見出し画像

本と香り

男はそよかぜのように娘にキスした

谷川俊太郎「詩人の墓(2006)」

- - 

いまが一体何日で何時で何をしているのか
自分でもよくわからないままに生きているという感覚のなか過ごしている二月のおわり 時が流れるのに抗わずひたすらに揺蕩って沈んでいく

0226 終日本屋さんの店番の日です。
朝家を出ると晴れてる!と思い傘を置いてきたら歩いてる途中、晴れ間から小雨が降り始めたので私のパーマが元気にくりんくりんし始めた。昨夜、雨であることを確認したんだった。いま思い出してしまった。帰りは降っていませんように、と願うばかり。

雨の日、お客さんの入りはいつもより少なくゆっくりとしています。店番中、すこしまえに無印の本屋さんで購入した「谷川俊太郎 詩選集4」のページをひらいて読んでいると、自らのうちにある言葉がどんどん湧いてくる感覚を覚える。この記事のはじめに書いたのはこの本の50ページにある「詩人の墓」の一文。あまりに美しいひとことでページをめくる手がとまり同時に思考もとまった。ほんとうにどきりとする言葉に出会うとなんとも高揚してつづきが読めなくなる現象が起こります。

この詩の美しさと同居する切なさがまた胸を打つ。切ないと美しいは実は同義語なのではないかと思う。すくなくともわたしのなかでは切ないと美しいは同時に心にやってくる言葉。

- - 

0228 12連勤の真ん中くらいだと思う、そんな今日は本屋さんではなくアロマショップの店番の日です。よい香り、天然香料の香りに包まれながら店番をする。
香りに興味を持つようになったのは、本にのめり込むきっかけとなった千早茜さんの「透明な夜の香り」の影響。

昔から香りは好きだったけれど、この本を読んで調香師という職業があると知り、耽美な世界をこの目で見てみたいと思ったことがきっかけだった。そんなとき引っ越したばかりで近所の散策をしていると、迷い込んだ路地にちいさなアロマショップを見つけた。そのときはすてきだーくらいにしか思っていなかったのだけれど、数日後ふとそのアロマショップを思い出し、ネットで検索するとインスタグラムのアカウントが出てきて投稿を見た。するとスタッフ募集と書かれた投稿を見つけた。私は迷わずdmしていた。あとで知ったのだけれど枠はあとひとりだったらしい。

ついに私は念願の香りの世界に踏み込むこととなるのだけど、やはり覚えることはたくさんあるしとっても苦手な化学だし、で結構大変。それでもせっかく巡り合って見つかったお仕事。ときに香りに癒され千早さんの世界を思い出し知識を自分のものにしたい。小説のようにはいかないけれど、そういうときは何度も何度も千早さんの本を読んで救ってもらう。

この記事が参加している募集

#noteのつづけ方

38,714件

#仕事について話そう

110,811件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?