と言わんばかりに、娘がすべりこんでハンモックを揺らす。
時間がゆるゆると流れて心地よさが充満していく。私は仔犬を膝にのせて頭を撫でた。
そして気持ちよさそうに、すーすーと寝息を立てはじめた二人を見つめて、目を細めるのでした。

おしまい。

☆編集後記☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡

こんにちは、『ququ』と申します。最後まで読んでいただき、ありがとうございます！

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