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Today’s Story & Sweets-Jの総てby中村明日美子×オリンピア-トルテ

そろそろ梅雨入りしそうなのに、晴天が続いたかと思えば急に夕方から豪雨という。
ここ最近の天気の変化に、せっかく近くまで戻ってきていた我が自律神経も家に戻ることに二の足を踏んでいるかの如く、気分も上がったり下がったり。
しかも湿度が上がると、天パ気味のせいで似合わないのに髪がクルクルしてくるのも気が滅入る。

そういえばくるくる巻き毛が流行ったのはいつの頃だろう。

いや、そもそも巻き毛は多少形は変わっても、常に可愛い女の子の定番スタイルなのかもしれない。

可愛い❤︎に、ついぞ縁のない処に身を置いてるモノとしては巻き毛に対して憧れはおろか、天パでくるくるし出すと帽子を深く被ってしまいたくなるのだけど…。
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巻き毛を可愛い子の象徴とするには些か強引すぎるけれど、中村明日美子嬢の作品《Jの総て》の主人公、J.S.カレンズバーグ、通称Jもクルクル天然金髪巻き毛の可愛い男の子だ。

そんな彼の夢はマリリンモンローになること。
通常のBLならさぞ、切なく甘い物語になりそうだが明日美子嬢の手に掛かればそうはいかない。

1980年アメリカでJことJ.S.カレンズバーグが自身の取材を受け、半生を語り始めたところから物語は始まる。
1950年、今よりもさらにトランスジェンダーへの偏見が強かった時代。父親との近親相姦から母が父親を射殺と衝撃的な展開が起こりつつも、寄宿学校で自分の監視役となった堅物の上級生ポールとの出会いと淡い恋心。
そして市長の息子でありながらその環境に憤りを覚え自分らしく生きようとするモーガン3人の関わり方が絶妙で、それぞれの思いや行動が苦しく切ない。

非bl作品であり、トランスジェンダーの主人公Jの半生は最終的にはハッピーエンドではあるものの、現在と過去を行き来しながら進むストーリーは、同性同士の恋愛要素はあるけれど甘いところは殆ど無く、Jの過ごした日々はどの時代においてもかなりヘビーでハードな内容になっている。

この重い物語に華を添えるケーキは濃厚過ぎず、可愛い過ぎず。そして、明日美子嬢特有の流れる様な絵柄を感じられるケーキがいい。
そんな理想に合うケーキはないものかと作ったのが、ドイツの《オリンピア-トルテ》アレンジバージョンだ。

ドーム状のケーキは夢が詰まっている気がする。
断面はこんな感じ。
しっかり立てた生クリームは安定させるために少量のゼラチン入り。

ドイツ菓子定番の浮き粉入りロールケーキを薄く切ってドーム型にした中にしっかり泡立てた生クリームとあらかじめ煮ておいたリンゴを加えたカスタードにビターチョコクリームを3層に重ね、底はスポンジ生地と薄く焼いたタルトを重ねて仕上げた。
表面は主人公のトレードマークでもある金髪をイメージしてあんずジャムを塗り艶やかに。

作者が最終巻のあとがきに書いたように《愛し愛され、傷つけ傷つき大切なモノが分かって人は強くなれる》という言葉通りの半生を生きたJ.S.カレンズバーグに捧げる、【Lady-Olympia】。
甘過ぎず、口に広がる豊かなハーモニーを楽しみながら《Jの総て》とともに。

(Nekozawa23)

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